【現場レポート】密着!うえだ映画づくり教室(後編)
こんにちは、やぎとまちの記録室のやぎかなこです。記録として密着した「うえだ映画づくり教室」。前編では、事前ミーティングからワークショップ1日目の前半、実際に撮影がはじまる直前までの様子をお届けしました。後編では1日目の後半から2日目の撮影現場の様子を中心にご紹介します。
リンク:前編の記事
いざ、撮影開始!
鶴岡慧子さんによる講義で映画づくりの基礎を、そして希望する部署で機材の使い方や現場での動き方を学んだ参加者たち。まず最初の撮影現場である林へと向かいます。
今回のうえだ映画づくり教室では、鶴岡さんが監督を務めました。鶴岡監督の指示のもと、俳優部や演出部、撮影部や録音部など、それぞれの役割を担った参加者が連携し、映画づくりに取り組みます。
さて、現場に着くやいなや、周囲を見回す鶴岡監督。俳優部、演出部に声をかけ、どこから撮影するかを決めます。撮影場所が確定すると、撮影部と録音部が機材をセッティング。撮影に入る前に、テストとして俳優やカメラの動きを確認します。
準備が整ったら、いよいよ撮影です。演出部となった参加者から「回してください」の声がかかります。
「カメラ、回りました」
「録音、回りました」
「シーン1、カット1、テイク1」
「よーい、はい!」
鶴岡監督の声にあわせて、歩き出す俳優部の参加者。俳優の動きに合わせて、ゆっくりとカメラを動かす撮影部。「はい、カットです!」という鶴岡監督の声を受け、カンカンとカチンコの音が鳴り響きます。
ちなみにカチンコとは、カメラで撮影した画と録音した音声を合わせる上で大切な役割を担う映画づくりの必需品。拍子木とボードが組み合わさっていて、撮影開始時は「カン」と1回、終了時には「カンカン」と2回鳴らします。
林のシーンは、3テイク、つまり、3回の撮影でOKが出ました。鶴岡監督曰く、そのシーンに必要なカットが全部撮れたことを「シーンが埋まった」と言うそうです。
さて、次は旧宣教師館内で撮影を行います。旧宣教師館は、明治37(1904)年にカナダ・メソジスト派新参町教会の婦人宣教師の住宅として建てられ、開拓期アメリカの木造建築の造りを見ることのできる貴重な建物。館内の雰囲気は、こちらのロケハンレポートに素敵な動画が掲載されているのでぜひ見てみてくださいね。
旧宣教師館での撮影では、林の時には登場しなかったアイテム「モニター」が登場しました。カメラとつながっているのでリアルタイムで、どのような映像が撮影されているのかがわかります。モニターが設置されると参加者の方々は「すごい」「綺麗」「映画みたい」と感嘆の声をあげました。
撮影が進むにつれ、最初はぎこちなかった参加者たちの動きも、だんだんと固さが抜けていきます。すると、鶴岡監督からこんな一言。
「みなさんが順調なので、高度なことを要求しはじめました」とにっこり。
テキストでは説明が難しいのですが、この時、鶴岡監督はまるでピタゴラスイッチのような複雑な動きを参加者に求めはじめたのです。しかし、それに応えてみせる参加者のみなさん。「はい、OKです」と難しいシーンを撮りきると、拍手が起きました。
1日目はここで終了。動かした机や椅子を元に戻し、片付けをして、マルチメディア情報センターへと戻ります。
1日目の様子について鶴岡監督は「素晴らしいの一言です。みなさん、本当に初めてなんですか?というほどのチームワークで撮影が進められました。現場で思いついたことも臨機応変に対応してくれて、なかなか良いカットが撮れたと思います。明日も頑張りましょう」と参加者のみなさんを労いました。
進む、映画づくり。深まる、チームワーク。
ワークショップ2日目は、前日の暑さから一転、曇りのため、ひんやりした涼しさのある日となりました。撮影は引き続き旧宣教師館にて。1日目でかなり練り上げられたチームワークはさらに進化。声をかけ合い、あたたかく和やかな雰囲気で撮影が行われました。
俳優部には、高校時代に演劇部だったという方から演技経験がほとんどないという方までいました。しかしながら、未経験とは思えないほど安定した演技力や、演劇部で培った表現力で他の参加者を唸らせた俳優部のみなさん。お見事です。
録音部や撮影部の成長も目覚ましく、特に録音部は、担当していた小宮山さんから「みんな、勘が冴え渡ってきた。どこから録るかわかってきた」という言葉が出るほどでした。
制作部や演出部、美術部など、きめ細やかな動きを求められる役割を担ったみなさんも素晴らしい活躍を見せていました。
例えば、明かりが届きにくい階段に小さなペンライトを置いて、俳優が動きやすくしたり。外での撮影で蚊取り線香を用意したり。全体を俯瞰しつつ、細部に気を配り、映画づくりの現場をしっかり支えていました。
昼食にロケ弁を堪能し、午後の撮影も奮闘。試行錯誤の末、全てのシーンを撮りきりました。撮影を終え、マルチメディア情報センターに戻ると、鶴岡さんが前日に撮影した素材をつないだものを見せてくれました。
「編集が映画をつくるといっても過言ではない」と鶴岡さん。編集は映像をつなげるだけではありません。音を整え、効果音をつけ、時には色味も変えていきます。編集についての講義と質疑応答、参加者一人ひとりの感想の共有を経て、うえだ映画づくり教室が終了しました。
人と共に作品をつくるということ
参加者からさまざまな感想があがる中で、特に印象的だった言葉があります。「今まで作品を一人でつくってきた。今回、大人数で一つの作品をつくるという貴重な経験ができて楽しかった」という青年の感想です。
技術が進化し、手軽に誰でも映像が撮れる時代。一人でも映画をつくることは可能でしょう。しかし、さまざまな人が関わり、チームをつくり、連携しながら一つの作品をつくりあげる。それはまさに映画づくりの醍醐味。人と共に作品をつくる。その経験は得難いものであるとわたしは思います。
さて、ここまで読んでくださった方は、気になっていることがあるのではないでしょうか。
「その作品、どこで観られるの?」
このワークショップで制作された作品がどこで観られるのか。気になりますよね。本作は、今秋開催されるうえだ城下町映画祭で上映予定です。映画祭の会場は上田映劇。映劇の大きなスクリーンで、参加者のみなさんがつくり上げた作品が上映されるのはとてもわくわくしますね。秋が待ち遠しいです。
うえだ城下町映画祭についてはこちらから
今年(2024年)の映画祭は11月15日(金)から17日(日)まで、上田映劇と犀の角で開催予定です。上映作品や時間など詳細については9月中旬にホームページなどで発表されます。
文責・撮影:やぎかなこ(やぎとまちの記録室)