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英中銀が0.25%に利上げ、主要中銀でコロナ後初

BOE予想外の利上げ インフレを重視の姿勢

BOEは、昨日の金融政策決定会合で、政策金利を0.15%引き上げて年0.25%にすると発表しました。利上げは2018年8月以来3年4カ月ぶりとなります。

新型コロナウイルスの感染拡大後、利上げしたのは日米欧の主要4中銀で最初の利上げとなり、インフレ抑制へ明確な引き締めにかじを切ったことになります。
利上げに賛成票を投じたのは、テンレイロ委員を除く8名となり、テンレイロ委員もオミクロン株の懸念がなければ賛成していたとコメントしています。
国債や社債を購入する量的緩和策については、買い入れ枠を8950億ポンドで維持することを全会一致で決め、残高はほぼ上限に達しており、新規の買い入れを止めて規模を当面保つことになります。
BOEは、金融政策概要の中でオミクロン株に関しては、英国内及び世界中に急速に広まっており、新たなリスクと警戒しつつも、オミクロン株の発見以降、世界中のリスク資産は下落したもののその後回復しており、2022年初頭の経済活動に下振れリスクをもたらすが、需要と供給、ひいては中期的な世界的インフレ圧力への影響のバランスは不明との見解を示しています。
雇用に関しては、9月末に終了した一時帰休者支援制度影響で労働市場の弱体化につながったという兆候は、入手可能なデータからはほとんど見受けられないとしています。
インフレ率に関しては、サプライチェーンの混乱と労働力不足にエネルギーコストの高騰を受けて、冬の期間の大半を5%前後で推移し、2022年4月には6%前後でピークを迎えると予想しています。
その上で、BOEは適切な政策スタンスを判断する際には、一過性の要因(オミクロン株)よりも、中期的なインフレ期待を含む中期的なインフレ見通しに常に焦点を当てるとしており、オミクロン株が経済に与える脅威より、インフレとの闘いを重視した決定となっています。
現地の反応は、今のところ落ち着いており、製造業団体Make UKのシニアエコノミストであるファヒーン・カーン氏は、「ここ数カ月、企業はコスト上昇をサプライチェーンに転嫁するため、物価が制御不能になる兆候を示しており、インフレを抑制しなければ、長期的には消費者にツケが回ってくるのだから、金利の引き上げは正しい動き。」と今回の決定を歓迎しています。
住宅ローンの影響も懸念されますが、EYアイテムクラブのシニアエコノミックアドバイザーであるマーティン・ベック氏によれば、住宅ローンを持つ世帯の割合が減少し、固定金利型住宅ローンの人気が高まっていることから、利上げが経済に与える影響は小さいだろうと述べています。
BOEの今回の決定は、一つ一つの事実を検証し、不確実なものより目の前の事実に対する対策を優先させた結果となっています。今回の決定で、BOEがインフレを上手くコントロールできるか注視していくことになります。

ECB、22年3月に緊急買い取り制度終了

ECBは16日開いた理事会で、コロナ危機で導入した緊急買い取り制度による新規資産購入(PEPP)を2022年3月末で打ち切ると決定しました。総額1兆8500億ユーロ(約240兆円)の同制度の終了で、22年4月以降の資産購入額は現在の半分以下に減る見込みとなり、インフレへの懸念が高まるなか、金融政策の正常化に動き出した形になっています。

インフレ率は11月、統計が遡れる1997年1月以降で最も高い4.9%に高まり、ECBの目標(2%)を大きく上回る状況が続いていますが、ラガルド総裁は記者会見で、インフレ率は22年の大半の期間でECB目標を上回る見込みだが、同年中に低下する公算が大きいと述べ、エネルギー価格が落ち着いてくるだろうとの見通しを示し、利上げについても「2022年に利上げする可能性は極めて低い。これは変わっていない」として早期利上げを否定しています。
欧州は、経済の過熱感が強まる米国に比べれば、まだ需要不足の状態で、失業率も高止まりしており、ECBは一時的な物価上昇に過剰反応せずに、経済の状況を見ながら慎重に緩和縮小を進めていく方針ですが、問題は、欧州の各国によって財政や経済の状況が異なることであり、政府債務の国内総生産(GDP)比はドイツの69%に対し、ギリシャは207%、イタリアは156%、ポルトガルは135%とかなり高くなっています。金融緩和のペースを急ぎすぎれば、南欧の財政不安が高まりかねない状況です。
財政が比較的健全なドイツなどの欧州北部の国々は、インフレへの警戒から緩和縮小を強く求めており、インフレが想定以上に長引き、金融政策が後手に回る可能性もあり、今後の政策方針を巡って、南北の溝がさらに深まりかねない状況かもしれません。

豪就業者数、11月は予想上回る36.61万人増 失業率も改善

豪の11月の雇用統計は、就業者数が前月比36.61万人増と過去最大の伸びを記録し、市場予想を大幅に上回っています。ロックダウンの解除や小売部門のほぼ全面的な営業再開が寄与した結果となっています。
失業率も前月の5.2%から4.6%に急低下し、景気見通しの改善につながるとみられています。
オーストラリア準備銀行(RBA)のロウ総裁は16日の講演で、予想よりも速いペースで景気が回復した場合、債券買い入れプログラムを早期に終了する可能性を示唆しており、今回の雇用統計はこの基準を満たしたとみられています。
但し、RBAが利上げを来年に実施する可能性は低いと見られており、ロウRBA総裁も、豪国内のインフレ率や賃金の伸びは依然として米国を下回っており抑制されているとし、利上げを急がない姿勢を示しています。

為替の動き

昨日は、BOEが利上げを決定したことから、ポンドが強くなりポンドドル、ポンド円ともに今月の最高値を更新する動きとなりましたが、その後は戻り売りに押されて戻す動きとなっています。
円は東京市場から売りが先行する流れでしたが、NY市場に入り、米国政府がバイオメトリック監視巡り中国に対して制裁を科すとの報道が流れるとマーケットがリスクオフに傾き、一転して買いが優勢な展開となっています。
豪ドルは、リスクオン、リスクオフの動きで上下する展開で、ユーロはECBの決定を受けて底堅い動きとなっています。
ドルは、米国10年国債の利回りがあまり上昇せず終日弱い動きとなっています。

今日の予定

日本国内の経済指標
12:00 日銀 政策金利・声明文発表
15:00 黒田日銀総裁記者会見
海外の経済指標
16:00 英 小売売上高・小売売上高(除く自動車)
18:00 独 IFO景況指数
19:00 EU 消費者物価指数・消費者物価指数コア
翌3:00 米 ウォラーFRB理事の発言

本日は日銀の政策金利発表があります。これで、主要各国中銀の金融政策が出揃いますので、2022年へ向けてマーケットがどう動くのか注目していきたいと思います。
今年最後の大イベントも通過したので、ここから年末へ向けては市場も閑散としてきますので、流動性の低下に伴いニュースヘッドラインでの急な値動きには注意しておきたいところです。

それでは今日もよろしくお願いします。

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