1月英国経済は予想外の急成長 ドル円117円突破
1月英国経済は予想外の急成長だが伸びは限定的か
英国の1月の国内総生産(GDP)は前月比0.8%増と市場予想を大幅に上上回り、昨年6月以来の大幅な増加となりました。来週のBOE会合で利上げ観測が強まる可能性が高くなります。
2月もプラス成長になる見通しですが、エコノミストは先行きは厳しいと指摘し、キャピタル・エコノミクスの英国担当チーフエコノミスト、ポール・デールズ氏は「生計費の危機とウクライナ戦争の影響を踏まえれば、おそらく今回の統計が今年最高となるだろう」と述べています。
また、今春にはインフレ率が8%を超え、石油・ガス価格が高騰したままでは景気後退の可能性があると警告する声も出います。
インフレ率は2022年の大半の期間、6%以上で推移し、個人消費は今年後半は落ち込むとの予測されています。BOEは、インフレ率の上昇を抑制することに重点を置いていますが、政策立案者は5月に政策金利が1%に達し、成長リスクが高まれば、さらなる引き上げを控えると考えられます。
政策金利が1%に達した時点で、BOEはバランスシートの縮小を加速させるため、債券の売却を「検討する」とも述べており、これはリスクを伴うプロセスであるため、春以降の利上げをより慎重に行うと思われます。
ウクライナ戦争とそれに伴うエネルギーコストの高騰は、英国が個人消費の低迷に陥るリスクが高まっていることを意味します。四半期毎の成長率は今年後半にはゼロになる可能性も高くなります。
英国は、金属、石炭/コークス、肥料をロシアから輸入していますが、英国内需要への寄与はEU平均と比べて小さく、また、英国がロシアから直接調達するガスは比較的少なく、他のヨーロッパ諸国と比べると、対ロシア経済制裁の影響は小さいと思われます。
しかし、英国はヨーロッパで最も天然ガスに依存している国の一つであり、これはイギリスが石炭をほとんど使わず、風力・太陽光発電の役割が大きくなっていることを一部反映しています。
卸売価格の高騰を受け、エネルギー規制当局は4月に家庭用電気料金の上限を平均54%引き上げると発表しました。また、先物の価格水準から、政府による一世帯あたり200ポンドの割引を考慮しても、次回更新の10月にはさらに30%以上の値上げが想定されています。
これと並行してガソリンや食品価格が上昇するため、インフレ率のピークは4月に8%近くに達し、年末は6%近くになると想定されています。
その結果、個人消費の落ち込みが予想され、BOEの大幅な引き締めの必要性が低下する可能性があります。
一方で、オミクロン株は景気回復に持続的なダメージを与えることはほとんどなく、賃金上昇率は歴史的な水準で急上昇しており、パンデミックによって築かれた貯蓄のストックはGDPの8%に達しています。
しかし、これらは高所得者層に集中しており、高所得者層はインフレに直面しても支出を大幅に削減する可能性は低いと思われますが、低所得者層は家計がひっ迫し、政府は低所得者層への支援をさらに強化を行わなければ、消費者心理は悪化し、今年後半には家計消費が落ち込むと推測されます。
これらすべては、BOEが今年直面する成長率の低下とインフレ率の上昇という厳しいトレードオフをさらに際立たせており、BOEは3月と5月に利上げを実施する確率は高いですが、それ以降は慎重な判断が必要となります。
ドル円117円台に乗せ、5年ぶり高値
昨日の外国為替市場では、ドルが上昇。ドル円は1ドル=117円台に乗せ、5年ぶり高値を付けています。
プーチン大統領の「一定の前向きな進展」発言で、安全通貨の円売りが進み、来週は、米国FRBが利上げに踏み切り、日銀はマイナス金利を維持するため、日米の金利差が明確になりつつあります。
これらの要素が組み合わさり、116.35を超えるストップロス注文から始まった買い圧力は勢いを増して、117円を突破したと思われます。
FRBは3月16日に0.25%の利上げをほぼ確実視されており、一方の日銀は次回会合で-0.1%の本則金利を維持すると予想されています。
日本の1月の全国消費者物価指数は年率0.5%で、3月17日に発表される2月の数値では0.3%に低下すると予想されており、コア指数は1月に-1.1%で、2月には-0.9%になると予想されています。
また、日本はエネルギーのほとんどを輸入しており、昨年は物価が高騰したが、デフレはほとんど解決できない問題であり、日銀では金利の引き上げはまだまだ先と見ている模様です。
FRB と日銀の金利政策は短期的なものだけでなく、予見可能な将来にわたっても正反対であり、この違いは、ウクライナ戦争が終結後も変化しないと思われることから、暫くは、円高になるようなシナリオは低いかもしれません。
ドル円が上昇すれば、クロス円も上昇しやすいのですが、ポンド円は上値が重い印象であり、地政学的リスクがより高いユーロよりもネガティブな反応になっているように見受けられます。
基本は、ポンド円以外はロング目線、ポンド円は来週のイベント通過後の反応を見極めてから判断した方が賢明かもしれません。
来週のイベント FOMC・BOE・英国雇用統計など
3月15日 英国1月失業率・賃金
英国の失業率は12月に4.1%と2020年7月以来の低水準を維持し、来週に発表される1月の数字もこのレベルかその前後で推移すると予想されています。人手不足は依然として続いいますが、賃金の伸びが回復の兆しをほとんど見せていません。ボーナス除く平均週給は、9月の5%から12月には3.7%に低下しています。
英国のセインズベリー、テスコなど主要企業が賃上げを発表しており、賃上げを発表し、リドルもインフレ率に応じた同様の賃上げを発表しています。
このため、今後数ヶ月の賃金上昇を下支えすることが期待され、ボーナス含む平均週給は4.3%増、ボーナス除く平均週給は4.1%増になると予想されています。
3月16日 米国2月小売売上高
米国の小売売上高は、12月に-1.9%の大幅減となった後、1月に大きく回復しました。1月の小売売上高は、消費者信頼感が弱いにもかかわらず、支出が過去10ヶ月で最も速いペースで回復し、予想の2%を大きく上回る3.8%増となっています。
最も伸びたのはオンライン販売、家具、自動車、建材で、米国の消費者はエネルギー価格の上昇や生活コストの上昇をあまり気にせず、家の改善や車のアップグレードにお金を費やしたことが示唆されています。
米国消費者は、過去18ヶ月間の様々な景気刺激策により、物価上昇に対して経済的にやや有利な立場にありますが、長期的には、投入価格が上昇し続けるため、消費は減少すると思われます。
米国の2月の小売売上高は0.4%増と予想されています。
3月16日 FOMC政策金利決定
3月15-16日のFOMCでは、25bpsの利上げが行われるのはほぼ確実です。FOMCでは50bpsの利上げを望む声もありますが、ロシアのウクライナ侵攻とそれに伴う世界の商品価格の高騰を考えると、慎重な判断になると思われます。
直近の雇用統計によると、2月の賃金上昇率は5.5%から5.1%に減速しており、依然としてかなり高いものの、賃金が爆発的に上昇することを示唆するものではありません。FRBは、年内に米国経済を減速させそうな投入財価格の高騰を背景に、将来の利上げに向けたメッセージをどのように発信するかが課題かもしれません。
雇用に関しては「最大雇用」に達したと見ていることから、主な焦点はインフレ率となり、今年の夏頃には CPIが10%に達するという見通しもあり、今後数ヶ月間にFRBがどの程度積極的な金融引き締めを行うかを市場が見極めるため、FOMCでの経済見通しは重要になります。
ロシアによるウクライナ侵攻の前には、今年7回の利上げを示唆する市場予測もあり、現在は慎重な判断を下すのではないかという見方もあります。そうならないかもしれないとする意見もありますが、FRBは引き締めを急ぎすぎて景気を後退させるリスクと、インフレを放置して景気回復させるリスクのバランスを取らなければならないので、3月のFOMCでは利上げ以上に、経済見通し、FRBからの先行きに関するメッセージなどを確認することが重要になります。
3月17日 BOE政策金利決定
ここ数ヶ月、ガイダンスが混乱していたにもかかわらず、BOEは利上げに関して先手を打ってきた面があります。12月以降の2回の利上げにより、基準金利は0.5%に戻りましたが、これはパンデミック前の水準を下回っています。失業率は依然低く、平均賃金も低迷しているため BOEは、今のインフレが今後どこまで続くのかを懸念しながら見ているのかもしれません。
CPIはすでに5.5%に達し、RPIはさらに上昇しており、BOEは4月までに7.25%の水準になると予想しています。
ウクライナ戦争などで、エネルギー、農産物などの商品価格の高騰を考慮すると、このレベルは暫くは維持される可能性が高く、夏までに2桁、10%以上に上昇する可能性が非常に高いと思われます。
FRBと同様に、BOEもインフレ抑制という点で非常に大きな問題に直面することになり、ポンド安も助けにはならないでしょうから、BOEは年内にさらに何度も利上げをしなければならない状況になります。
ただし、英国経済、特に住宅市場、そして現在固定金利の住宅ローンを利用していない人々にとって大きな影響を与える可能性があります。
今回の政策金利決定は、25bpsの利上げとなることは確実だと思われますが、政策金利が1%ととなる5月以降のQT開始など、今後の見通しを確認することが必要です。
今週もお疲れ様でした。
引き続き、来週もよろしくお願いします。
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