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【TEALABO channel_18】1つ1つの芽に魂を込め、間違いないお茶をつくる -株式会社枦川製茶 枦川克可さん-
鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。
日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。
第18回目は、『株式会社 枦川製茶』(以下:枦川製茶)代表取締役の枦川克可さんにお話をお伺いしました。
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はじまりの場所
枦川製茶は全国茶品評会において農林水産大臣賞(以下:大臣賞)に合計12回輝いています。それだけの実績があるのは全国でも枦川製茶のみとのこと。
そんな良質のお茶を栽培している茶畑へ、まず案内していただきました。
「この畑は元々違う方がお茶を育てていたんです。私が高校生の時、会社に「ここでお茶をつくってみないか?」と話がきて、それで両親が喧嘩していたんです。」
「そんな両親を見て、何を思ったのか「自分が茶業を継ぐから、この場所でお茶をつくろうよ!」と気がついたら言っていて…。」
「ここは私にとってお茶を継ぐきっかけとなった場所なんです。この場所で育てたお茶で、父の代に1回、私の代に4回、大臣賞をいただけました。だから、非常に思い出深い場所です。」
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高校卒業後は静岡県の『野菜茶業研究所』へ。
そこでは全国から集まった同志とともに2年間茶業について学んだといいます。
「父からは「勉強はしなくていいから、友達をつくってこい」と言われました。」
「ありがたいことに今だに研究所の同級生とは繋がっていて、よくLINEで他愛のない話も含めてやりとりしています。」
「『野菜茶業研究所』を卒業後に知覧へUターンし、実家の手伝いをすることになりました。昔から両親の簡単な手伝いをしていたのですが、初めて触れる機械や規模の大きさに戸惑ってしまい、最初は大変でした。」
20歳で茶業家としてスタートし、お父さんとは5年程一緒に従事することになります。
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間違いないものをつくる
お父さんと共に従事した時間を通して、このように振り返ります。
「「“間違いないもの”をつくりなさい、そうすれば、お客様は自然についてきてくれるから」といつも父は言っていました。」
「正直、「“間違いないもの”と言われても…」と思いました。だって、そこが一番難しいんですから。毎年、気象条件も違いますし。」
「だから、その時の状況下で最善の製造をやっていこう。そう思ったんです。例えば、ブレンドの割合を変えてみたりとか。」
「父はいつも早起きをしてボイラーの準備をしていました。次第に、父よりも先に現場へ行って準備をするようになりました。」
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少しずつ茶業家として成長していく25歳の春、会社として窮地に陥ってしまいます。
それはお父さんの急逝でした。
3月だったため、お茶の繁忙期に差し掛かり、出品茶の時期も近づいていました。
周りからは「今年の出品茶は止めておくか?」と心配の声もあったといいます。
「家族で話し合い「出品茶だけはやろう!」と想いが一致しました。父が続けてきたものを途切らせてはいけないと思ったんです。」
「ただ、結果は知覧の中でも最下位だったんです。本当、その時はどん底を味わって大変でした。」
「父がいなくなったからと色々なことを言われました。でも、もう這い上がるしかないなと思って。どん底を味わったから今があるんだと感じています。」
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信頼し合い、楽しみながら
枦川さんが一番大事にされている作業は“蒸し”。
この作業における機械の設定は必ず自身で行っているといいます。
「“蒸し”の作業が夜中になったとしても、必ず起きて確認しています。ここだけは誰にも任せられません。」
「何度も失敗した経験があって。例えば、蒸しすぎたり、逆に浅かったり…。さし加減次第では全く違うお茶になってしまうので、一番気をかけているんです。」
「だから常に緊張感はあります。それでも、楽しみながら日々作業を行っています。失敗したとしても、それが私にとっては勉強になるので。それは家族や従業員にも、そう感じながら仕事をしてほしいと思っています。」
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枦川さんが継業されてからすぐに弟さんも合流し
それぞれのできることで枦川製茶を支えています。
基本的には枦川さんが茶工場を、弟さんが茶畑を
という形でそれぞれ役割が分かれているそうです。
「父が急逝した時、弟は民間企業の社員として働いていました。弟の力が必要だったので「一緒にやってくれない?」と伝えると、「もちろんそのつもりだよ!」と嬉しい言葉を返してくれました。」
「弟が茶畑の管理をしっかりしてくれているから安心して工場に入ることができます。だから、心の底から信頼しています。弟はどう思っているかわかりませんが(笑)。」
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先輩たちの努力があったから
枦川製茶のある後岳地区には『後岳茶研究会』という伝統ある集まりがあります。
そこでは30人以上の茶業家が集まって
意見交換や勉強会を開催しているといいます。
昨年は研究会が立ち上がってから何と50周年が経ったそうです。
「50年前に先人たちがこの会を立ち上げて、お互い切磋琢磨しなければ、知覧茶は今のように知名度も質の高さもなかったかもしれません。」
「そんな伝統の会の一員でいれるのは非常にありがたいことです。県外の繋がりもですが、知覧茶の生産者同士の繋がりも非常に大事だと思っています。」
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実は枦川さん、継業当時は右も左もわからないことばかりで
失敗の連絡だったそうです。
「当時は不安しかなくて…。そんな時、私を支えてくれたのは同じ茶農家の先輩2人でした。」
「「あそこに寝泊まりするから、わからないことがあればいつでも起こせよ」と茶工場の隣にプレハブを建ててくれたんです。その2人に育てていただいたなと思います。」
「今は世代交代されて、そのお二人の息子さんたちと作業をしています。年齢も近いですし、志も高い方々なので切磋琢磨し合っています。」
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常識に捉われず、1つ1つの芽に魂を込めて
茶業界でも需要と供給のバランスが崩れている時代。
枦川さんの頭の中には
「様々な人から求められるお茶を作っていかないといけないのでは?」
「周りとは違った戦略を立てないと生き残っていけないのでは?」
といった葛藤が常にあるといいます。
その反面、資金面や体力面といった課題もあり、思い切って一歩踏み出す難しさも感じているそうです。
「厳しい時代ですが、それでも大臣賞をいただけることで励みになります。消費にも繋がりますし、何より家族が一番喜んでくれるんですから。」
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取材時に案内いただいた茶畑の樹齢は30年以上経っているそうです。
「茶業界の常識でいうと、引退の対象になってくるのではないかと言われています。それでも、しっかり管理していけば、このように世間から評価していただけることがわかりました。」
「だから常識に捉われる必要はないと思います。品種によっては、樹齢を重ねるほど美味しくなるものもありますし。」
「本当、何年経っても試行錯誤なんです。育てる人、気候条件等でお茶の出来が違ってくるので、これからも1つ1つの芽に魂を込めるような気持ちで現場へ臨んでいきたいです。」
常識に捉われないという言葉の裏にある「基本をどこまで自分に追求できるか」というあまりにシンプルで力強い言葉を取材を通して深く考えることになった今回。
課題は誰かのせいではなく、いつも自分自身にある。コツコツと向き合い、1つ1つの芽に魂を込めて積み重ねた先に、必ず大きな希望があることを枦川さんから教えて頂いた機会になりました。
今後の枦川さんのお茶作りがとても楽しみです。
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【プロフィール】
枦川克可(はしかわかつか)
1979年南九州市知覧町生まれ。株式会社枦川製茶の代表取締役。地元の高校を卒業後、静岡県の野菜・茶業試験場を卒業後就農。現在は家業の枦川製茶にて生産から販売まで一貫して行う。
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