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自分史コラム 時代が変わるということ

気がつけば私が生まれてから半世紀以上が経過しています。
意識はそれほどしていないものの、生まれたころの街の写真などを見ると、ものすごく古くてビックリ(笑)。

その年月のなかで、良くも悪くも社会での通念や定義が変わっていることを知り「あー時代が変わったんだな」と実感するわけですが、そのなかの一つに「LGBTQ(性的少数者。レズビアン 、 ゲイ 、 バイセクシュアル 、 トランスジェンダー 、 クィア または クエスチョニング)」への認識があります。

近年、そうした性の多様性を尊厳をもって自ら宣言する人と、それを認め、応援する人たち(アライ)も急速に増えてきていることは、とても素晴らしい流れだと思いますし、遅すぎた感はあれど、それこそ時代の変化を感じるわけです。

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過去にもLGBTQだけでなく、女性参政権、労働者の権利、人種差別など、長い年月のなか、勇気や知恵を振り絞り、弾圧に耐えながら行動し続けた多くの人々がいました。そうした人々の活動に賛同する人たちが徐々に増えて世論となり、政治を変え、法律や通念を変えてきたのです。

人々が連帯した感動的な実話

そのひとつの事例として、1984年のイギリスでの実話をもとにした映画「パレードへようこそ(原題 「Pride」)」があります。

当時「鉄の女」といわれたサッチャー政権の強硬政策に、それぞれ差別や強制廃坑などの圧力を受けていたLGBTQと炭鉱労働者たち。それまで全く接点のなかった彼らが、自分らの尊厳をまもるために偏見を越え、互いに連帯するという感動的なストーリーです。

いかがでしょうか。予告編だけでも毎回ジーンと来てしまい、同じくライターである妻も、別メディアでこの映画を紹介したほどです。

映画で発見した驚きの事実

この映画に、私ら夫婦はなぜこんなに感動するんだろう、と考えてみました。

まず一つは、上述したとおり、社会的に抑圧されている立場の少数派の人々でも、互いを認め合い、尊重し、連帯して声をあげていくことで、社会をよりよく変えていける希望を感じさせてくれるから。

二つめは、この映画に出てくる炭鉱労働者組合の代表者「ダイさん」が、2018年に亡くなった実父にあまりにもそっくりだったからです。
役者さんの雰囲気もちょっと似ていませんか?

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編集者であった父は、小さな出版社の代表として、原爆被爆者や戦争被害者、不当解雇と闘う労働者、自然破壊に反対する方など、まさに社会的に自由や権利を抑圧されている方々の側に立ち、出版という手段を通じて世の中に問い続けるという人生を生きた人でした。

この映画を観た妻が「ダイさんとお義父さんがそっくりじゃない?」と言うので、再度注意して観てみたらビックリ。
スピーチが上手で、いつも明るく、どこまでも人を信じることで連帯させ、不当な権力に対して抗う姿勢など、まさに生き写し。さらにいえば、劇中のダイさんが着ている服までなぜか似ていて(笑)、この映画への親しみと感動が激増したわけです。

生前は、理想ばかりを語るその姿が時に面倒だったり、重荷だったり、迷惑や心配もかけた父ですが、彼の生き様とはこんな感じだったんだろうな、と改めてこの映画を観て感じたのです。

引き継がれる「思い」が時代を変えていく

話は映画から少しズレますが、時代がかわるということは、こうした多くの人々が、全力でその人生をかけることで実現するものなのだ、と思うのです。

よくこうした文脈で、民衆を表す言葉に「名もなき多くの」という枕詞がつきますが、私はあまり使いたくありません。過去こうした社会の不条理に抗った人々ひとりひとりには名前があり、家族がいて、それぞれの人生があったのは事実だからです。

しかし権力も財力もなく、抑圧されがちな民が権利や尊厳をまもり、時代を動かすためには、圧倒的な人数の行動と時間がかかりますし、さらにその人たちの「思い」が引き継がれていかない限りは不可能です。

これは私と父の関係だけを話しているのではありません。
父も母も生前、私に「私たちの志を引き継げ」などと、一度も私に強いたりしたことはありませんでした。
また、私や妻がしている原発反対の活動などは、たった10年前、3月11日を期に私が自分で決めて始めたことですし、父の生前の功績には、量と質ともに遠く及びませんから。

ただ両親が一生をかけて取り組んでいた社会への思いは、時代をよりよく動かした多くの人たちと同じものだと思っています。
それらの人たちの一生は、決して平安ではなく、むしろ危険で困難のほうが多かったと思います。
 
しかし自分だけでなく、同じ思いをもつ仲間たちと、誇り高く生ききった事実は、魂のレベルにおいて一概に不幸とは決めつけられないのではないかと、生前の両親を思い出し感じるのです。

そのエッセンスを、僅かでも私もこの世の中に伝えることができたら、時代が変わることに少しは貢献できたと納得できるんじゃないかな。
そんなことを感じながら生きています。

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