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【TEALABO channel_26】油断せず、実直に仲間と美味しいお茶をつくり続ける -有限会社折尾広志製茶 折尾久さん-
鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。
日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。
第26回目は、『有限会社折尾広志製茶』(以下:折尾広志製茶)専務の折尾久さんにお話をお伺いしました。
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もう帰ってくるしかない
「この場所はお客様がいらしたら必ずご案内するんです。」
一面の広がる茶畑から開聞岳。
そして、天気が良い日には離島を眺望できるというこの場所は折尾広志製茶が管理されています。
今回の取材はそこからスタートしました。
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会社名にある折尾広志さんは創業者である
久さんのお父さんの名前からとっているそうです。
現在2代目となる久さんが製造を中心に会社を引っ張っておられます。
主にゆたかみどり、やぶきた、さえみどり、あさつゆ、おくみどりの5種類を主に製造されているんだとか。
昨年は鹿児島県茶品評会にて普通煎茶部門において最高賞でもある農林水産大臣賞を獲得されています。
久さんは折尾地区で生まれ育ち
高校卒業後は熊本の大学へと進学されました。
しかし、20歳の時、お父さんが他界。
家業を優先することを決意し、大学を中退して、そのまま継業されることになります。
“お前が帰ってきて、後を継ぐしかないよ”
親戚からはそのような声が多かったそうです。
「大学では工業関連のことを学んでいて、元々継業する気持ちはありませんでした。でも、父が亡くなり、周りの声もあったので“もう帰ってくるしかない”と思ったんです。」
思いも寄らない形で始まった茶農家としての歩み。
久さんを待ち受けていたのは想像を絶する世界でした。
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親のありがたみ
継業されるまでは荷物運び等、簡単なお手伝いしかしたことがなかったという久さん。
できないことが多く、工場の先輩たちから怒られる日々だったといいます。
「折尾地区の同世代の茶業家の皆さんは農大や茶業試験場といったところを卒業されて、とても意識が高い中で継業されていました。なのに、私は何も考えずに進学したので全く知識がありませんでした。」
「そんな中でも、先輩たちから厳しく指導していただきました。ちょうど私が帰ってきた時期が一番茶の最中だったので、いきなり大変な時期を経験することになって…。」
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そんな中だからこそ、久さんの中で湧き出る感情があったそうです。
それはご両親に対するありがたみでした。
「大変な時期を過ごしたことで、初めて亡くなった親に対する感謝の気持ちが湧き出てきました。親のことを純粋に“すごい”と感じました。こんな大変な仕事を通して、稼いでくれたお金で大学に行かせてくれた父には尊敬の念しかありません。」
「当時、一緒働いていた先輩たちは年上の方が多くいらっしゃいました。その方たちをまとめるのも大変だったんだろうなと思いました。」
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地域として、チームとして、できること
続いて自社の茶工場を案内していただきました。
一番意識しているのは蒸し機。
大体5年周期で新しい機械へと入れ替えているそうです。
自社で管理されている茶畑は30町歩(※)を超え
結構な量のお茶を揉むことため
機械にガタがくるのが早いんだとか。
※町歩とは、1町は約1ヘクタール。田畑や山林などの面積を、町(ちょう)を単位として数えるのに用いる語。
さらに会社の特徴として松本式茶生葉管理装置(以下:松本式)を取り入れていること。我々取材陣も初めて目にした光景でした。
「松本式の特徴として、蒸れにくく、焼けにくいことが挙げられます。あまり活用している茶工場はありませんが、結構な量を蒸すことができるんです。」
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続けて松本式を導入するメリットについてお話してくださいました。
「海外向けと国内向けの製造を同時に行う際に茶葉が混ざらないように分けることができます。」
「海外向けのお茶は折尾地区の茶工場4軒で連携して製造して、皆さんとても協力的です。わからないことを聞くとすぐ教えてくれます。地域として、チームとして、海外へ向けて美味しいお茶を提供する努力は欠かせません。」
「いつからかはわかりませんが、会社はそれぞれ別でも、皆で連携して何かを取り組むというのは、この地域の特徴かもしれませんね。」
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油断をせず、成すべきを常に
「油断をしない。」それが美味しいお茶をつくるために特に意識していることです
柔かな表情でそのように口にしたのは30年の中で繰り返してきた成功と失敗があったからでした。
「昔、製造したお茶が高値を出して先輩たちに “よくやったな。もう俺たちを越えたかもな” と褒めてもらったことがあったんです。しかし、その翌年には思ったより低価を出してしまったんです。前年に良い結果が出たので、調子に乗ってしまったんだと思います。」
「常に世の中の情勢や自然環境は変化します。だからこそ、油断せずに美味しいお茶づくりに励みたいです。」
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話の途中、自然環境の中でも地球温暖化の話題になりました。
「最近、蒸しに茶葉が耐えられなくなってきているんです。だから、蒸し方も変えたりして対応しています。以前はどんなに蒸しを強くしても仕上がりは良くて。でも最近はそうすると水色が悪くなってしまうんです。」
「どんなにテクノロジーが進化し便利になっても、農業はそう簡単にはいきません。でも、対応していかないといけない。常に変化が求められる。もう、昔のやり方は通用しないと思います。」
「茶業を通して仲良くなった仲間と情報交換だけではなく、実際に視察へ出向き、成すべきことを常に考えています。」
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美味しいお茶をつくり続ける
継業し30年経ち、亡くなったお父さんはどういう存在なのか。改めて、現在の心境をお話してくださいました。
「亡くなった当時の父の年齢を超えてしまいました。工場を立ち上げ、基盤をつくってきた父は偉大だったんだなと思います。」
「この30年で自分のスタイルもできてきました。工場として無理をしない。それが美味しいお茶をつくり続けるために私が導いた答えです。他にも設備投資やメンテナンスをしっかりし、いつでも万全な体制であり続けることも大事だと思います。」
「30年経っても失敗することはあります。そして、先が読めないことも多いです。だからこそ、この想いは忘れないようにしたい。」
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最後に今後の展望について伺いました。
「実は、コロナ渦に大学が長期間休みだったので、息子がアルバイトがてら手伝ってくれたんです。」
「“お茶も面白いね”と言ってくれたのが印象的でした。今は継業するとか、そんな話はしていませんが、茶業の世界に触れることで興味が出てくるんだなと感じました。」
「どの業界も地域も後継者問題が出ていますが、知覧茶も産地として、どう後継者と繋がっていくか。どうつくり続けていくか。それが課題です。でも、答えが見つかるのはまだちょっと先かもしれません。いつであれ、次の担い手にバトンタッチできるようにパフォーマンスを落とさずに美味しいお茶をつくり続けていく。それが今の私たちにできることなんだと思います。」
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取材を通してこれまでの久さんの人生を伺うと、
決して計画的な人生ではない側面を教えてくれました。
それでも、目の前のことに全力で一歩ずつ階段を登ってきた先に今がある。
亡き父の姿を超え、これまで通り茶作りに命を燃やす。
環境の変化や経済状況の変化もありながら、常に茶農家としての進化の歩みをやめない姿に取材陣は終始感動を覚えながら話を聞かせて頂きました。
これからも久さんのお茶作りがとても楽しみです。
【プロフィール】
折尾久(おりお ひさし)
有限会社折尾広志製茶 代表取締役
1973年南九州市頴娃町生まれ。
川辺高校卒業後は熊本の大学に進学、父親が亡くなったことがきっかけで実家に就農。
現在は有限会社折尾広志製茶にて弟と共に茶園管理やお茶製造、お茶の販売を行っている。
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