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【TEALABO Channel_11】「お茶の価値を高めていきたい」-西垂水茶業 西垂水慎一さん-

 鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。

 日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。

 第11回は、西垂水茶業の西垂水慎一さんにお話をお伺いしました。

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 お茶畑に囲まれた国道を走っていると現れる緑色の屋根の大きな工場。広大なお茶畑の中で存在感を放っている工場を持つ西垂水茶業は、41のお茶農家が集まる大きな製茶会社です。そんな西垂水茶業で多くの農家さんと日々接しながら茶業に向き合う慎一さん。今回は慎一さんの人柄やお茶農家さんとお茶作りをする大変さなどをお伺いしました。

慎一さんがお茶農家になるまで

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 大学卒業後、県外でサラリーマンとして働いていた慎一さんがお茶作りを始めたきっかけはお母様の体調不良でした。「畑を手伝ってほしい」とお母様に言われたものの、これまでお茶の専門知識を学んだことがなかった慎一さんは、兵庫県姫路市の肥料メーカーで約1年、お茶作りや土壌に関する専門知識を働きながら学びました。

 そして鹿児島に帰ってきた慎一さんは、一度は家業へ就農。その後知覧の試験場でお茶の基礎知識を学び、家業に戻ってきました。しかし、始めはお茶作りにあまり身が入らず、お茶作りの難しさを感じていました。そんな慎一さんにある日、転機が訪れます。

頴娃のお茶農家さんの一言

 お茶農家になれたものの、何となくお茶作りに身が入らない日々を過ごしていました。ある日、慎一さんがお世話になっている頴娃町のお茶農家さんが慎一さんの茶畑を視察しに来ることになったのです。そして視察当日、慎一さんの茶畑をみた頴娃のお茶農家さんから言われた言葉があります。

「このお茶畑はあまり状態が良くないんじゃないか」

この言葉を聞いた慎一さんは、はっとしたそうです。そして、その日からお茶作りに対する姿勢が変わっていきます。

「この日を境に気持ちに火がつきました。最初は他のお茶農家さんの畑や工場を見学させてもらいました。よその工場に足を運ぶのはなかなか勇気がいりましたし、よそのお茶農家に自分のお茶作りを見せるのってあまり気が進まなそうじゃないですか。」

と笑いながら話す慎一さん。当時は工場の戸を叩くのにとても緊張したそう。しかし慎一さんを先輩のお茶農家さんたちは快く受け入れ、様々な技術や製造方法を教えてくれました。同じお茶を作る者同士として感じるものがあったのかもしれません。

西垂水茶業だからこそのやりがいと苦労

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 視察の日をきっかけに、多くのお茶農家さんのもとへ自ら足を運び、様々な知識や技術を吸収してきた慎一さん。現在、41の農家さんと共同でお茶作りを行っており、毎日が試行錯誤の連続だといいます。お茶作りには一体どんなやりがいや苦労があるのか聴いてみました。

「41も農家がいると単純に生産量が増えるので、多くのお茶を皆さんのもとへ届けることができます。でもお茶の品質を落とさないように全員で目線合わせをするのは結構大変です。」

と話します。多くのお茶農家さんと連携を取りながら自らもお茶作りを行うのはやはり大変なのだそう。しかし、お茶の品質を保つためには全員が同じゴールに向かって進まなければなりません。農家同士で意見交換を行なったり、製造方法を統一したり、大変ながらも日々奮闘されている様子でした。

「共同工場で人員も現時点ではある程度いるから、お茶作り自体はできるんです。だからこそ、後継者不足に対する危機感が少ないような気がします。もっとお茶業界のことやこれからのお茶作りとかを話し合えたらいいと思うんですけどね。」

と、自身が感じる自社やお茶業界の課題についても話してくださいました。お茶業界のみならず、今ある仕事や文化を途切れさせないためには慎一さんのように現状に満足せず、未来について語り合う必要があるのかもしれません。

お茶を発信する

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 お茶の製造のみならず、お店も構えてお茶の販売をしている西垂水さん。自社商品「知覧グリーン」を始め、緑茶ソフトクリームや急須セットなど、お茶に関する様々な商品が置かれています。また、お店は県道に面しており、毎日多くのお客さんが訪れるのだそう。お茶畑に囲まれた道の途中にお茶の専門店が現れたら行ってみたくなりますよね。

「お店を構えることで、お茶に触れる機会を増やすことが出来ると思います。ここの国道はサイクリングロードで有名なので、サイクリストの休憩所にもなってるんですよ。 夏は水出し緑茶を振る舞ったりしましたね。」

と嬉しそうに語る慎一さん。慎一さん自身が店頭に立つことは滅多にないそうですが、いろんなイベントでお茶を振る舞い、お客さんとの交流を楽しんでいるようです。もしかしたらどこかのイベントでお会いすることがあるかもしれません。

お茶にかける想い

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 現在でもお茶作りを土から研究し、美味しいお茶を作るために日々奮闘されている慎一さん。終始、にこやかな表情でインタビューに答えてくださいましたが、そこには慎一さんのお茶やお茶作りにかける情熱や努力がありました。

「これからもっと知覧グリーンやお茶の価値を高めていきたい。」

と語っていた慎一さん。私たち消費者もそんな作り手の思いを少しでもお茶から感じ取れるようになりたいですね。

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【プロフィール】
西垂水慎一(にしたるみずしんいち)
1986年南九州市知覧町生まれ。
高校を卒業後は福岡の大学へ進学し、一般企業へ就職。その後肥料メーカーで土壌学を学び、一度は家業へ就農。その後知覧の試験場でお茶の基礎知識を学び、現在は西垂水茶業で工場長を務めている。

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