【TEALABO Channel_06】「最高のお茶をつくる私の流儀」-グリーンティ折尾 折尾俊一さん-
鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。
日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。
第7回目は、グリーンティ折尾の折尾俊一さんにお話をお伺いしました。
南九州市頴娃町に工場を持つグリーンティ折尾。ここは頴娃町の中でも少し山手の方で、開聞岳と海、そして一面のお茶畑が同時に見渡せる場所です。
他のお茶農家さんから度々耳にする折尾さんの名前。表舞台には立たずとも、そこには周りから信頼される所以となる折尾さんならではのお茶作りの流儀がありました。今回はそんな折尾さんのお茶作りに迫っていきます!
流儀①「品質を維持するために、当たり前を徹底する」
はじめに見せて頂いた工場の中で、特に印象的だったのが細かいところまで分解された部品や機械の数々。取材時は、ちょうど今年最後のお茶が終わり、来年の一番茶に向けての清掃を行っている時期でした!
本当に細かいところまで分解して掃除するせいで、たまに元に戻せなくなくなって機械工さんを呼んだりすることもあるそうです(笑)
「一番良いものをつくるために機械を一番綺麗な状態にしておく」
一見当たり前のことを当たり前に徹底する、グリーンティ折尾の強さはその積み重ねから来ているのではないか?そんなことを考えさせられました!
他にも、折尾さんの父である一文さんの代から現在に至るまで市場には毎日通い、自分たちのお茶がどう良くてどこを改善しなければいけないのか考えるといいます。自分たちだけで見ていても分からないから市場に行って比較する。そんなところも、また一つ徹底してきた当たり前なのかもしれません。
流儀②「良いものを吸収し続ける」
「お茶作りを始めた当初、素人だった自分に色々教えてくれた他のお茶農家さんに感謝しかない。今考えると、自分のひらめきだけでやってることって一つもないもんね」
取材中印象的だったこの言葉。そこには今の折尾さんの「人」として「お茶作り」としての原点になるある経験がありました。
お茶を継ぎ、初めて市場に行った時に見たという根占のお茶。「本当にキラキラしていてすごかった。自分より先に茶業を営んでいた先輩に、どうやったらあんなお茶が作れるのか聞いたらあれは別格だから真似できないよ、と言われたのをいまだに覚えている。」と振り返る折尾さん。
違う県や違う気候ならまだしも、同じ鹿児島で真似できないわけがないと、頴娃町より少し早めに始まる根占のお茶畑に出向き、一番忙しい一番茶の時期に工場を見せてもらったそうです。
「一番大事な一番茶のスタートの時に、頴娃町から来た他人にわざわざ時間を割いて一生懸命説明して教えてくれて、お茶も出してくれて感動した。その経験が忘れられない。」
他の農家さんのどこが良くてどの部分を自分たちの茶作りに取り入れられるのか考える。密度の濃い今のグリーンティ折尾の特殊な工場や製造ラインもその積み重ねだといいます。
それは「人」としても同じで、自分がしてもらって良かったと感謝しているからこそ、県内から見にくるお茶農家さんには工場を案内して技術を教える。
「人」としても「お茶作り」においても良いものを吸収し続け、それを自分のものにしていく。その積み重ねが今の折尾さんであり、グリーンティ折尾の強さの秘訣なのです。
流儀③「茶商さんとの関係性づくりを1番大切にする」
折尾さんの父の代から着実に受け継がれてきた「品質へのこだわり」。その中でも、特に折尾さんの代になってから大切にしていることの一つに「茶商さんとの関係性づくり」があります。
茶商さんとは?
茶農家が作った「荒茶」と呼ばれるお茶を仕入れ、それぞれの味に仕上げるべく、葉・茎・粉などの種類に選別し、火加減をして火入れを行い、品種のバランスを考えてブレンドする人。茶葉に磨きをかけ、おいしいお茶に仕上げる重要な役割。
(参考)https://ikedaseicha.com/aboutus/
ちなみに「荒茶」とは、収穫したお茶を製茶工場で蒸し・揉み・乾燥の作業をした茶葉のこと。出来上がったお茶は市場に運ばれ、そこで茶商さんの目で一つ一つ確認され、お茶問屋さんなどに運ばれていきます。
だからこそ、良いお茶なのか・どこがダメで何を改善するべきなのか、一番エンドユーザーである消費者に近い茶商さんとのコミュニケーションを大切にすることでニーズに合わせた品質の良いお茶を作ることができているのです。
「県内の中でも茶商さんと1番話しているんじゃないかな」
自信を持ったその表情からも、茶商さんとの関係性へのこだわりが伺えます。そんな関係性があるからこそ、今では毎年作ったお茶がどうか気軽に電話で聞いて話せる仲にもなっているそうです。
茶商さんとの懇親会を積極的に開いたり、若手の人たちにも「茶商さんとの情報交換が大切だよ」と常々伝えているという折尾さん。茶商さんとの繋がりが、また次の商売につながって行ったりもするそう。
これもまた、最高のお茶を作るための折尾さんの流儀です。
表には出たくないけどやることはやる
中々表に出ることは少ない折尾さんですが、話を聞くとAGAPやISOと呼ばれる農場管理の基準などを定めている組合の会長をしていたり、PTA会長をしていたり、はたまた若手茶農家の勉強会を開いたりと実は積極的に活動中。
「ほんとに表に出るのは嫌で、、、(笑)」
ネットなどに情報が出ていないのはそのせい、と笑いながら答えてくれました!表には出ずとも、そうやって積極的に活動しているのはやはり「良いもの」を取り入れ続けていくための一つの手段。
茶商さんとのコミュニケーションの中で、今世の中に何が求められているのかを探り、そのために必要なことをしていく。その延長線上にあるのが今の役職であったり折尾さんのポジションにつながっているのだとひしひしと感じさせられる時間でした。
取材中、娘さんの話になると急に表情が和らいだ折尾さん。休みの日はお子さんと遊んだり、従業員とのゴルフなどを通じてちゃんと息抜きもしたりするそうです。嬉しそうに話す姿からも折尾さんのまた違う一面が見えました!
私たち消費者が見ているのは、沢山の過程を経て手に届いたお茶のほんの一部。わざわざ工場にいくこともなければ、ペットボトルの普及などにより「今」飲んでいるお茶の原料は実際に誰が生産しているのか分からないことがほとんどかと思います。
それでも、その一つ一つに手に届くまでのストーリーがあって、毎日真剣にお茶作りに向き合う生産者がいます。まさに、折尾さんの「最高のお茶を作る流儀」はその一つ。普段飲むお茶の「作り手」に思いを巡らす、折尾さんの茶作りがそんな誰かの小さなきっかけになる気がします。
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【プロフィール】
折尾 俊一 (おりお しゅんいち)
有限会社グリーンティ折尾 代表取締役
1973年南九州市頴娃町生まれ。三兄弟の長男として生まれる。高校まで地元で過ごし、宮崎の大学に進学。その後実家に戻り就農。現在は三男の弟と共に、60ha(うち自園20ha)の茶園を管理、系列農家12戸を束ね、荒茶の製造に特化している。
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