第3回 仮説と検証の大切さ②
こんにちは。水谷です。
TeamTreeオフィシャルblog、第3回です。
前回に引き続き、『仮説と検証』についてです。
今回は私たちTeamTreeの事業と仮説検証の関わりについて話そうと思います。
第3回目になって初めての紹介になりますが、私たちTeamTreeは主に中高生を対象にした教育事業を運営しています。教育事業といっても、知識そのものを教えるのではなく学習方法、言い換えると勉強のコツのようなものを、週一回の面談を通して生徒に身につけてもらっています。
私たちは、この学習方法を『マップラーニング』と呼んでいます。
まずは簡単にマップラーニングについて説明します。
(このblogの読者の方は既にご存じの方も多いかもしれませんがご了承ください。💦)
マインドマップというツールをご存じでしょうか?
下の図のように、クモの巣のように言葉を繋げて、整理するやつですね。
ちなみに、これは第1回のブログの内容を、推敲時にマップで作ったものです。
私たちは普段、子供たちに学習した内容をマップにしてもらい、そのマップをもとに学んだことを面談で教えてもらう、ということを続けています。この「子供たちの方が私たちに教える」というのがミソで、人に教えた時に学んだ内容が急激に頭に入るんですね。ただ知識を与えられるだけの講義では5%の知識しか定着しないのに対し、人に教えた時は90%の知識が定着するとも言われています。
『マップでキーワードの繋がりを理解する』 × 『教わるのではなく、人に教える』
この2つの要素を掛け合わせた学びが、知識や思考力が育つ最良の方法だと考えています。
実際に多くの体験者から 「考え方そのものが180度変わった」 「世界の見え方が変わる」といった有難いお言葉を頂いています。
まあ、このblogは宣伝が目的ではないので、自画自賛はこのぐらいにしておいて…(笑)
本題に戻りましょう。
私たちは、生徒がある程度マップ作りに慣れてきたら、マップの中に「?マーク」を入れてもらうようにしています。「?マーク」は、自分がよくわからなかったところや、「なぜなんだろう?」と疑問に思ったところにつけてもらいます。それに対して、私たちトレーナーが「どうしてだと思う?」と問いかけて考えてもらいます。間違っていてもいいので一旦その場で答えを考えてもらって、そして「次回の面談までに調べてこよう!」と言って宿題にしたり、その場でgoogle検索して調べたりします。
実例をひとつ挙げます。子供たちが自分の調べた事をマップにして持ち寄り、互いに発表しあう「子供マップ発表会」というイベントをした時のことです。ある子がトウモロコシについて調べたことをマップにしてくれ、皆に発表していました。その中で「トウモロコシはコロンブスがアメリカからヨーロッパに持ち帰った。」という説明がありました。そうすると「なぜコロンブスはトウモロコシを持ち帰ったの?」という質問が出ました。それに対して、「国に持ち帰って自慢したかったからじゃないかな?」、「お金が儲かると思ったからじゃないかな?」といった仮説が沢山でました。これはまさに分析仮説思考ですね。その場にいた全員が真剣な表情で答えを考えていたのがすごく印象的でした。
仮説思考がもたらすメリットとして、前回の記事では次の2つを上げていました。
1. 思考がきめ細やかになること
2. 行動選択の精度が上がること
これに加えて、もう一つ大きなメリットがあります。それは「知的好奇心」です。
知的好奇心が旺盛な人って、どんな人の話でも面白そうに聞きますよね。
自分が興味ある話題には喰いつきますが、自分が全く知らない話をワクワクしながら聴ける人ってあまりいないと思います。(かく言う私も含めですが…。汗)
こういう人たちって、何故どんな話題でも興味を持って聴くことができるのでしょうか?
ここで仮説思考がキーワードになります。
実は、仮説思考が習慣化すると、興味のない話がゼロになります。
以下、仮説思考の人が話を聴くときの思考プロセスを説明します。
仮説思考が習慣化していると、人の話を聴くときに瞬間的に頭に疑問が浮かび、それに対する仮の答えを瞬時に設定するようになります。
このような人は、相手の話を聴くときに常に「これはどういうことだろう?」「多分こうなのかな?」という風に、疑問と答えを思い浮かべながら聴いています。
そのように仮説を持ちながら人の話を聴き、学習していると、自分の仮説が正しかったときは、「やっぱり自分は正しかった!」と楽しめます。逆に、仮説が間違っていた時は「何でそんなことになるんだろう?」と理由が知りたくなります。
これがどんな事に対してもワクワク興味を持つ、知的好奇心を生む仕組みです。
ワクワクしながら聴くことには大きな効果があります。それは、「感情を伴う学びは定着しやすい」ということです。ワクワクしながら聴き、学んだ知識は、正しく、そして素早く定着していきます。
すると様々な知識が身につき、結果としてさらに深く楽しんで思考するようになり、もっと仮説を考えるようになる…というループに入っていきます。
仮説思考が身に付き、さらにマップを使って物事の具体と抽象の階層を構造的に捉えられるようになると、他の人とは圧倒的に思考力に差がつきます。
この段階に入ると、ただ目の前の知識を習得するだけでなく、より抽象度を上げて、例えば「どうやったらもっと効率的に知識を習得できるようになるだろう?」というメタな問いも立てることができます。ここまでくると、かなり無敵モードですね。
マップラーニングでの実例では、例えば「数学の点数をもっと上げるにはどうすればよいか?」というマップを作ることがあります。例えば下の図のようなマップです。
上のマップの水色の部分が解決策の仮説です。
・計算が遅い ⇒ 計算練習の時間を増やす
・ケアレスミスが多い ⇒ ケアレスミスのパターンを分析する、ケアレスミスを防ぐ仕組みを考える
・そもそも全く理解できていない ⇒ どこから理解できなくなったのか遡って調べる
このような仮説を立てる思考を、「戦略仮説思考」といいます。
ここから、さらに抽象度を上げた問を立てることもできます。例えば、「本当に数学の点数を上げる必要があるのか?」という問いです。問いの答えは人によって様々ですが、場合によっては文系に進み、数学の配点が少ない大学を受験するという戦略も立てられます。まさに「戦いを略す」と書いて「戦略」ですね。
このように、仮説思考のスタートは『自ら問いを立てる』ことにあります。このプロセスこそが主体的な学び=知的好奇心の源泉です。
ところが、考えてみてください。高校生までの勉強で、自ら問いを立てることを教わるでしょうか。
少なくとも私が高校生の時までの教育では、ほとんど全て初めから問題があり、答えも用意されたものを解くことの繰り返しでした。言うならば、誰が時間内に最も多くの正解に辿り着けるかを競うゲームです。これはもはやただの作業であり、面白いと感じるはずがありません。
「勉強」は「勉めることを強いる」と書きます。少なくとも私たちTeamTreeは、「勉強」ではなく「学問」=「学び、問いかける」の方が面白いと思っています。
自ら問いを立てて検証する仮説思考は、一見、高度な思考プロセスのように思われがちです。だから高校までは教えず、前段階としてまずは既に答えのある問題を練習しているのではないか?と考える人もいるかもしれません。
しかし、本当にそうでしょうか。
学校で本格的に勉強する前の小さな子供を思い浮かべてみましょう。小さい子供って何時間もひたすら同じおもちゃを飽きずに触っていることがありますよね。
「今度はこうしてみよう」「次はこうしたらどうなるかな?」という風に、あの手この手でいろいろ試しているのを見たことがないでしょうか。他にも、水たまりがあったら、そこに大きな石を投げ入れてみたり、大人が見てハラハラするようなことをいろいろやらかします。これらの行動は、「こうしたらどうなるんだろう?」という自分の頭に浮かんだ問いを検証しているのではないでしょうか。
そのようにして遊んでいる時の子供たちの目を思い浮かべてみてください。夏休みの宿題をいやいややるために机に向かう中学生や、憂鬱な顔で朝の満員電車に乗る会社員とは全然違っていると思います。
子どもの時に当然のようにやっていたことが、大人になり様々な義務を強いられるにつれて忘れられていき、ワクワクはそぎ落とされ、ただ効率よくタスクをこなすことだけを覚えていく…。
少し言い過ぎかもしれませんが、そのような弊害を今の教育制度が生んでいる気がしてなりません。
このように考えると、案外仮説思考とはビジネススキルのような堅苦しいものではなく、ただ単に大人になっても子供の心を忘れないでいる事なのかもしれませんね。
多くの人が、「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ…」と思いながら、タスクに追われて日々暮らしています。また逆に「あれはやっちゃダメ、これもやっちゃダメ」という常識や制約もどんどん増えていきます。ですが、本当はやらなきゃいけないこと、やっちゃダメなことって、もしかしたら自分が考えているよりもずっと少ないのかもしれない、と考えることがあります。本来、人間はもっと自由でいいはずだと思います。
「思考停止でただ目の前のタスクをこなしていくのではなく、子供のように純粋な心でワクワクしながら実験を繰り返していく。」
そんな生き方を目指したいと思うし、マップラーニングを通して、ほんの少しでも関わってくれた人達に自由を感じてもらえたら、と、そんな風に思っています。
今回は少し長くなりましたね。
次回以降、たまには気楽に読めるライトな話題も混ぜながら、いろいろな話を書いていこうと思います。
では、また次回をお楽しみに!!
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