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結婚相談所に行ってみた その2

「・・・ハナ?」
「そうだな。マスクを取ったら、鼻が横に大きかったわ」
「顔じゃねぇかよ、結局」
「鼻は大事、ってことに気付いたわ。多分俺、シュッとしているのが好きでさ」
「外国人みたいなのが良いの? 海外かぶれかよ」
「そういう訳じゃないけど」

友人のZ君と電話で話していた。彼は小中学生の同級生で、地元に住んでいる。
婚活の末に素敵な女性と結婚して、仲睦まじく過ごしている。
恋愛は団体戦、とよく言うし、第三者の視点をくれる相談相手、キレのあるツッコミをくれる相手としては絶好だと思って、電話をした。
久々だな、いきなりなんだよ、と挨拶をしてから、僕が結婚相談所に行き始め、A子さんと会って、洋麺屋五右衛門に行ったことを話した。

「いや、結婚相談所に行き始めた、っていう時点で驚きだけどさ、W男が女性の鼻を重要視することにはもっと驚いたよ」
それは僕にとっても驚きだった。
他の人に会うことで、自分のことを知るんだな、と学んだ。
他の人に会うことで、自分は鼻が大事なんだな、と学んだ。

「まあ鼻は置いておいて、A子さんは、真面目でな、良い人だったわ。プロフィールを見て想像した通りで。仕事も管理職だし、まあしっかりしてるよ。責任感を感じる」
「わかるかね、そんなにすぐ」
「割と深く話したからね。それで、心広いし、笑ってくれるし」
「そうか。じゃあ、仕事⚪︎、会話⚪︎、だったと」
「え?」
「そんで鼻×、だったんだな」
「まあ・・・まとめるとそうだな。とにかく、俺はパスタをたらふく食って、駅に一緒に行って、お別れしたよ」
「ちなみに、あれなの? 連絡先交換して、次も会いましょう的な?」
「あー、そこなんですけどね」

ここが、またしても僕が感動したシステムだ。
ルールとして、僕たち会員同士は、直接連絡先を交換してはいけない。
だから、初めて会った時は、「ありがとうございました」と挨拶だけをして別れなければいけない。
それから24時間以内に例のWebサイトにログインし、その人とトライアル交際、お試し交際に入るかどうかを選んで、送信する。
「早めに回答しましょう。迷ったらYESにしましょう。NOの場合は、理由をしっかり書きましょう」
回答するページにはそう注意書きがされてある。
それが二人ともYESになって初めて、連絡先が共有される。
これはもう、全員が得するシステムだと思う。
24時間考える時間があるし、嫌な時も、本人に直接断らなくて済む。
断られた時も、理由を書いてくれるので、それを担当エージェントが柔らかく揉んで伝えてくれる。

「で、W男はどうしたの? A子さんとナントカ交際をするのかい」
「いやー悩んだね。悩んだから、とりあえずその日は寝たよ」
「一晩寝かせたのね」
「そんで、朝に起きてから、『まあいっぱい笑ってくれたし、笑わせてくれたし、パスタはうまかったし、もう一回くらい、サウナでお腹減らして一緒に食べようかな』と思ってね」
「おお」
「YESにしましたよ」
「おおー」
「A子さんもYESにしてくれて、トライアル交際が始まりましたよ」
「なるほどね。これさ、もう他の人には会えなくなっちゃうの?」
「いや、それは全然オッケーなのよ。トライアル交際はね、複数人と一緒にできるんだよね」
「ああ、そうなんだ。じゃあ、これからはどうやって連絡するの?」
「メールだね」
「メール?」
「結婚相談所用にね、新しくメールアドレスを作ったわ」
「なるほどね」

早速、A子さんからメールが来た。
会えて嬉しかったこと、また是非、とのこと。
僕はやんわりと、また行きたいですね、次は仕事終わりにお酒でも、と伝えたら、「いつがご都合よろしいですか?」とのこと。
グイグイだな。
パッ、とそう思ってしまった。
それから10秒ほど置いて、相手から話を進めてくれて嬉しいな、ありがたいな、と思い直した。
ただ、僕が空いている日を出したら、彼女はすでにその時10日間の出張中、とのことだった。
・・・出張が多いというプロフィールを見た時、なんだかカッコいいなぁと思ったが、予定調整という点からしたら面倒だということに気付いた。
調整をWebサイトが手伝ってくれるのは一番最初のみ。
2回目以降も助けてくれよ、と思ったりした。
何度かやり取りを往復し、出張に行く直前、来週の火曜日の仕事終わりにクラフトビール屋さんに飲みに行くことが決まった。
A子さんが行ったことのある場所で、良い店だった、とのこと。
金曜日じゃないのか、19時半に駅で集合は遅いな、と思ったが、やり取りに疲れてしまったので、それでオッケーすることにした。
はあ。
あれ、おかしいな、全然楽しみじゃない。

ここで、前回検索して気になった女性に「会いませんかリクエスト」を出すことにした。
安くはない金額を払ってせっかくこのようなサービスを始めたので、色んな人に会ってみたかった。
まずはB子さん。
年齢は3つ上で、身長は175センチ。
青空を背景にした自然な笑顔と、バスケットボールを手に持った写真が印象的だった。
仕事は経営企画で、プロフィールには「繰り返しの作業が苦手」「会話の多い家族が理想」と書いてあった。
長身美人のバスケットボール写真のインパクトと、尖りを隠さないプロフィールを見て、絶対に会いたいと思った。
次にC子さん。
年齢は6つ下で、身長は165センチ。
スタジオで撮影された表情には少し硬さがあるけれども、素敵な笑顔だった。
写真から若さが伝わってきて、20代前半で結婚相談所に登録されている、という時点で興味しか湧いてこなかった。
見た目は、よく街で見る今時の若い可愛げな女性である。でも、結婚相談所に登録するまで結婚願望が強いというのは、今時の女性からはかけ離れたことだ。この女性には絶対に何かあるのだろう。その何かを知りたくなった。

この二人にリクエストを送ると、早速翌日にYESの返答があった。
システムで日程調整をし、その週の土曜日、11時と16時に会うことになった。
ふう。
これは、ものすごく楽しみで、ものすごく緊張するな・・・。

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