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「上場廃止はむしろ良いこと」東証のスタンスと東証フォローアップ会議について

おはようございます!わーちょんのNote大学と称して、日々の学びをNoteにまとめていきます!

今回のテーマ「フォローアップ会議」

2024年5月に開催されたフォローアップ会議の内容についてまとめます。会議に関連する資料として、HPや議事録も開示されていますが、情報量が多いため、ポイントを絞ってご紹介します。

今回の会議では、上場企業を経営する上で知っておくべき重要な情報が掲載されていました。議事録の内容も含めて、上場企業の社長になった気分で執筆したいと思います!

参考動画はこちら

フォローアップ会議って何?

市場区分見直しの実効性向上に向けて、施策の進捗状況や投資家の評価などを継続的にフォローアップし、上場会社の企業価値向上に向けた取組や経過措置の取り扱い、ベンチャー企業への資金供給などに関する追加的な対応について議論を行うため、エコノミスト、投資家、上場会社、学識経験者その他の市場関係者が参加する有識者会議のこと。

フォローアップ会議をチェックしておいた方がいい会社

  1. 適合計画書を提出している会社

    • 上場を維持するための基準を満たしていない場合、上場廃止のリスクがあります。まだ基準をクリアしていない会社は、今後の動向を確認しておくべきです。

  2. ROEが8%未満の会社

    • ROE(自己資本利益率)が低い会社は、収益性に課題があると見なされることがあります。東証では改善策を検討していたため、今後の対応策に注目しておいた方が良いです。

  3. PBRが1倍を下回る会社

    • PBR(株価純資産倍率)が1倍を切る会社は、市場で企業の価値が低く評価されている状態です。こちらも東証で対策が検討されているため、その進展をチェックしておくことが重要です。

今回は第16回、2024年の5月に行われた内容を解説。

フォローアップ会議のHP

旧市場区分から現在の市場区分への変化

以前は、株式市場には「東証一部」「東証二部」「マザーズ」といった区分がありましたが、現在はこれらが次の3つのカテゴリーに分かれています。

  1. プライム

  2. スタンダード

  3. グロース

市場区分の見直しに関するフォローアップ会議の内容

今回注目すべきは、市場区分の見直しと今後のフォローアップに関する議論です。

2022年4月に市場区分が見直され、その後の状況や、今後どのようにフォローアップしていくかについて話し合われました。

市場区分の見直し後の状況

現在、経過措置が適用されている会社は345社です。2022年7月に発表された当初は492社でしたので、減少しています。これらの会社は、一定期間内に基準を満たさなければ上場廃止となるため、改善が求められています。

基準ごとの適合していない会社の内訳

  • プライム:104社

  • スタンダード:190社

  • グロース:51社

これらの会社は、流通株式の時価総額流通株式の比率が基準を満たしていないため、適合していません。

新たに上場維持基準に未達となった企業の状況

新たに上場維持基準に未達となった企業は、主に流通株式時価総額流通株式比率が基準を満たしていないことが原因です。当初、株価が高かったため基準をクリアしていた企業も、株価が下がることで基準を満たせなくなり、未達となったケースがあります。

具体的には、以下のように未達となった企業があります:

  • 流通株式時価総額:89社

  • 流通株式比率:44社

  • 時価総額:9社

合計で136社が、市場区分見直し後に新たに基準未達となりました。

見直し後の状況まとめ

見直し後の状況がまとめられたスライド

市場区分の見直しにおいて、最初は492社が経過措置の対象でしたが、そのうち約6割283社が経過措置の適用から外れました。具体的には、以下のように外れた理由があります。

  1. 基準適合(124社)

    • これらの企業は、基準をクリアしたため経過措置から外れました。例えば、株価が上がって流通株式時価総額が増加したり、大株主が株を売却して流通株式比率が上がったことが理由です。

  2. 市場区分変更(135社)

    • 初めはプライムを選択していたものの、スタンダードに変更した企業が135社ありました。変更してもペナルティはなく、新たな審査も必要ありませんでした。

  3. 上場廃止(24社)

    • 24社は上場を廃止しました。

現在の状況

経過措置適用から外れた企業は、合計で283社(492社中の約6割)です。

残りの4割は引き続き未達で、さらに新たに136社が未達となっています。これにより、現在経過措置適用を受けている企業は345社(2023年12月時点)となっています。

未達の会社の今後

もし、未達の企業が2026年3月1日以降に最初の基準日を迎える場合、その企業には改善計画書(基準をクリアするための具体的な計画)を提出します。この計画書では、どうやって基準を達成するかが示されており、すでにその期限が設定されています。

具体的には、2025年以降に改善期間が設けられ、その後2026年3月末までに改善が進まない場合、「監理銘柄」として扱われることになります。そして、もしその時点でも基準をクリアできていなければ、上場廃止の手続きに進むことになります。

非公開化(上場廃止)の状況

2024年4月時点で、38社が上場廃止が決まっており、そのうち36社はコーポレートアクション(MBO、完全子会社化、M&Aなど)により上場を廃止しています。

これを年換算すると、上場廃止が100社を超えるペースとなっています。過去8年間で、今年が最も多くなる見通しです。

東証の発言、議事録で書かれていたこと

MBO等で上場会社が減っていることに対して、東証のスタンスについては、我々自身も投資家の方々からよく聞かれるところであり、上場会社が減ると東証は困るのではないかと言われますが、そのような考えは持っておりません。上場会社が市場と向き合った結果として、上場廃止が行われているのであれば我々としては、ニュートラルと言いますか、そのように市場と向き合る会社が増えているのは、むしろ良いことだと考えています。非公開化という選択をとったほうが、企業経営にとって良いということであれば、そうした選択を行うべきですし、非公開化により資金が投資家に戻り、これから株主、投資家の期待に応えて成長しようという上場会社に回るのであれば、日本市場、日本経済全体としては良いことだと思っています。

東証のスタンスは、「上場廃止の選択=むしろ良いこと」

東証のスタンスの元で、今後どのようにフォローアップしていくのかに注目。

企業価値向上に向けた取組みの状況と今後のフォローアップ

「ROEが8%未満」や「PBRが1倍を下回る会社」への対応

これまで、東証は、上場企業の企業価値向上を目指すため、企業自身の自律的な取り組みや、投資家との建設的な対話を促進してきました。具体的には、2023年3月に、プライム市場とスタンダード市場に上場するすべての企業に対して、「資本コストや株価を意識した経営を実現するための対応」を求めました。

この取り組みの結果、ある程度の進展が見られ、特に海外の投資家からはポジティブな評価も報告されています。

また、デフレからインフレへの転換や地政学的な影響など、いくつかの要因が重なった結果、株価や時価総額は全体的に上昇し、PBRなどの指標にも改善の兆しが見られています。

英文開示の状況と今後のフォローアップ

プライム市場では、「英文開示をしましょう」というメッセージがあり、ほとんどの企業が実施しています。特に、大企業や外国人投資家が多い企業は、元々英文開示を行っていました。一方で、中小企業では、最近になって英文開示を実施するようになった企業が増えています。

今後のフォローアップ

プライム市場における英文開示の義務化に向けたフォローアップが進められます。また、スタンダード市場やグロース市場に上場している企業にも、英文開示を実施するためのサポートが行われる予定です。

議事録での発言からみえる東証のスタンス

最近では、中小企業の英文開示が増えてきたという報告があります。
ただし、日本語と英語の開示を同時に行う企業もあれば、一部だけを英文で開示する企業も多いという課題もあります。
今後は、できるだけ日本語と英語を同時に開示する企業が増えるよう、実施率を高めていきたいという方針です。

グロース市場の状態と今後のフォローアップ

これまでの状況

  • IPO社数は、100社前後で推移し、7割程度グロースに上場

  • 引き続き資金調達額は小規模

  • 上場後、約半数は時価総額が成長していない

  • 各社の成長に向けた取り組みを支える観点から対応方針を策定

対応方針
①上場理由等の開示の促進 ②上場準備に関する正しい理解の促進 ③投資家への積極的な情報発信の促進 ④機関投資家への情報発信の支援 ⑤上場基準の在り方 ⑥プロ向け市場の活用

今後のフォローアップ
対応方針における施策①~⑥を推進

議事録からみえる東証のスタンスまとめ

議事録では「コンソリデーション」という言葉が何度も使用されていました。

コンソリデーション」とは、小さいものを集めて大きくするという意味です。小規模の上場企業同士が合併やM&Aをすることで、規模を大きくし、上場維持基準をクリアすることが推奨されています。上場会社の未達企業は、合併やM&Aをして、上場維持基準をクリアしていく、企業価値を上げていくことを推奨するスタンスの発言が非常に強く出ていた。

感想

東証のスタンスが意外でした。今回のまとめを通じて、東証のスタンスが予想以上に上場廃止に積極的であることに驚きました。特に、小規模な上場企業同士が合併やM&Aを通じて規模を大きくし、上場維持基準をクリアすることを強く推奨している点が印象的でした。一般的に、上場企業は独立性や成長の自由度を重視する傾向がありますが、東証はその枠を超えて、企業の規模拡大を優先的にサポートする姿勢を明確に打ち出しているように感じました。

著者:わーちょん

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