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BBB法案に暗雲 オミクロン株の感染拡大と合わせて投資家センチメント悪化
米国 BBB法案に暗雲 ゴールドマンサックス経済成長率引き下げ
米民主党のマンチン上院議員が前日、バイデン政権の経済施策の中核を占める2兆ドル(約227兆円)規模の税制・支出法案を支持しないと表明したことを受け、ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは米国の経済成長率予想を引き下げました。
マンチン上院議員は、バイデン大統領の経済施策が盛り込まれた2兆ドル(約227兆円)規模のBBB法案について、自身が望む変更内容を具体的に示し、税法をより公正なものに改正し、現行の法案よりも幅広く処方薬価格を引き下げるほか、規模を1兆7500億ドルに縮小する場合に限り支持すると述べました。
一方、米民主党のシューマー上院院内総務は、BBB法案について、中道派マンチン議員が反対を明言したものの、2022年の「かなり早い時期」に上院で採決を行う考えを示しています。
バイデン大統領のお膝元の民主党の足並みの不協和音が響き、ゴールドマンサックスは米国の経済成長率予想を以下のように下方修正しました。
1-3月(第1四半期)2%(従来3%)
4-6月(第2四半期)3%(従来3.5%)
7-9月(第3四半期)2.75%(従来3%)
マンチン議員の不支持表明により同案の可決に向けた民主党の計画は事実上崩壊に瀕しており、また、米消費者物価指数(CPI)総合の前年同月比上昇率が数カ月内に一時7%に達する見込みから、マンチン氏らが示しているインフレ懸念は払拭(ふっしょく)されない可能性が高いと指摘し、法案通過はさらに困難になるとの見方を示しています。
また、新型コロナウイルスのオミクロン変異株も、政治の関心事を長期的改革よりウイルス関連へと引き戻す公算が大きいと分析しています。
ゴールドマンサックスは、2022年3月に利上げを行うのではと予想していますが、FOMC当局者は何らかの形の税制・支出法案の可決を想定している可能性が高く、それが実現しない場合は2022年3月に利上げ開始という予想にもリスクが生じると説明しています。
欧米でオミクロン株の感染拡大が続く
欧米ではオミクロン株の感染拡大が続いています。
世界経済フォーラム(WEF)は、来年1月にスイスのダボスで開催予定だった年次総会を延期すると発表しました。新型コロナウイルスの感染が欧州および世界で再び広がる中、2年連続で少なくともスイスでの1月開催を見送る決定をしています。
英国ロンドンで新型コロナ感染による入院者数が1819人と、1週間前(1360人)に比べて33.8%増えたています。オミクロン変異株がまん延する英国内でも、特にロンドンは感染状況が深刻化しています。
ジョンソン首相は、政権に助言する専門家がすぐに制限を強化すべきだと主張を受け入れ、クリスマスを前に新たな制限措置の導入を検討しており、ジョンソン内閣における議論が膠着状態に陥っています。与党内からは市民生活に対する不合理で不必要な干渉になると反対する声が上がっています。
ジョンソン首相は、自身の昨年ロックダウン期間中に首相とスタッフがワインを飲んでいることを示すガーディアンの写真に対して、ジョンソン首相彼は「仕事について話している職場の人々の会議」と苦しい言い訳を続けており、ジョンソン首相と内閣・与党との軋轢はより大きくなりつつあります。
この状況下で、ジョンソン首相がロックダウン導入を決定すれば、英国の政局混乱がより混乱し政治的リスクとしてクローズアップされるかもしれません。
その他、オランダが少なくとも1月14日まで完全なロックダウンに入ると発表し、欧州主要国でもコロナ対策の制限措置強化が検討されています。
米国では、首都ワシントンで、屋内でのマスク着用が21日から再び義務付けられ、ワクチン接種の有無や回数などにかかわらず適用されます。また、米国の学校閉鎖が82%増加し、オミクロン変異株が全米に拡散している状況が伺えます。
日本にとって身近な米国である在日米軍基地内でのクラスターも発生しており、沖縄のキャンプハンセンでは、本国から派遣された海兵隊員180人あまりの感染が確認され米兵の外出禁止と移動制限が決定される見込みです。在日米軍基地内には日本人従業員も多く、既に沖縄では日本人従業員1人が新たにオミクロン株に感染したことが明らかになっています。
日本も空港検疫での水際対策を強化していますが、在日米軍経由でのオミクロン株感染拡大のリスクは念頭に置いておいた方がいいかもしれません。
投資家センチメント悪化
投資家センチメントが悪化し、クリスマス休暇を控えた薄商いで値動きがより増幅されたかもしれません。
欧州株は続落し、ストックス欧州600指数は過去3週間余りで最大の下げとなっています。
米株式相場も3営業日続落となり、ニューヨーク原油先物相場も続落し、一日の下落率としては今月最大となっています。
米国債市場では年限が短めの国債が堅調だった一方、長めの年限が下落し、為替市場ではリスクに敏感な通貨が軟調。資源国通貨が下落となっています。
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今日の予定など
日本国内の経済指標
なし
海外の経済指標
09:30 豪 RBA議事録公表(12月7日開催分)
20:00 英 CBI流通取引調査
22:30 米 第3四半期経常収支
27:00 米 30年債入札
今日の東京株式市場は、海外でのオミクロン株感染拡大の不安売りが一巡して反発して始まっていますが、相場に影響を与える材料も乏しく、欧州市場からは再び、米・英の政局、オミクロン株感染について警戒する動きになるかもしれません。
クリスマス休暇を控えて、市場参加者も少なく流動性が低下していることから想定以上の値動きになる可能性もあるので、今日もリスクオン・リスクオフの動きに警戒しながら相場を見ていく事になると思われます。
それでは今日もよろしくお願いします。
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