英文法解説 テーマ10 比較 第4回 否定が絡むと比較級は難しくて混乱する!いう人へ
こんにちは。今回は、比較の中でも最難関と言われる「否定語+比較級」です。「「A>B」を否定するのだから「A<B」で問題ないでしょ!?」と思っている人はいませんか?甘いです。否定語にしてもnoを使うかnotを使うかで意味も変わってきますし、moreやlessとの組み合わせなど、一筋縄ではいかないケースがあります。今回はこういったパターンをひとつずつ丁寧に解説していきたいと思います。
no more/less ~ than構文(またの名をクジラ構文)
まずは、no more ~ thanという構文からです。特徴としては、no moreとthanが離れて置かれているという点です。no more thanがセットで用いられている場合は、この後に説明する別の表現になるので気を付けてましょう。とりあえず、一般化された構文を見てください。
簡単に言うと、thanの前後のSVがどちらも否定文として解釈され、その両者が「イコール関係」だということを表す構文です。Vとno moreの位置関係は、そのVがbe動詞か一般動詞かによって異なります。than以下のS’V’にはnotなどの否定語はありませんが、否定文として解釈するのがポイントです。また、V=V’の場合は、V’が省略されます(ちなみに、S=S’の場合はS’が省略されます)。例文で確認しましょう。
例文1では、A whale is not a fish.という否定文①とa horse is (not a fish).という否定文②がイコール関係として結び付けられています。ただし、否定文①を説明するために否定文②を引き合いに出している、というニュアンスを意識することが重要です。ちなみに、この例文1が、いわゆる「クジラ構文」です。例文中にクジラが登場するからです…。
例文2では、I cannot swim.という否定文①とa hammer can (not swim).という否定文②がイコール関係として結び付けられています。これも、否定文①のために否定文②が引き合いに出されているということです。
この構文は、否定文①の方をメインとして捉えているので、こちらをno moreではなくnotを用いた普通の否定文にして、後半の否定文②の直前に比較級を置くという、書き換えパターンもあります。
これは、S not V~ any more than S’V’…という構文なのですが、むしろ、このほうが、否定文①が見やすくなっているのではないでしょうか。
また、このクジラ構文には逆パターンとして、肯定文①=肯定文②というのもあります。まずは、一般化されたものを見てください。
要するに、thanの前後のSVがどちらも肯定文として解釈され、その両者が「イコール関係」だということを表す構文です。また、V=V’の場合は、V’が省略されます(S=S’の場合はS’が省略されます)。例文で確認しましょう。
例文3では、A whale is a mammal.という肯定文①とa dog is (a mammal).という肯定文②が、イコール関係として結び付けられています。noとlessによって二重否定(=肯定)になっていると考えればわかりやすいと思います。
ところで、これらの構文でthanが「イコール」を表す記号としてはたらいているのを不思議に思った人はいませんか?thanといえば、比較対象を表し「~よりも」と訳したくなると思います。実は、比較級の否定というのは、不等号を逆向きにするだけでなく、「差をなくす」という意味合いが出ることがあります。「差がなくなる」ということは「同じになる」ということなので、これらの構文でのthanはイコール関係を表すのです。
このことを知っておくと、次のno more/less thanの説明も分かりやすいと思います。
no more/less than ~パターン
次は、no more/less thanについてです。これらは、クジラ構文とは違い、more/lessとthanの間が空いていないので、一気に3語連続セットで扱うので気を付けてください。とりあえず、まとめてみましょう。
no more thanもno less thanも後ろに続く数量表現に関しては全く増減がないという点がポイントです。つまり、10ドルからは1セントも増えたり減ったりしていないのです。100冊の本も101冊でも99冊でもないのです。これは、クジラ構文の場合と同じように、thanがイコールを表しているからです。
また、なぜこのような「しか」「なんと~も」という意味が出るのかというと、このnoが「先入観の否定」をしているからです。例えば、例文4では、more than 10 dollarsだけだと「10ドル以上」になりますが、仮に修理代金が10ドル以上だという先入観を持っていて(例えば20ドル)、それが“10ドル”だと、おそらく「10ドルしかかからなかった」と思うでしょう。つまり、more than 10 dollarsという先入観がnoによって否定された、ということです。高いと思っていたものが安いと、人は「~しか」と感じるものです。このno more thanというのは、「少なさの強調」のはたらきがあるのです。
一方で、例文5では、less than 100 books「100冊未満」だと思っていた本の冊数がnoによって否定されるのです。少ないと思っていたものがそうではないと、人はおそらく「なんと~も」というように「多さを強調」するのです。もし、この例文がno more than 100 booksであれば、「100冊しか買ってあげなかった」となりますが、100冊という数量に変わりはありません。この100冊を話者がどう判断しているのかという問題なのです。
not more/less than ~パターン
最後は、not more/less thanです。noがnotに変わっただけですが、表す意味も異なるので気を付けていきましょう。まずは、まとめてみましょう。
ここでのnotは「+α」「-α」の否定というはたらきがあります。どういうことかというと、例えば、例文6でのmore than 10 daysというのは、「10日以上」、つまり「11日・12日・13日…」のように、「10日+α」ということです。この+αの部分をnotによって打ち消せば、マックスで10日という解釈になります。つまり、11日以上にはならないということです。したがって、「10日を上回ることはない」という解釈から「多くとも10日」「せいぜい10日」という意味が生まれます。
一方で、例文7では、less than 100 dollarsであれば「100ドル未満」、つまり、「99ドル・98ドル・97ドル…」のように、「100ドル-α」ということです。この-αの部分をnotによって打ち消せば、ミニマムの価格が100ドルということになります。つまり、「100ドルを下回ることはない」ということなので、「少なくとも100ドル」という解釈になります。
no more/less thanもnot more/less thanもどちらも丸暗記で覚えさせられてしまうことが多い表現なので、どうしても混乱してしまい、苦手意識を持ちやすいところですが、このようにnoとnotの性質やthanのはたらきを理解していけば、頭にも定着しやすいと思うので何回か読み直して頑張ってマスターしてください。
というわけで、否定語と比較級が絡んだ構文はここまでになります。次回は、いよいよ比較の最終回です。比較級が用いられている様々な構文を解説していきたいと思います。ご期待ください。