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PechaKucha Night vol.161 日本語スクリプトとスライド
東京で始まり各国で行われているPechakucha Night (Tokyo vol.161) というプレゼンイベントに登壇してきました。
20枚のスライド(写真)が,20秒ごとに自動で切り替わっていくのが特徴です。自分のタイミングではスライドをめくれず,皆さんスライドには文字情報をあまり入れません。
会場の六本木SuperDeluxeでは英語で話し,かなり情報量が少なかったため笑,noteにてスライドと日本語の元原稿を公開します...
以下の日本語スクリプトを作成した後,英訳を20秒ずつ区切って文章を変更したため,英語のスクリプト(本番で喋った内容)とは異なる点が多々あります。
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矢島愛子と申します。「Teaist」と名乗っています。
Teaistは,茶人(Tea master)と似ている言葉です。
日本語でいう「茶人」は,茶道の先生のような人をイメージしますよね。でも私は,茶道教室の先生でも生徒でもありません。
そのTea masterと比べると,「Teaist」ってどんなお茶をしそうでしょうか?
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Teaistという言葉の中身は,まだ正確には決まっていないと思っています。
Teaistを名乗っている人,例えば私が,実際に何をしているかで,Teaistとは何者か,決まっていくのではないでしょうか。
そこで今回は,「茶人とは何者か」ではなく,あくまで「Teaistとは何者か」を,自分を実例に差し出しながら話していきます。
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まずはじめに,私は過去5年間お茶を点てて写真を撮り続けてきました。
ただしこれらの写真の中には,茶道を習ってきた人は感じるであろう違和感がたくさんあります。
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例えば茶道のルールでは,お菓子を先に食べてからお茶を飲みます。お菓子とお茶を交互または同時にいただくことは,本当はないですね。
ただ,ケーキを全部食べてからコーヒーを飲まなきゃいけない決まりがある世界を想像してみてください。お菓子の食べ方は選ばせてほしくないでしょうか笑
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そしてお茶碗として使っているこの器,本当はただのボウルで,皿というか食器ですね。お茶碗ではないものをお茶碗として使っています。
安い茶碗でも,愛着を持って使ってきたものが割れたらショックなのは同じです。
また,これらの写真の背景は畳なんですが,
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自室にポータブルな畳を一畳だけ敷いているだけです。普通〜のフローリングの家です。
私のお恥ずかしい部屋なんですけど。(初公開)
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なぜこんなことをしてるかというと,そもそも,お茶室では撮影禁止だからです。
(筆者注:茶会中に持ち込む手荷物にスマホが入っている人や,茶会の後にお道具を撮る人は,一昔前よりかなり増えました。)
でも家や屋外でなら,気兼ねなく写真に撮れますよね。
写真に収めたいと思う気持ちも,お茶を楽しむ気持ちの一部なのかなと解釈しています。
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このスタイルは,自室でも屋外でも変わりません。
茶道ですと,お茶を点てる人が正座しているとき,お茶を飲むお客さんも正座している状態になります。
ただし,正座してお茶を出さなくてはいけないこともないと思っています。
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例えばこちらは,復興大臣にお茶を振る舞った際の写真です。机の上にお湯とお茶碗だけ用意して,立ったままお茶を出していますね。
そしてこのお茶碗を見ていただきたいんですが,ちょっと不思議な形をしていませんか?
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実はバーチャルろくろという,モーションセンサーを使ったシステムがあり,パソコンの前で陶芸のような動きをすると,画面の中で器の成形ができます。
そしてこの器のデータを元に,3Dプリンターで型を出力します。
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この型を元にして作ったのが,このバーチャルろくろ茶碗です。
私がしたことは,システムの開発者と陶芸作家さんをお繋ぎすること,そして完成品の器を実際に使い写真に撮り,使い方を魅せることでした。
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そのため,このお茶碗でお茶漬けを作ったりしてます。
私自身が「いわゆる茶道」にとらわれていた頃は,抹茶と和菓子ばかり写真に収めていました。
でも,抹茶以外にも「お茶」はたくさんあります。お茶には和菓子を合わせなくてはいけないこともありません。
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次第に,器があって,お茶があって,心地よければ,お茶なのではないかな,と思うようになりました。
そのため,私のしてきたことは,今日まで続いてきた「茶道」を後世に伝えることではありません。
私がしてきたことは全て,なんでもないところにお茶らしさを見出し,今までになかった「お茶」を目の前に興し,「これもお茶だと言い続ける」という活動だと気づきました。
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茶室の中で,400年続くルールに従う茶道も,もちろんお茶です。それを皆さんに伝えるのが「茶人」なのかもしれません。
ただしオフィスでお茶を点てたり(ネタとして入れた上の写真も私です),3Dプリンターで作った茶碗でお茶づけを作ったりするTeaistが,一人ぐらいいてもよくないでしょうか?
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お茶とお茶以外の世界が繋がるために必要なのは,茶道のルールを伝えて従ってもらうことではなく,従っても従わなくてもいいルールを増やすこと,言うなれば,「楽しみ方」を増やすことが必要です。
家だろうと外だろうと,正座してもしなくても,普通のお皿でもいい。
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「お茶っていいな」と思える瞬間は,家でも,テーブルの上にも,写真の中にもあると思います。
例えばご飯を食べているときや,天気のいい屋外で過ごしているときなど。
茶道教室やお茶会で感じる心地よさと,日常生活で感じる心地よさに,本当は区別はないのではないのでしょうか?
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きっと「茶道をしているときの心地よさ」や「お茶の良さ」は,どこにでも見いだすことができます。
一見非常に遠回りですが,Teaistのライフワークは,お茶っぽくない世界で「これもお茶だ」と言い続けることにあります。
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それは,お茶とお茶以外の世界を繋ぐことでもあります。
何が茶道たるかを伝えるのが茶人であれば,あなたが「茶道」だと思っている世界の外にもお茶があることを示し続けるのがTeaistだと思います。
私はこれまで,ネット上で自分のお茶を示し続けてきました。しかし今,活動の場所を変える時期だと思っています。
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今後は,オフラインに現れる機会が増えます。
来年の4月から,私Teaistが使える茶室が都内にできます。外苑前駅の近くにあるギャラリーの中にあります。ギャラリーの名前は,白白庵(ぱくぱくあん)。
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そして引き続き,オンラインのお茶はインスタグラムなどでご覧いただけますので,オンラインでもオフラインでも,お茶を楽しんでいただけたら幸いです。
いつでもお茶を差し出します。
***
という訳で,5年間アウトサイダーなお茶を続けてきた人が,なぜかお茶室を手に入れるまでのダイジェストを話しました。(この話は別記事で詳しく書けたらと思います)
プレゼン後は「Rebel(反逆者)ですね」「Teaist underground!!!」「PAKUPAKU!!」などのご反応をいただきました。
メインストリームのお茶ではないのは自覚していますが,わざと反抗している訳でもなく,ただ本当に主流の茶道に馴染めなかっただけなんですよね。
なお,プレゼンの途中でスマホに離脱されたら困るので,SNSのIDは最後のスライドのみに掲載しました。
発表後のインスタのフォロワーの増え具合で,プレゼンの反響が分かってとても嬉しかったです。
ただしもう既に,日本語でプレゼンをやり直したいです笑
そして早速,音声つきのスライドショーがサイトにアップされてしまいました。
英語が下手,緊張しすぎ,もともと声が変,時間なさすぎて喋りながら内容変えたら前後関係がズレる,マイクの性能が良すぎて心の声も拾われてる(最初の方でステージから落ちかけてぎゃーって言ってる)など五重苦のため,私も音声を聞けていません。
もしお聞きになってしまう場合は,全てのミスに対して生暖かいお心でご拝聴いただけたらと思います。カンペ用意すればよかった...
または動画はご覧にならずに,このnoteを読んでいただけるだけで個人的には最もありがたいです。
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