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言葉を意識することで変わる「行動」!?

心理的安全性とは、組織やチームの中でメンバーが安心して意見を出し合い、挑戦・成長できる風土を指します。
このような風土が整っていると、メンバーは失敗を恐れずに新しいアイデアを提案し、問題解決に積極的に取り組むことができます。
その結果、組織全体の成長や革新が促進され、メンバー個々の能力も引き出されます。心理的安全性は、組織の発展に不可欠な風土です。

この基盤を築く上で、日々のコミュニケーションにおける「言葉」が極めて重要です。使う言葉が、メンバーの「行動」に直接的な影響を与えます

ハーバード大学の B.F.スキナー の行動分析学では、「行動」は「きっかけ」と「みかえり」によって変化するとされています。

まず「きっかけ」となる出来事や刺激が行動を引き起こし、その行動に対して「みかえり」(報酬や結果)が与えられます。
Happy な「みかえり」があれば、その行動は繰り返される可能性が高くUnhappy な場合は行動が減少します

この「きっかけ」→「行動」→「みかえり」のサイクルを活用することで、望ましい行動を促し、心理的安全性を高めることができます

⬇︎ 言葉がけのポイントは、こちらをご参照ください。

今回は、心理的安全性マネジメント講座の内容を参考にしながら、B.F.スキナーの行動分析学のフレームワークを活用し、きっかけとみかえりを通じて望ましい行動を増やすポイントを中心に考察し、心理的安全性向上へ活かす具体策を探っていきたいと思います。


◾️ Happy な「みかえり」が「行動」を増やす鍵!

イメージしてみてください。

例えば、頑張って提案したアイデアがチームに受け入れられ、「ありがとう!」や「いいね!一緒にカタチにしていこう!」と「Happy なみかえり」をもらえたら、きっとまた新しいアイデアを出そうと思うのではないでしょうか。

「Happy なみかえり」

反対に、頑張って提案したアイデアが「これできるの?」や「このアイデア大丈夫?」と批判されたり無視されたりする「Unhappyなみかえり」があれば、次の提案をためらってしまうと思うのではないでしょうか。

「Unhappyなみかえり」

このように、私たちは「Happyなみかえり」を得られる行動を自然と繰り返し、「Unhappyなみかえり」が伴う行動は避ける傾向にあります

▶︎ 行動分析の2つの重要なポイント

*「みかえり」が行動の確率を左右する

  • 好子(こうし):「Happy」は、次回同じ行動をとる確率を増やす

  • 嫌子(けんし):「Unhappy 」は、 次回同じ行動をとる確率を減らす

出典:株式会社 ZENTech 心理的安全性マネジメント講座 第25期講座

*「行動」の直後の「みかえり」が 強い影響力を持つ

筋力トレーニングを例に考えてみてください。

筋トレを続けると中長期的には身体が引き締まり、健康が向上するというHappyな「みかえり」(好子)を得られます。しかし、直後には筋肉痛や疲労感というUnhappyな「みかえり」(嫌子)を感じます

出典:株式会社 ZENTech 心理的安全性マネジメント講座 第25期講座

だからこそ、筋トレの継続は「難しい」と感じやすいのです。このように、直後の「みかえり」が行動の持続に与える影響は大きく、ポジティブな行動を増やすためには、その直後にどのような「みかえり」を得られるかを意識することが重要です。

「行動」の直後の「みかえり」が強い影響力を持つことはイメージできたと思います。

▶︎ もし、「行動」の直後の「みかえり」が、嫌子:Unhappy だった場合

叱責という「Unhappy 」なみかえりは、 次回同じ行動をとる確率を減らすため「ミス」自体が減るのではなく、「ミスが起きた際、報告する」という行動が減ることになります。

出典:株式会社 ZENTech 心理的安全性マネジメント講座 第25期講座

 つまり、
「みかえり」が 好子:Happy + 行動直後 にかえってくる事が、次回の「行動」を増やすポイントになることが、イメージできると思います。

◾️ 「望ましい・期待している行動」は、「きっかけ言葉」が鍵!

イメージしてみてください。

「当事者意識を持って、仕事をしてくれ!」と上司から期待を込めて伝えられたとしましょう。

あなたは、どのような「行動」をしますか?

ここで思い出していただきたいのは、「きっかけ言葉」のポイントは、「かみ砕くこと」。「かみ砕く」を別の言葉にすると「ローコンテクスト」となります。

⬇︎「ローコンテクスト」については、こちらをご参照ください。

ここで問題になるのは、「当事者意識を持って」という言葉になります。
なぜ問題になるのかといいますと、「当事者意識」の言葉は「人それぞれの解釈」により変動してしまうためです。

例えば、
「患者様治療で当事者意識を持って」という指示があったとしても、
あるスタッフは「決められた治療プランに従って、正確にリハビリや処置を行うこと」と解釈し、別のスタッフは「患者様の状態に応じて治療プランを調整し、医師や他のスタッフと協力して最適な治療を提供すること」と捉えるかもしれません。

「当事者意識を持って」という抽象的な指示ではなく、例えば「患者様治療において、個々の症状を見極め、治療方針に必要な調整を加え、必要に応じて医師や他のスタッフと連携する」というように、具体的な行動に言語化することで、何を求められているのかが伝わりやすく「望ましい・期待されている行動」が増えてきます

出典:株式会社 ZENTech 心理的安全性マネジメント講座 第25期講座

▶︎ 「望ましい・期待している行動」を増やすポイント

「心の中」を表す「言葉」は、あくまでも「それぞれの心の中」なので、その言葉が意味することを「共通理解」をしていないと行動にブレが生じやすいのは、ご理解いただけたと思います。

そのため、「心の中」を言語化することがポイントです。

出典:株式会社 ZENTech 心理的安全性マネジメント講座 第25期講座

心の中を言語化することで、「きっかけ言葉」のポイントである「かみ砕く」ことができ、「期待する行動」へつながりやすくなります

つまり、
望ましい・期待している行動を増やすポイントは、

「望んでいる・期待している」行動を相手が理解しやすく「かみ砕き」、行動を起こしてくれた後、出来るだけ早いタイミングで、 相手がHappy になるみかえりを返すことです。

重要なのは、「相手が Happy になる」
つまり、「判断の基準が相手にある」ことです。

この「きっかけ」と「みかえり」がうまくいっているかどうかは、「相手の行動が増えているか?」を観察することで判断することになります。

▶︎ そもそもの「行動」を増やすポイント

「行動」を増やすポイントは、「質」に対するフィードバックから始めるのではなく、「報告した行動」を受け止め「Happy なみかえり」を返すことです。

出典:株式会社 ZENTech 心理的安全性マネジメント講座 第25期講座

▶︎ 「質」を上げるためには、「量」を増やし「教育」することがポイント

「行動」を増やす=「量」。

「質」を上げるためには、「報告する行動」を増やし「フィードバックの機会(教育)」を増やすことがポイントになります。

出典:株式会社 ZENTech 心理的安全性マネジメント講座 第25期講座

ここでの注意は、「フィードバック」も「Happy のみかえり」を意識することです。

「報告する行動」が増えても、「フィードバック」が「叱責」や「自信をなくす」ような「Unhappy のみかえり」になると、「報告する行動」は減っていくことになります。

では、「好ましくない報告」をされた場合は、どうしますか?

例えば、
ある患者様から「待ち時間が長すぎる」といったクレームが報告されたとしましょう。この場合、まず「報告してくれた行動」に対して感謝を伝えることが大切です。

そして、クレームの内容に対しては「なぜ待ち時間が発生したのか」「どのように改善できるか」を一緒に考え、意見交換を行います。

このように、報告の行動とクレームの内容を分けて扱い、報告したスタッフに対してポジティブなフィードバック(Happy なみかえり)を与えることで、今後も報告しやすい環境を作ることができます。

次に、叱責や自信をなくすようなフィードバックは、報告の頻度を下げてしまうため、スタッフと一緒に「どうすれば待ち時間を短縮できるか」や「患者様に不安を感じさせない対応方法」を考える時間を持ちます

これにより、問題解決だけでなく、スタッフ全員で協力して改善策を生み出すことが可能になります。重要なのは、クレームに対する解決策を個人に任せるのではなく、チームとして取り組む(Happyなみかえり)ことです。

このプロセス自体がスタッフの「報告する行動」を促し、心理的安全性を高める効果もあります。

有能なチームには、率直に話す風土があって、気軽にミスを報告したり話し合ったりできるのだとしたらどうだろう。不意に私は思った。優秀なチームは、ミスの数が多いのではなく、報告する数が多いのだ、と。

出典:エイミー.C.エドモンドソン,& 野津智子(翻訳).恐れのない組織: 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす.英治出版.

◾️ さいごに

望ましい行動を増やし、心理的安全性を高めるためには、正論で詰め寄るのではなく、柔軟なアプローチが重要です。

「行動が変わる」ためには、相手に具体的な行動を明確に伝える「きっかけ言葉」を使うことが大切です。さらに、行動後に与えられる「みかえり」が「Happy」であれば、安心して行動を繰り返すことができます。

もし、期待通りにいかない場合は、自らの「きっかけ」と「みかえり」を振り返り、次の改善策を考えることが成長の機会になります

また、「意見を言いづらい」「質問しにくい」背景には、Unhappyな「みかえり」が存在するかもしれません。その原因に気付き、改善することが心理的安全なチームづくりの第一歩です。

次回は、「心理的安全性の高い職場風土への一歩」というテーマで、私が実現したい「職場風土」を整理・考察してみたいと思います。

◾️ 参考

  • 株式会社 ZENTech 心理的安全性マネジメント講座 第25期講座

  • 原田将嗣 著.石井遼介 監修.(2022).最高のチームはみんな使っている.心理的安全性をつくる言葉55.飛鳥新社.

  • エイミー.C.エドモンドソン,& 野津智子(翻訳).恐れのない組織 : 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす.英治出版.

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