挑戦しやすい風土・文化を育む「健全な衝突」!?
現代の職場環境では、心理的安全性が高い文化が求められています。その中で、健全な衝突(ヘルシー・コンフリクト)は欠かせない要素となります。
正解のない時代においては、これまでの効率性と結果重視が主流の文化に固執せず、異なる意見や視点を受け入れることが成長の鍵になると思います。
これまでの「正解のある時代」とこれからの「正解のない時代」については、こちらをご参照ください。
今回は、多様な価値観・視点があるからこそ生まれる「健全な衝突(ヘルシー・コンフリクト)」について考察していきたいと思います。
まずは、その前に…簡単に「心理的安全性」ついてのおさらい
▶︎心理的安全性が高い風土・文化
◾️エイミ・エドモンドソンの定義
「心理的安全性とは、チームメンバーが自分の考えや疑問、間違いを安心して共有できる環境であり、リスクを取ることや失敗を恐れることなく、自由に意見を述べることができる状態を指す。」
つまり、地位や経験に関わらず 対人リスクを考える必要がなく、安心して自分の意見・考えを発言し、健全な意見衝突(ヘルシー・コンフリクト)ができる状態(環境)。
◾️職場環境における対人リスク
無知だと思われる不安:わからないことが質問できない
無能だと思われる不安:失敗したことが言えない。失敗できない。
ネガティブだと思われる不安:こんなことが起きた時のために、事前に対策を考えませんか?と意見できない
邪魔をする人だと思われる不安:会議の終わりに話がまとまりかけたときに「こういう新しいアイデアはどうでしょう」と言い出すことができない
◾️心理的安全性の誤解
心理的安全性な組織・チームは、単なる「仲良し組織」でもないし、率直に言い合えるが、決して「仲が悪い組織」でもない。
つまり、仕事の基準(目標達成に対する責任)が高く、心理的安全性のあるチームは目標達成するための「健全に衝突」が積極的に行われている。
目標達成する責任の高さによる「快適」と「学習」の違いについても、こちらの記事でまとめておりますので、ご参照ください。
▶︎心理的安全な組織・チームづくりのための「大方針」
それは、「お互いに罰・不安を与え合うのを避けること」
◾️罰・不安を与えるチームイメージ
◾️悪しき文化
「罰」や「不安」に よって行動が縛られており、あくまで「怒られないために」仕事をこなしている。
心理的安全性の高い組織文化では、メンバーが互いを尊重し合い、ミスや失敗を非難されることなく、自由に意見を言える(健全な衝突)ような雰囲気があることが重要です。
▶︎健全な衝突(ヘルシー・コンフリクト)
「健全な衝突(ヘルシー・コンフリクト)」は、職場での意見交換を活性化し、新たな挑戦を受け入れる土壌を作る上で欠かせない要素です。
意見の対立や異なる視点を建設的に扱うプロセスとして、単なる対立を超えて「異なる考え方」や「視点」を尊重しながら、創造的な解決策を見つけるための重要な手段です。
◾️コンフリクトの定義
人間関係のコンフリクト:人の好き嫌い
タスクのコンフリクト:同じ問題や事象について意見が異なる
プロセスのコンフリクト:「それはうちの仕事ではありません」
◾️タスクのコンフリクト
グループメンバー間での意思決定の内容に関する意見の不一致や、タスクに関する見解、アイデア、意見の違いを指します。
心理的安全性が高いチームでは、タスクコンフリクトがメンバーのアイデアや意見を引き出しやすくなり、対人的な否定的結果を心配せずにタスクパフォーマンスに集中できます。
心理的安全性は、タスクコンフリクトを促進し創造性や意思決定の質を高める一方で、機能不全な相互作用の発生を抑制し、チームパフォーマンス向上に影響します。
◾️人間関係・プロセスのコンフリクトの影響
▶︎人間関係のコンフリクト
チームメンバー間の対人の不一致から生じる意見の対立を指し、緊張、不快感、敵意も含みます。
個人的な感情や対立が絡むため、建設的な議論よりも感情的な対立を引き起こすことが多くあります。
▶︎プロセスのコンフリクト
チームメンバーや部門間でプロセス(手順や業務の進行)に対する意見の違いが生じると、業務の進行が滞ることがあります。
人間関係やプロセスのコンフリクトは、感情的対立や信頼の損失、効率の低下を引き起こし、業績に悪影響を及ぼします。
これは個人的イメージですが、個人の感情や手順や業務の進行に関する対立など、根本的問題の解決が必要な課題が残っている場合、業績に悪影響を及ぼす可能性がありそうですね…
*疑問:
「健全に衝突」する けれど、お互いに罰・不安を与え合うのを避けるためには、どうすれば良いのか?
◾️自分を「問題の一部」に入れること
「健全に衝突する」ためには、私たち自身が問題に対する一部であると認識することが重要です。組織やチームの中で、私たちはつい自分を問題の外側に置いてしまうことがありますが、自分を問題の一部と見なすことで、より効果的なアプローチが可能になります。
◾️オススメは、自分が使う「言葉」を変えていくこと
これらを実践するためには、自分が使う「言葉」を変えていくことがオススメです。
言葉はコミュニケーションの基本であり、対話の質を大きく左右します。
建設的な意見交換を促進するためには、否定的な言葉や攻撃的な表現を避け、相手の意見を受け入れながらも自分の考えを明確に伝える言葉を選ぶことが求められます。
健全な衝突を促進するためには、否定的な言葉を避け、「 I (アイ)」メッセージを用いて意図を明確に伝えることが大切です。また、中立的な言葉選びと質問を心がけ、ポジティブなフィードバックを加えることで、対話がより効果的になります。
▶︎さいごに
心理的安全性は、ひとつひとつの行動の積み重ねで風土となり、文化になります。
健全な衝突は、組織がより挑戦しやすい風土・文化を育むための大切な要素です。衝突は必ずしも避けるべきものではなく、チームの創造性や問題解決能力を引き出す力を秘めています。しかし、「健全な衝突」を実現するためには、心理的安全性が欠かせません。
メンバーがお互いを尊重し、建設的な意見交換ができる環境があってこそ、衝突がチームの成長へと繋がります。
次回は、
その 心理的安全性を育むための「第一歩」 として、職場で使う言葉に焦点を当てます。言葉の選び方が、チームの雰囲気やコミュニケーションにどのような影響を与えるのか、そしてそれがいかにして心理的安全性を高めるのかを考察していきます。
◾️参考・引用
石川遼介.(2020).心理的安全性のつくりかた「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える.JMAM.
株式会社 ZENTech 心理的安全性 マネジメント講座 25期講義内資料