英文法解説 テーマ10 比較 第1回 原級と比較級は等号と不等号で考えよう!
こんにちは。英文法レクチャーシリーズもテーマ10を迎えました。今回からは「比較」について解説していきたいと思います。「比較」は難しいという印象を持っている人が多いですよね。覚えることも多く、この範囲で学習する構文も複雑なものがあるので、「比較は得意分野だ」という人は実際にほとんどいないと思います。というわけで、「比較」は基本から丁寧に詳しく解説していきたいと思います。
第1回目は、比較の基本公式の確認から始めたいと思います。まずは、「原級」と「比較級」をしっかり理解していきましょう。「比較」を学習する際のポイントは、あまり日本語訳に頼り過ぎないことです。日本語訳から考えすぎると、特に否定が絡んだ時に混乱するので、比較は記号化して「=」「>」「<」で考えると良いと思います。
原級(肯定文のとき)
原級比較は、いわゆる「同等比較」と呼ばれるもので、肯定文の場合は「=」の記号で表されます。as ~ asだけを覚えるのではなく、「何と何をどういう点で比べているのか」に常に注目してください。
原級の公式としては、以上のものを理解し覚えれば良いのですが、原級比較が実際に英文中で用いられる際は、比較対象(A・B)の語句の種類によって、2つのパターンが生まれます。具体的に例文を見てみましょう。
例文1は、「A as ~ as B」タイプの原級比較です。比較対象(TokyoとN.Y.)がそれぞれS(主語)としてはたらいているので、このような語順になります。また、「どういう点で比較しているのか」というのがas ~ asに挟み込まれている、形容詞crowdedです。
例文2は、「as ~ A as B」タイプの原級比較です。比較対象(in Tokyoとin Rome)がそれぞれ副詞句としてはたらいているので、このような語順になります。つまり、“in Tokyo”がas ~ asで挟むべき形容詞crowdedよりも後ろに置かれている語句なので、「as+形容詞+副詞句(A)as+副詞句(B)」という語順になるのです。
このように、as ~ asだけ覚えていても、実際に英文中でどのように用いられるのかを知らないと対応できないのが「比較」の難しい点だと思います。そういう意味でも、「何と何をどういう点で比べているのか」をよく確認する必要があります。
また、原級比較に関してはもう一つ盲点となりやすい重要なポイントがあります。それは、as ~ asの間に挟む語句に関してなのですが、形容詞や副詞と異なり、例えば、a great scholar「偉大な学者」のような、「a+形容詞+名詞」といった語句をas ~ asの間に挟みたいときは、語順を入れ換える必要があります。
どうしてこうなるかというと、asは副詞なので名詞句にかかることができないため、形容詞を直後に置く必要があるからです。このパターンは、as ~ as ever「相変わらず~だ」やas ~ as ever lived「これまでに類を見ないほど~だ」といった、原級比較を用いた慣用表現でよく見られます。
原級(否定文のとき)
次は、原級比較の否定文について考えていきましょう。A=Bという関係を否定すると、直感的にはA≠Bとなりそうですが、それだと比較をしていません。単なるbe動詞の否定文です(He is not a student.のような)。
実際は、原級比較の否定文というのは、A<Bとなります。この場合、「AはBほど~ない」と訳すとスムーズにいくことが多いのですが、A<Bという関係性さえ出ていれば自分で分かりやすいと思う日本語にしてしまって構いません。
例文で確認しましょう。
原級as ~ asを否定文にする場合、not as ~ asでも良いのですが、not so ~ asのように、一つ目のasはsoにするのが通例なので、例文でもそのように表記しています。
例文4は、主語Johnと主語Robertをcarelessという点で比べ、前者の方が劣っているという比較になります。
例文5は、副詞hereと副詞句in Sapporoをcoldという点で比べています。副詞要素はcoldよりも後ろに置かれるものなので、「not so ~ A as B」というパターンになっています(例文2と同じ語順の原級比較です)。
ちなみに、原級比較の否定文を用いた慣用表現で次のようなものがあります。
A<Bを表すパターンだと認識できれば、丸暗記に頼らなくても理解していけると思います。例文では、AとBの語句は名詞句ですが、because節などが用いられることもあります。
比較級(肯定文のとき)
比較級は、いわゆる「優等比較」と呼ばれるものであり、肯定文の場合は「>」の記号で表されます。-er thanだけを覚えるのではなく、ここでも「何と何をどういう点で比べているのか」に常に注目してください。
原級比較と同じように、比較対象(A・B)の語句の種類によって、次のように2つのパターンが生まれます。例文を見てください。
例文6は、比較対象(Iとhe)を副詞earlyという点で比べています。he doesのdoesはgetsの代用表現です。
例文7は、比較対象(sheとI)を「形容詞+名詞」many booksという点で比べています。この場合は、manyが比較級になり、more booksになっている点に注目してください。I doのdoはhaveの代用表現です。
例文8は、比較対象(in this countryとin the U.S.)が形容詞lowよりも後ろに置かれる要素なので、「-er+副詞句(A)+ than+副詞句(B)」パターンの語順になっています。
どの文でも、「何と何がどういう点で比べられているのか」を認識したうえでスムーズに訳せると良いでしょう。
劣等比較(A<B)
比較級を否定文にすると、「A not -er than B」という構造になりますが、「[A>B]ではない」ということは、「A=B」または「A<B」の二通りの解釈が可能になります(「ジョンはトムより背が高くない」は、「①ジョンとトムは同じ背の高さだ」と「②ジョンはトムより背が低い」の2通り取れます)。
つまり、「A not -er than B」は、慣用的に用いられるケースを除いては、曖昧な意味に解釈される可能性があります。そこで、「A<B」を表したいときは、否定語notに頼るのではなく、「劣等比較」という公式を使います。
moreの逆の概念上にあるlessを用いることで、A<Bを表すことができます。lessを使う場合は、後ろの形容詞や副詞に-erを付けることはできないので、例えば、less kindはOKですが、less kinderはNGです。実は、この劣等比較で表されるAとBの関係性は、原級比較の否定文のそれと同じなので、例文4と5はそのままless ~ thanを使って書き換えることができます。
A<Bという関係なので「AはBほど~ない」と訳せばスムーズに解釈できると思います。例文10ではlessの直後にcoldがありますが、colderとなっていないことに注目してください。
ただし、「A not -er than B」という比較級の否定文が用いられることはない、というわけではありません。これに関しては、「テーマ10 比較 第4回「否定が絡むと比較級は難しくて混乱する!いう人へ」(後日アップします)」で詳しく解説する予定なので、ご期待ください。
というわけで、原級と比較級の基本の解説はここまでになりますが、いかがですか?あまりに単純化しすぎて、as ~ as「同じくらい~」とか-er than「…よりも~だ」と表面的な部分だけ知っていても、実際に英文を書いてみると、正しい語順などに戸惑うと思うので、品詞のはたらきのような基本から理解を深めると良いでしょう。次回は、最上級について扱いますが、今回解説した「原級」や「比較級」との書き換えなども出てくるので、しっかり復習して理解していってください。では、また次回。
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