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貴方の主観が一番アテにならない、次にプロの予測がアテにならない
私はファイナンシャルアドバイザーを生業としている関係で、投資信託の先行きや特定の株や金融商品の騰落についてよく尋ねられる。
あの株は上がりそうか、為替は円安になるのか、この投資信託は買っても安全か、などなど。
こういう話をされるたびに私はウンザリする。
まだ決まっていない未来のことなど神でも分かるものか。投資というのは自分の責任で行うものだ。そんなの分かってる、と言う声が聞こえてくるが、こういうことを私に聞く人間はそのことを全く分かっていない。自分の見立てに自信がないから人のせいにしたいだけだ。スナダさんがこう言っていた、ああ言っていた、だから私はこれに投資するのだ、私が選んだわけじゃない。という心理が透けて見える。
気持ちはわからんでもない。誰でも自分を正当化したがるものだ。自分の行動一つで、この先の先行きが決まるというとき、リスクを取ることは避けたいものだ。
しかしそれを他人に責任転嫁するとなると話は別だ。
そもそも、こうした質問を貴方がファイナンシャルアドバイザーにぶつけた時、その人がなんと答えるかで本物かどうかわかる。
未来の株価がいくらになるかなど分かるわけがない。なぜなら株価というのはランダム性とカオス性の2つの不確実性の中に常にあり、その大小の加減で変化していくもので、その予測というのはプロですら困難を極めるものだからだ。
この、価格の予測はその期間が長くなれば長くなるほど困難になる上、その中にある不確実性は期間が延びれば延びるほど増していく。しまいには、長期的な価格変動を予測することは不可能になる。
短期的な予測ならまだ可能性もあろうが、それすら100%的中させることが出来るアナリストやエコノミストなどまずいない。また、もしそんなことが出来るものがいたとすれば、彼らはあっという間にどこかへ隠れてしまい、その秘密を決して人に教えることなどないだろう。
トレンドの発生にしてもその継続にしても、いったいいつまでそれが続くのか、なんでいうのを予測するなんていうのは、誰にでも出来るような簡単な仕事ではない。
しかし始末に負えないことに、そうした予測は「たまたま」当たることがある。そうした事実が、実際株価を予測することが出来るのではないか、と我々に錯覚させるのだ。
それでも、私に金融商品の価値や価格変動の行く末をあれやこれや問い質す人は、何故か私ならそれが分かると思っている。いや、分かっていなくてもいいのかも知れない。万が一その投資が失敗した時に、私のせいに出来ればそれで良いのだろう。
そうでなければアカの他人に自分が何に投資しようとしているのか教えるバカなどこの世にいないはずだ。
はっきり言っておきたい。
身銭を切ることなく私に「ちょっと教えて」と近づいてくる諸氏には、是非自分に投資するということの意味を考えて頂きたい。
多くの投資家、トレーダー達は、各々幾多の困難と損失をのりこえて、今があるのだ。
私も含めて彼らがやっているのは価格の予測などではない。リスクを適切に管理しているのだ。
株式投資に限らず、リスクの対価としてリターンは得られる。これは事業においてもそうであろうし、一般社会の中においてもそうだ。リスク=リターンの原則は、言ってみれば原則中の原則だ。
しかし多くの人は、リスクをとることを恐れつつも、リターンのみを手に入れようとする。そんな状況はそうそうあるものではない。リスクとリターンが非対称となる収益の機会など、あっという間に誰かに探し当てられる。そう、私たちのように「身銭を切って学び続ける」連中にだ。
自らに投資して学ぶことのないひとに、そういったことを説いても「それはわかったから、結局この株大丈夫なの?」と聞き返してくるばかりだ。
自分で調べることもせず、不安だからただ人に聞いてくる。その回答の対価を払おうとするわけでもない。
そんな人間に市場は決して微笑んではくれない。なぜならそのような人間は市場が微笑んでくれていることも怒り狂っていることも気づきなどしないからだ。市場と対話し、いかに自分がふるまうべきか、ということを学び続けようとしているからこそ、リスクは管理できるし、リターンを得る機会だって生まれてくる。
それは、日常的に私たちが生きていく中でやっていることだ。それと何ら変わらない力学のなかで、どうして投資だけがそうでないと思うのか。
本当に金融市場と友人になろうと思えば、あなたは学ばなければならない。金融市場と、そして自分自身のことを。
身銭を切って学ぶ者だけが、そのことを理解し金融市場で生き残っていけるのだ。
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