英文法解説 テーマ9 関係詞 第2回 前置詞+関係代名詞ってどういうこと?
こんにちは。前回は、主格・目的格・所有格の関係代名詞についてそれぞれ解説してきましたが、今回は「前置詞+関係代名詞」について解説していきたいと思います。「そもそもなんでこんな位置に前置詞があるんだろう?」と疑問に思う人も多いかもしれませんが、ポイントは、①この前置詞はどこから抜き出されたのか?②前置詞+関係代名詞のうしろのSVの構造はどういう特徴か?の2点を理解することです。というわけで、まずは、①の点から解説しましょう。
「前置詞+関係代名詞」ができるまでのプロセス
前回の「テーマ9 関係詞 第1回「関係代名詞とか先行詞ってそもそも何?」」で解説したような、先行詞をSVの中から抜き出すという考え方を今回もしてみましょう。
今回は、buyの目的語である名詞(the book)ではなく、前置詞atの直後の名詞(the bookstore)が先行詞として抜き出されています。もちろん、このままでも英文としては問題ないのですが、やはり前置詞atが関係詞節中に残っているのは「収まりが悪い」感じがします(前置詞は「前置詞+名詞」というかたまりで解釈したくなるマインドが働くので)。
そこで、この前置詞atを関係代名詞whichの直前に移動します。
このようなプロセスを経て「前置詞+関係代名詞」という構造が生まれます。
基本的には、前置詞は関係詞節に置きっぱなしでも、関係代名詞の直前に移動してもどちらでもいいのですが、その前置詞が関係詞節中の動詞と一緒になってイディオムを形成しているときは、関係詞節中にとどまっていた方が好まれます。
1.2.は上記で説明した例文です。3.4.は「彼が昨日からずっと探している鍵」という意味の名詞句ですが、forはlook forというイディオムを形成しているので、この場合は関係代名詞の直前に移動するよりも、3のように関係詞節中にとどまっている方が好ましいです(文法的にダメというわけではありませんが、通常は移動しません)。
また、1.3.のように前置詞が関係詞節中にとどまっている場合は、目的格の関係代名詞は省略されることが多いです。一方で、「前置詞+関係代名詞」としてまとまった場合は、関係代名詞の省略はできません。
「前置詞+関係代名詞」の関係詞節の特徴
さて、次に「前置詞+関係代名詞」という構造を作った後の関係詞節の特徴について考えてみたいと思います。前回の「テーマ9 関係詞 第1回「関係代名詞とか先行詞ってそもそも何?」」で解説した、主格の関係代名詞や目的格の関係代名詞を用いている場合と比較してみると分かりやすいと思います。
主格の関係代名詞を用いている、5.の例文では、関係詞節中のS(主語)が欠落しているのが分かります。これは先行詞を関係詞節中のS(主語)の位置から抜き出したからです。また、目的格の関係代名詞を用いている、6.の例文では、関係詞節中のO(目的語)が欠落しているのが分かります。これは先行詞を関係詞節中のO(目的語)の位置から抜き出したからです。このように、SやOが欠落した状態の文のことを「不完全文」と呼びます。
一方で、前置詞+関係代名詞を用いている、7.の例文では、前置詞aboutが関係代名詞の直前に移動したため関係詞節中に欠落箇所がなくなっています。もしaboutが関係詞節中にとどまっていれば、I told you about yesterdayとなり、aboutの直後が欠落箇所として認識されます。このように、欠落箇所のない文(文型上必要な名詞がすべて揃っている状態の文)のことを「完全文」と呼びます。この特徴を一般化すると次のようになります。
この点を見極められるかどうかが関係詞をクリアするためのカギになるので、関係詞節中の「完全」「不完全」を意識してみてください。「テーマ9 関係詞 第4回「関係副詞は意外とみんなつまずく」」でも大事な考え方になります。
「前置詞+関係代名詞」が用いられている英文の解釈方法
最後は、「前置詞+関係代名詞」という仕組みが用いられている英文の解釈方法です。前置詞が関係代名詞の直前に置かれていると、変に構えてしまって訳しにくいという経験をしたことがある人も多いと思います。ためしに次の例文を訳してみましょう。
まず8.ですが、「前置詞with+関係代名詞whichの部分をどう考えるか」というところに意識が向かいがちですが、実は「先行詞the fluency+前置詞with」というところに注目するのがポイントです。なぜかというと、先行詞と前置詞は、関係詞節中ではもともと「前置詞+名詞」という語順として並んでいたはずだからです。
この特徴を利用すると、8.ではもともと“with fluency”という語順で関係詞節にあったと考えられます(冠詞theは先行詞として移動した際につけられたものなので関係詞節中では無視して良いでしょう)。このwith fluencyですが、前置詞+抽象名詞という構造になっていて、副詞fluently「流暢に」と同じ意味になります。そこで、8.を次のような2文に分けて考えてみましょう。
この2文を結びつけて解釈すると良いでしょう。この際、関係詞節による「修飾」という意識はあえて無視しても構いません。「彼女が流暢にフランス語を話したので私たちは驚いた」と訳せると完璧ですね。
次の9.も同様の考え方をします。先行詞the mineralsと前置詞withoutを、「前置詞+名詞」の語順にして関係詞節中に戻します。すると次のような2文に分けられると思います。
ポイントは②の文で「仮定法」が用いられている点です。「テーマ8 仮定法 第4回「定番の“I wish I were a bird.”という文について」」で解説したように、without ~が「もし~がなかったら」の意味で用いられています。また、wouldn’t functionは仮定法過去です。従って、「これらは、私たちの体が機能するのに不可欠なミネラルだ」と訳すことができます。
いかがでしょうか?「前置詞+関係代名詞」の仕組みと訳し方について詳しく説明してきましたが、少しずつ理解は深まってきたでしょうか?なんとなくやり過ごしてしまいがちな範囲のように思えますが、かなり使用頻度の高い重要な箇所なのでしっかりと理解していってください。次回は、関係代名詞のwhatについて解説していきたいと思います。ご期待ください。
よろしければサポートして頂けるとありがたいです!これからの励みにもなります!