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【TEALABO channel_24】知覧茶に関わる“今”を支え、共に次へ進んでいく -南九州市役所茶業課 東拓朗さん-
鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。
日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。
第24回目は、『南九州市役所茶業課』(以下:茶業課)の東拓朗さんにお話をお伺いしました。
行政マンと茶農家の視点を合わせ持った技師
「見てください、この光景は僕が育った地域の人間からするとTHE・地元という感じになります。」
東さんが連れて行ってくださったのは、自身の大好きな場所でした。
茶畑を眺めながら、昔話もしてくださいました。
「ファミコンをロープで自転車に括り付け、友達の家へ運び、皆で遊んでいました。その思い出の道がすぐそこなんです。ただ、そこからが試練でした。友達の家までずっと坂道が続いていて、とてもきつかったです(笑)。」
「野イチゴや茶畑で周辺に生えていた食べ物を見つけては、食べていました。振り返ると、自然と共生することが日常だったんだなと思います。」
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ご実家はおじいさんの時に設立された『青戸茶生産組合』を運営。
現在は、行政の茶業技師として、行政に所属しながら、茶農家の皆さんを支える仕事をされています。
鹿児島県内では茶業に特化した専門部署は南九州市だけなんだとか。
お茶の繁忙期になると、ご実家の茶工場へ掃除等のお手伝いに行くこともあるんだそうです。
行政マンの視点と農家の視点。この両方を持っているからこそ、
東さんなりの茶農家に対する関わり方や接し方があるのではないか。
インタビュー前からそのように感じました。
そんな東さんの生い立ちを辿っていこうと思います。
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出会いが茶業への意識を強くする
高校まで地元の頴娃で生まれ育ち
卒業後の進路を迷われていた東さん。
結果、静岡県の茶業試験場へ研修制度を利用し進学しました。
その時は継業といった意識ではなく「県外で農業について学んでみたい」といった気持ちからだったそうです。
「茶業試験場の2年間ではたくさんの出会いがありました。そこで出会った仲間たちが全国各地で頑張っている話を聞くたびに刺激になります。」
「ふわっとした気持ちで進学しましたが、あの2年間以上に濃い時間はなかったと思っています。高校卒業前は志もそんなになかったので、茶業試験場で学べて本当に良かったです。」
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その後、鹿児島へUターンし、鹿児島県茶市場(以下:茶市場)にて1年間研修生として、さらにお茶について学ぶことになります。
研修期間終了後は、頴娃町役場(現在:南九州市頴娃支所)の茶業特産係へ。
それが現在の職場、茶業課の技師として働くスタート地点となります。
「学生時代から陸上をやっていて、茶市場にいる頃に鹿児島県下一周駅伝へ出場したんです。その反省会で茶業特産係時代の先輩と出会い「役場に入って茶業に関する仕事をやってみないか?」と声をかけてもらったんです。」
現在、東さんは、茶業振興会の業務や茶業に関する補助事業の準備、現場指導といった仕事をしています。
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先輩たちと一緒に育ってきたから
30代になってから、20代の時と違う感覚が生まれてきたといいます。
「茶業青年部の事務局を20代の頃からやってきて、一緒に活動していた茶農家の皆さんが代替わりで経営者になってきました。」
「皆さん、茶農家として成長し、経営者になってきたことで求めてくる内容も変わってきました。」
「その中でできることを茶業技師としてやっていかないといけないと感じました。だから、僕自身も変わらないといけないって。それは“先輩たちと一緒に育ってきたから”こその感覚だと思います。皆さんの求めに対して、うまく対応できるほど変われたかというと、まだまだかもしれませんが…。」
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茶農家の先輩たちの事を語る東さんの顔はとても嬉しそうでした。
それだけ、皆さんと良い時間を共有し、お互い切磋琢磨して成長してきたんだなと感じました。
「もちろん、私の力不足で怒られたことはあります。それでも、ありがたいことに皆さん頼ってくださるんです。」
「JAの方とも連携し、役割分担をしながら対応しています。私は行政に関することを、JAの方が技術に関することをといった形で。」
「今の若い世代の茶農家さんは相当覚悟をもって就農されていると思います。そんな方々にも、頼られた時に応えられるように力をつけていきたいです。」
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“今”を支えることで
県下一周駅伝や青年団等、仕事以外の活動も通して
自身のコミュニティを広げていかれた東さん。
さらに職場の同僚やまちの有志が
「まちを少しでも盛り上げたい」という気持ちで
精力的に活動する様子を見て感じたことがあったといいます。
“長期的に皆にとって利益やメリットがある仕組みにしないと長続きしないのではないか。”
「地域貢献活動には多少ゆるさが必要なのではないかと思っています。遊び、つまり、楽しさが無くなってしまうと本人も持続できないですし、周りもついてこなくなってしまう気がするんです。」
「だから、何か1つ企画をするにしても、寛容でありたいし、“ゆるくても問題ないんだよ”って関わる人には認識してもらいたい。」
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その感覚は仕事に対しても同じように感じているそうです。
「今40歳なので、あと20年ちょっとは茶業課にいるはずです。その間、茶農家とか関係なく、色々な人たちから相談されやすい存在でありたいと思っています。」
「今でも、力の無さに歯痒さを感じる時だってあります。それでも、楽しみながら、小さな積み重ねをすることで、頼られて・動きやすい茶業課であり続けたいです。」
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お茶に関わる人たちに次へ繋がる橋渡しを
“知覧茶はもっとカジュアルであるべきではないか?”
東さんにとっての信念を訊ねたところ
そのように答えられました。
「もちろんブランド化されているからこその難しさはあると思います。」
「でも、あまり堅くせず、どこでも気軽に飲めるような。そんなやり方もある気がしていて。」
「産地によっては、茶農家を他の産業や業者が支えたりしているケースもあります。」
「そうすることで、生産者・消費者・行政・業者の意識や考えが近づき、お茶を気軽に飲んでもらえることに繋がっていると感じています。」
職種を越えて、点と点が線となり、それが広がり面となって、良い意味で知覧茶の敷居が下がるのではないか。そのように感じました。
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最後に自身の展望について伺いました。
「南九州市には「こんな人がいるよ」って押し出したい茶農家さんがたくさんいらっしゃいます。」
「そんな人たちが一人一人さらに伸びていけるようにサポートし続けたいし、もっと売り込みたい。それが今の夢かもしれません。」
「これも“今”を支えることと通ずることだと思います。一人一人が成長し、たくさんの人に知ってもらうことで知覧茶の底上げに繋がっていくのではないかと。」
「モデルが一つでも増えることは産地として嬉しいことです。そのために行政マンとして寛容に、ゆるやかに、茶農家さんにとって次に繋がる橋渡しができるように精進していきたいです。」
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一大産地の技師として
そして、行政の立場として
民間の方と関わっていくことは大きな葛藤があると思います。
そんな中でも
自分にできることは何なのか
茶農家のために何ができるのか。
思考を巡らせながら
一人一人と真剣に向き合う東さんの姿勢に
きっと心を動かされる人が多いのではと感じました。
近い未来
東さんが思い描く産地としての姿がどのようになっているか。
楽しみでたまりません。
【プロフィール】
東 拓朗 (ひがし たくろう)
1981年南九州市頴娃町生まれ。地元の高校を卒業後、静岡県にある農林水産省野菜茶業試験場(現 農研機構)の研修制度へ。地元に帰って鹿児島茶市場研修制度で1年研修後、頴娃町役場へ。現在に至る。
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