【TEALABO channel_12】“楽しむ”お茶づくりの先にあるのは、新しいお茶の可能性 -折尾正光園 折尾裕二さん-
鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。
日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。
第12回目は、折尾正光園 の折尾裕二さんにお話をお伺いしました。
「お茶づくりは楽しい 」
高校を卒業するまで頴娃(えい) で生まれ育った折尾さん。ご両親が茶業に励む様子を幼い頃から見ており「大変そう」 と茶業に対してマイナスなイメージを持たれていたそうです。
大学はお兄さんが通っていた『静岡県立農林大学校』へ進学し、その後、静岡県島田市にあるお茶の問屋へ就職。元々、大規模ではなく小規模の会社を希望していたため、就職先では様々なお茶農家と接することができたといいます。
そこには、お茶についてたくさん学びたいという想いがありました。
「朝8時からの勤務だったのですが、お茶の勉強をしたくて、朝6時には出勤していたんです。その2時間はとても勉強になって「お茶づくりは楽しい」と思うようになりました。」
茶業に対してマイナスなイメージが就職してから180度変わり、プラスなイメージへ。職先で生まれた“お茶づくりは楽しい”マインドは折尾さんにとって茶業人生の軸となっていきます。
静岡の問屋で積み重ねた1つ1つの時間が今に繋がっている折尾さん。20代の頃、あんなことをやっていたよなっと今も時々思い出すそうです。
「未来を見据えながら、高め合う関係 」
問屋で3年勤務後、お父さんが経営していた『有限会社折尾正光園』(以下:『折尾正光園』)の経営規模が大きくなり 、先に戻っていたお兄さんをサポートするために頴娃町へUターンしました。
折尾さんは現場全般を指揮する役割で、茶畑の様子を見て、従業員に対して1日の仕事の振り分けや書類の関連の作業等 を行っています。
兄弟で役割が分かれており、お兄さんは現場ではなく経営全般を担っているそうです。兄弟の仲は良く、一緒にお酒を飲むことも多いんだとか。
「兄とは考え方が似ていて、飲んでいるときは「今度はこういうことをしようか?」「そうするなら俺はこうやっていくよ」といった未来のことを話すことが多いです。喧嘩をすることはありません。」
「そういうことを話すのはお互いに「良いものを作りたい」という気持ちがあるからだと思います。周りからは不思議がられますが、お互いを高め合える良い関係です。」
また、会社に対する捉え方が印象的でした。
「私たちが行っているのは家業ではなく事業です。その中に立場として代表取締役の兄や右腕の私、そして従業員がいます。だからといって、誰が偉いとか思っていません。皆で支えながら良いお茶を作っているんです。」
従業員に対しては閑散期に園芸のお仕事を手伝ってもらうことにより、年間雇用ができるような仕組みにしているといいます。
お茶を一緒につくる従業員一人一人に対する優しさや配慮があるからこそ「良いものを作りたい」と思うお二人の気持ちが体現できていると感じました。
写真右:『折尾正光園』代表取締役:折尾博文さん(裕二さんの兄)
「お客様に「美味しい」と言ってもらうために 」
茶業に従事する上で大事にされていることを尋ねると、「お客様が「美味しい」とおっしゃってくださるようにお茶づくりをしていくこと。その一言に尽きます。」と、力強く答えてくださいました。
『折尾正光園』では“お茶をよく揉み・絞る”ことが基本です。お父さんの代から茶葉を“揉みながら”ということを主に、水分をしっかり取り除くことを続けており 、お客様が「美味しい」と心から思ってもらえるお茶づくりに繋がっているといいます。
「催事の際には、お茶の淹れ方をお客様が面倒にならないように簡単な方法をお伝えするように しています。そうすることで、お茶を淹れることに対する敷居も下がって、誰でも「美味しい」と思えるお茶の淹れ方ができるようになるんです。」
県外で催事がされる場合は、普段生活で飲んでいる水が合っていると思うことから、地の水を使うようにしているようです。それは、お客様の反応を見たい気持ちがあるからです。皆さんの反応を見るたびに「もっと美味しいと言ってもらえるお茶をつくろう」という気持ちになります。
折尾さんは楽しそうな表情でインタビュー中に
「いつもお茶づくりのことを考えているから、夢にも出てきますね。夢の中で失敗してしまって、汗かいて起きることもあります」
と冗談をおっしゃる場面も。 味で勝負できるように作っていきたい強い気持ちが垣間見られた瞬間でした。
「お茶づくりの現場を発信することで 」
続いて茶業を続けていく上で実現されたいことについて尋ねました。
「栽培から販売までの全行程を一括して行いたい。」
「この工場に 大型バスが止まって、多くの人に製造工程や作り手の顔を知ってもらえるような観光地を作りたい。」
等の答えが出てきました。
『折尾正光園』があるエリアは綺麗な茶畑が広がり茶工場もたくさんあります。しかし、車が素通りしてしまうのが現状です。
そんな現状でも、折尾さんは「この素通りしてしまう茶畑や茶工場の現場を直で見て知ることに新しい可能性があるのでは?」と感じています。
「大事なことは、見る側にインパクトを与えるために、いかに目を留めてもらえるかです。目を留めてもらうことで新しいビジネスが生まれたり、今までお茶を飲むことのなかった人がお茶を飲むようになったりするかもしれない。だから、色々な手段で茶業の現場のことを発信する必要があると思います。」
会社のHPではドローンを活用した動画で茶畑を美しく雄大に魅せたり、インスタグラムで日々のことを発信されたり等、多くの人に目を留めてもらえるような工夫をされているそうです。
最近はお茶に対して嗜好品以外の選択肢はないかと模索されています。例えば、医療予防の効果 だったり、衣服の染め物だったり。
「まだまだ勉強しないといけない部分も多いですが、異業種と手を組むことで今までにないお茶のアピールや選択肢の掲示ができると感じています。」
時代が求るものに対して自分たちが変化をしていく必要を感じている折尾さんは、変にこだわりすぎず、すぐ変化に対応できるような姿勢を心がけているようです。
「ただ楽しく、お茶づくりをしていきたい 」
最後に今後の展望について伺いました。
「父から受け継いだバトンを次にどう繋げていくか。その中で大切なのは“楽しみながら”会社やお茶のことを考えることだと思います。」
「ただお茶をつくる・管理するのではなく、色々な人をワクワクさせ、そんな会社として次の世代に繋げていくこと。それが僕の役目です。」
「とにかく今はどんどん新しいチャレンジをしていきます。楽しんでいる姿を次の世代に見せないと誰も帰って来ないでしょう?」
折尾さんは高校を卒業するまで茶業の現場で大変そうなご両親の姿 を見てきました。そのため就職するまで茶業に対してワクワクする気持ちや継ぎたい気持ちはありませんでした。そんな気持ちが180度変わったのは“お茶づくりは楽しい”ことに気づけたこと。
その気づきがあったからこそ、『折尾正光園』としてのお茶づくりを続けられているのだと感じました。
「新しいチャレンジに対して「やろう!」と言ったことは否定しないようにしています。「失敗しても何とかなる」という気持ちで兄や従業員と一緒に、今後も“楽しみながら”お茶づくりができるように1つ1つ取り組んでいきたいです。」
お茶づくりを楽しむこと。
そのマインドは茶業の従事者もですが、消費者や次の世代にも届き、そこから新しい可能性がたくさん広がっていくと感じました。
取材をさせていただいた私たち自身も、お茶づくりを楽しむ折尾さんの姿やお話を伺って、茶業というものがさらに近い存在になったと思います。
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【プロフィール】
折尾裕二(おりお ゆうじ)
有限会社折尾正光園 専務取締役
1975年南九州市頴娃町生まれ。静岡県立農林大学校に進学後にお茶の問屋へ就職。その後頴娃町へUターンし、家業の有限会社折尾正光園で現場全般を指揮する。
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