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【TEALABO Channel_01】「茶畑の風景を残したい」想いの裏側とは-小磯製茶 小磯雅一さん-

 鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。

 日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。

 記念すべき第1回目は、小磯製茶の小磯雅一さんにお話をお伺いしました。

学生時代に経験した「スポーツ」から学んだこと

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 小学生の頃は「剣道」をしていたという小磯さん。祖父とテレビでプロ野球を見ていた影響から野球をしたかったものの、その当時は地元できるスポーツが剣道か柔道かの2択。王貞治さんが日本刀で紙を切るCMをきっかけに剣道の道へ進みます(笑)

 剣道は防具の付け方から構えや仕草に至るまで、竹刀を持って構えた瞬間に相手の良し悪しがよくわかるスポーツ。「あ、この人強いなって見ただけで分かるよね」と小磯さんの表情が印象的でした。

 中学校に上がると、いよいよ野球を始めることになった小磯さん。「ポジションはセカンド。ほとんどがサポート役だからね」と笑顔で話す表情はその「人柄」が滲み出ていました。

 今の働き方に関しても、従業員が困った時は助けるが、1から10まで全て教えるのではなく、従業員を活かす関わり方・働き方を意識して主体性を促すようにしているそうです。そんな小さな意識にもサポート役としてのスポーツと通ずる部分があるような気がします。

 大学では鹿児島を離れ、福岡の大学に進学しました。自分の人生なのに好きなように生きられないことに対するもどかしさがある一方で、やりたいことも見つからない毎日を過ごしていたと言います。そんな中、実家の厳しい状況と母親からの「帰ってきて欲しい」という言葉で鹿児島へ戻ってくることを決意します。

必要とされることは何か?

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 戻ってきたばかりの頃の話を伺うとます最初に出てきた言葉として「本当に悔しいことばっかりだった」とお話をしてくれた小磯さん。お茶の品評会で自分の作ったお茶が平均以下だときはやっぱりショックを受けたし、なぜできないのか、常に追求しています。

 もちろんビジュアルでの良いお茶はありますが、小磯さん曰く、良いお茶というのは「必要とされているお茶」のこと。それはつまり、茶匠さんやお客さんにとっての「飲みたいお茶」となるように、試行錯誤や改善を続けることが、小磯さんのお茶作りでのこだわりです。

 中でも印象深かったのが「一番になる必要はないと思っている」という言葉でした。人それぞれに「良いお茶」というのがあって、人の気持ちが入る部分が必ずある。その誰かにとって必要なお茶であることが小磯さんの軸にあるのでしょう。

茶畑の風景を後世に残していきたい

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「今の茶畑の風景を残したいってのはあるよね」

 小さい頃から見ている風景だからこそというのはもちろん、今の子供たち、そして、またその子供たちの世代にも残っている場所であって欲しいと小磯さんは語ります。

ただ単にお茶畑の風景を残すという意味だけでなく、そこに暮らす人々やお茶を営む人々の居場所や価値が続いてほしいという、小磯さんが日々取り組んでいる茶業へのこだわりそのものを表す言葉でした。

 そして、最後まで生き残るお茶の産地であるためには、知名度や品質はもちろん、新しい世代が感じている「田舎の暮らしづらさみたいな部分」をもっと変えていく必要がある。お茶づくりだけではなく、お茶畑を存続させるための周りの環境作りも大切だということを、この「茶畑の風景を残したい」という一言にこめているような気がします。

 地域では自治会長も担い、何かとリーダシップが必要とされる機会が多い小磯さんです。大事にしている「お互い様」を合言葉に、野球同様、関わる人たちのサポート役的な側面が数多く伺えます。 

小磯さんの毎日の癒し

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 「家に帰ってから映画を見たりユーチューブを見たり、うとうとしてる時とか最高だよね。マッサージも最近行くようになった」と小磯さん。好きなジャンルはSF系。最近は邦画を見て感動したという話も、、。
 ザ・インドア派の小磯さん、毎日の小さなリラックスタイムが次の日のエネルギーになっているのかもしれません。

手間と細かな職人技が味を左右する工場へ

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 一面緑のお茶畑の中に、ずっしりと佇む小磯製茶の煎茶工場と甜茶(てんちゃ)工場の貫禄に驚きます。(工場がめっちゃくちゃでかい!)茶畑から工場へ、長い工程を何度も繰り返して、何枚ものお茶の葉が蒸され、乾燥され、煎茶となる。甜茶も然り。手間と細かな職人技が味を左右するその繊細な過程を見学させていただきました。

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 甜茶を始めたのは海外進出と同時期。海外の抹茶ブームによる需要の高まりに注目し、数年かけて準備をし今の甜茶工場があります。工場内に入ると、レンガで作られた大きな炉が3つありました。

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 中に入ると一見お茶工場とは思えないレトロさを感じる一方で、よく見ると細かい縫い付けの跡や手作業での痕跡も。

 「大変さより、今やらないと後悔するという気持ちが常にあった」と小磯さんは言います。そこに見える好奇心と挑戦心。そこに費やした莫大なエネルギーと時間こそが小磯さんのお茶に対する決意の表れなのかもしれません。

描いているこれからのお茶づくり

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 日本のお茶産業で言うと、確実に日本茶の生産量は減ります。一方で、世界のお茶の量は増えるという状況になっていきます。

 海外への甜茶の輸出など仕事を通して海外に出てからより一層感じたのは、思っているほど海外は日本のことを見てないという事実でした。産地や生産にこだわっていても、日本からのお茶は全て「グリーンティー」の一言で括られてしまう。そんな中で、どうやって海外で勝負し、海外の人に求められるものにしていくのか。

 たとえ、届ける外国人の捉え方や受け取り方が異なっていても「日本の品質」で勝負する。それは、日本茶業界・知覧茶業界問わず、生産量や生産者が確実に減っていくお茶業界を守っていくために、一番必要なことなのかもしれません。

「茶畑の風景を残したい。そのためのお茶作り、地域づくり、環境作り。」

小磯さんの取り組みにはお茶作りだけに留まらないもっと大きな景色が見えているのかもしれません。小磯さんが描く茶畑風景の裏側に今後も注目です。


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【プロフィール】
小磯 雅一(こいそ まさかず)
有限会社小磯製茶 代表取締役 
1973年鹿児島県頴娃町生まれ。久留米大学卒業後実家である小磯製茶に入社し茶業の仕事に携わる。現在、煎茶製造のほかに有機煎茶や抹茶の原料である有機てん茶の製造も行うなど海外向けのお茶づくりにも力を入れている。


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