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チーム力を引き出す鍵

チームワークの成功は、単に個々のスキルや能力だけでなく、チームメンバーがお互いを信頼し合い、率直に意見を交換できる環境が整っているかどうかによっても決まります。これが「心理的安全性」と呼ばれる概念です。

心理的安全性があるチームでは、誰もが自由にアイデアを出し合い、失敗や意見の相違を恐れることなく、積極的に参加できるのです。

心理的安全性がチームの生産性や創造性に与える影響について掘り下げ、どのようにしてその環境を育むかについて考察していきます。


▶︎心理的安全性の必要性が高まっている背景

心理的安全性がフォーカスされるきっかけとなったのは、Google社が 2012~2015年までの 4年間に行った生産性向上のためのプロジェクト「プロジェクトアリストテレス」です。このプロジェクト結果は、心理的安全性が高いチームがより高いパフォーマンスを発揮することを示しており、企業や組織が心理的安全性を重視する理由の一つとなっています。この研究結果が広まることで、組織やチームにおいて心理的安全性の重要性が認識されるようになり、多くの企業や組織が心理的安全性を重視するようになったのです。

参考:The five keys to a successful Google team

一方で、こうした文化が存在しない状況では、スタッフは自身の知識の不足を恐れて質問をすることができず、ミスが生じる可能性があります。また、上司の意見に異論を唱えることができず、現状を維持する傾向に陥ります。その結果、生産性が低下し、優れた人材が退職してしまうおそれがあります。

リーダーは、スタッフに対して開かれた姿勢を示し、意見を述べやすい雰囲気を作ることが非常に重要です。

◾️心理的安全性に関する研究の歴史

  1. 1950年代–1960年代: 初期の理論と実験
    心理的安全性の概念は、主に組織心理学とグループダイナミクスの研究から始まりました。たとえば、アブラハム・マズローの欲求階層説やカート・ルーインのグループダイナミクス理論が、個人の心理的な安心感やグループ内での支援の重要性に関連して言及されました。

  2. 1970年代–1980年代: チームパフォーマンスとリーダーシップ
    チームパフォーマンスやリーダーシップに関する研究が進み、心理的安全性がチームの効率やコミュニケーションに与える影響が考察されました。特に、ジェームズ・マーチとジョン・オーデの研究が、組織内での心理的な安全性の影響を示唆しました。

  3. 1990年代:グループダイナミクスとリーダーシップの深化
    グループダイナミクスやリーダーシップに関する研究が深化し、心理的安全性がメンバーの信頼感や協力の基盤となることが示されました。エイミー・エドモンドソンの研究*がこの時期に注目され、彼女は「心理的安全性」という用語を明確に定義しました

  4. 2000年代以降: 実証研究と普及
    Googleの「Project Aristotle」などの実証研究が心理的安全性の重要性を明らかに
    し、企業や組織における実践としての認識が高まりました。これにより、心理的安全性の概念が広く普及し、現代の組織文化やチームマネジメントにおいて中心的な役割を果たすようになりました。

心理的安全性に関する研究は、組織やチームのパフォーマンスを向上させる重要な要素として認識され、さまざまな分野での応用が進んでいます。
* Edmondson,A.(1999).Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams.Administrative Science Quarterly, 44(2), 350-383.

▶︎心理的安全性の定義

◾️エイミ・エドモンドソンの定義

「心理的安全性とは、チームメンバーが自分の考えや疑問、間違いを安心して共有できる環境であり、対人リスクを取ることや失敗を恐れることなく、自由に意見を述べることができる状態を指す。」

◾️職場環境における対人リスク

  1. 無知だと思われる不安:わからないことが質問できない

  2. 無能だと思われる不安:失敗したことが言えない。失敗できない。

  3. ネガティブだと思われる不安:このリスクはどうしますか?と意見できない。

  4. 邪魔をする人だと思われる不安:会議が終わりにさしかかったときに、「こういう新しいアイデアはどうでしょう?」と新たな提案ができない。

心理的安全性の高い職場

 心理的安全性の高いカルチャーでは、メンバーが互いを尊重し合い、ミスや失敗を非難されることなく、自由に意見を言えるような雰囲気があることが重要です。

◾心理的安全性の勘違い

  • メンバーが自然に仲良くなる状況を意味するわけではありません

  • プレッシャーや問題がないことを示唆するわけでもありません

  • チームには結束力が必要とされるわけでもありません

  • 意見が一致しなければならないというわけでもありません

*チームの結束力は、異議を唱えることに対する積極性を弱めてしまう可能性があります。具体的には、結束している多くのグループでは、重要な問題についてみんなの意見が一致しているように見えるため、調和を乱したくないと思ってしまうことがあります。これにより、意見を言わなくなったり、違う観点を持っていることを認めなくなったりしてしまい、まずい意思決定をしてしまうことがあります

▶︎さいごに

心理的安全性が高いチームでは、メンバーが自由に発言でき、新しいアイデアが生まれやすくなります。 そのため、イノベーションが促進され、生産性と収益性が向上するのです。 リーダーは心理的安全性の重要性を理解し、そうした環境づくりに努める必要があります。

次回は、心理的安全性が高い場合と低い場合では、どのような違いが生まれるか考察していきます!


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