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【TEALABO Channel_02】「自分たちでお茶を作り、お客様へ届ける」人付き合いの風景の先にあるもの-宮原光製茶 宮原健さん-

 鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。

 日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。

 記念すべき第2回目は、宮原光製茶の宮原健さんにお話をお伺いしました。

知覧茶発祥の地「後岳」の麓の風景

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 宮原さんは、小さい時から親の背中を見てお茶農家を継ぐことを意識し、大学から鹿児島を離れ県外へ。愛媛県の松山大学に進学し経営学を学びました。その後は2年間静岡と東京でお茶に携わる仕事をし、実家を継ぐために帰ってきます。

 そんな宮原さんが最初に案内してくれたのは、雄大な後岳が一望できる茶畑。朝露が輝くお茶の葉を前に、四季折々の景色の良さを知ってもらいたいという夢を聞かせてくれました。

 また、宮原光製茶がある知覧・後岳エリアは、平家の落人が知覧北部山間地に茶栽培を始めたという言い伝えが残っており、「知覧茶」発祥の地として明治時代より本格的な茶栽培が始まりました。

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ほら、綺麗でしょう!
ここに観光の人を呼びたいんですよ。

 お茶の作り手として「お茶の生産現場である畑を見てもらいたい。風景的にも結構綺麗な畑だと思ってるし、標高の高いところに行けば、あの遠く開聞岳や黒島や硫黄島など鹿児島離島がたくさん見えるんだよ」とワクワクした表情で話をしてくださいました!

自分をプラスにするものは人との付き合い

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 宮原光製茶が運営する店舗でインタビューにあたり、取材への感謝の気持ちを伝えると「いや俺、絶対断らない人だから」と、取材を快く受け入れてくれました。終始楽しそうに話してくれた中で「人と話すの好きだからさ」の一言には宮原さんなりの哲学がありました。

「何も断らないのは何がきっかけになるか分からないから。大変なこともあるけれど、例えば、鹿児島県茶業青年の会の会長を引き受けた時も、会長になったことで出会えた人がたくさんいる。大変だけど、環境が自分を成長させてくれるもんだよ」と言います。

 「俺は特にこだわりがない。」「俺、不真面目だから。」とユーモアを交えて語りつつ、若者をはじめ、誰でも、なんでも受け入れるという宮原さんのスタンスは今後の知覧茶の普及・発展に繋がる大切なものだと感じました。

お客様との忘れられないエピソード

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 インタビューの途中で宮原さんが少し涙を浮かべながらもあるお客様の話をしてくださいました。

何年前に、母親が入院のために何ヶ月の間、店舗にいなかった時期があったんだけど、そのお客様はその状況を察して勘違いで母が亡くなってしまったと思った方がいてね。

花束を持ってお客様が訪れた際にたまたま母が帰ってきて店舗に立っている時で、母親がお客様に「実は私、入院してたんですよ」とお伝えをすると、お客様とは笑い話になったけど、お互いに店内で大泣きしたよね。

 長い年月をかけてお客様との関係性をとても大事にしてきた宮原光製茶だからこそ、お茶を通して積み重ねてきたお客様との様々なやりとりがある。そんな大切な事を聞かせて頂き、取材陣もうるっとしてしまいました。

お客様とは親戚のような関係でいたい

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 宮原光製茶は自分たちでお茶を生産・加工を行い、自分たちで直営の小売店を持ちお茶の販売をしています。知覧茶の生産者は、生産量が多いこともあり、小売業を主にした形態を取る方々は多くありません。そんな中で取材をしていくと、とても心温まる関係の「生産者」と「消費者」が見えてきました。

自分達が持っている販路で売れるから
小売りしかしていない

 この言葉の裏には、先代からの多くの顔の見えるたくさんのお客様との関係性をとても大事にしてきたからこそ、当たり前のように出てきた声であり伝統だと感じました。

 昭和の時代はお客様が遠方からお茶を買うために旅行として訪れ、お客様自身でお茶を摘み、お茶を袋詰めしていた時代があったようです。時代を共に積み重ねてきたお客様に今も商品を届け続けることができています。

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 高齢化により全体の販売量は年々減ってきている中でも、小売り業をしていて、1番嬉しいことはダイレクトに声が聞けること。自分が小さな頃から購入してくれている方お客様も多く、ただの生産者と消費者の関係ではなく、ちょっと親戚っぽい感じで、地域の繋がりを感じると語る宮原さん。

 お金のやりとりだけではありません。時期になればお客様にさつまいもを送ることもあれば、北海道のお客様からはメロンを送って頂くことも。はたまた、関東のお客様からは、宮原さんのお子さんの誕生日に贈り物が送られてくるなど、「お茶を通して両者の思い出を作る」というような感覚があるようです。

 「だからこそ、お客様を裏切れない。」と。お客様との関係性をとても大切にする農家としての覚悟が少し垣間見れた瞬間でもありました。

煎茶文化を残したい想いとは 

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 生産量が全国で1位となった鹿児島県のお茶がそれでも全国的にも認知度が足りないと思っている宮原さんは、自分なりの楽しみ方でお茶を飲んでほしいと言います。

 急須で淹れるのは確かに手間も掛かりますが、急須にも多くの種類とデザインがあって楽しんでもらえると思います。急須で遊ぶわけじゃないけれど、変わり種の急須を楽しんでほしい。急須で出すお茶はやっぱりその時だけの味わいがあります。

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 煎茶文化を残すということは、人と人とが繋がることや感謝すること、当たり前の人付き合いの風景があり続けることだと話す宮原さん。

 営業マンが取引先に訪れる時に煎茶が出てくる瞬間、休日の肌寒い朝に夫婦で急須で入れたお茶を飲みながら今日の日程を考える時間、大切な方への感謝を表すためにお茶を選んでお手紙を添える大切な手間など、人を想う風景そのものです。

人付き合いの風景の中に煎茶の文化が残ればいい

 人とのお付き合いをとても大切にしてきた先代への尊敬の念を浮かべながら、これからも大切なお客様の為にお茶を作り、お茶を届ける宮原さん。

 笑顔がとても素敵な宮原さんのお茶づくりと人との関わり方を体験したい方がもっと多くなればいいなと思う時間でした。

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【プロフィール】
宮原健(みやはら たけし) 
有限会社宮原光製茶 代表取締役
1979年南九州市知覧町生まれ。四国の松山大学を卒業後、2年間静岡と東京でお茶に携わる仕事をし、実家に就農。家族で8haの茶園を栽培管理しながら自園で取れたお茶の販売を手掛ける。

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