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32歳、語学学校に行く。
新卒で入社した会社が学習塾だったからか、あるいは昨年「日本語教師養成講座」を受講していたからか、学校自体は久しぶりという気がしなかった。
3月下旬の月曜日、メルボルンの中心地にある語学学校――オーナーだか経営のトップだかが日本人との噂だ――に入学した。
生徒は、日本人、台湾人、コロンビア人を中心に、アジア圏やラテンアメリカ圏出身者が多い。後から知ったが、学費は相場より高いらしい。その甲斐あって、先生方も生徒も熱心な人が多い。
"English Only Policy"――学校の敷地内では、エレベーター、階段、トイレも含めて英語のみ。英語以外禁止。ペナルティは授業の出席禁止。
ふと、10年前の記憶がよみがえる。
当時大学生だった私は、スペインに語学留学していた。マドリードにある私立大学附属の語学学校では、英語が普通に飛び交っていた。スペイン語の語学学校なのに。
ヨーロッパやアメリカからの留学生が多く、彼らは普通に英語を話していたし、アジア系のクラスメイトも英語を話せる人が多かった。英語が話せないが故にクラスメイトの会話に加われず(何度でも繰り返すが、スペイン語を学ぶ教育機関だ)、先生も英語を使い出す始末で、いろいろ端折るが最終的には鬱っぽくなってしまったのだった。
初の海外長期滞在、そして二十歳前後でまだ若かったことも大きいが、とにかくこの経験から学習言語(今回は英語)以外の言語を話さない環境に身を置きたかった。
今回の語学学校が掲げるEnglish Only Policyは概ねきちんと守られていた。たまに別の言語が聞こえることもあるけれど。
○
さて、教室に入ってクラスメイトと話しているうちに薄々と気づく――かなり年上の方らしい。
国籍問わず、ボリュームゾーンは大学生や新卒直後くらいの20代前半。次いで、社会人経験ありの20代後半のワーホリ勢。30代以降はぐっと減るが、40代以上の方もちらほら。
母国の政治状況が良くないのでとにかく国に帰りたくない30代チリ人女性
日本にある外資系企業を退職して世界中を旅行して回っている30代台湾人女性
農業系の専門学校に行くために勉強中の30代コロンビア人女性
旦那が修士号を取得するために帯同している40代韓国人女性(ちなみに小学生の息子も一緒だ)
定年退職後の新しいチャレンジを満喫中の60代日本人男性……
海外に飛び出すのに年齢は関係ない。
大人だからこそ、自己責任。
様々な事情を抱えた人たちが交錯する語学学校は、なかなか面白い。
語学学習以外の目的意識がはっきりしている人が多かったが、深く考えずにふらっと来ていろんな人と話すのも新しい発見があって良いのかもしれない。
○
語学学校には、
・一般英語コース……合計12週
・バリスタコース……5週
以上、合計17週在籍した。ワーキングホリデービザの上限だ。
入学時は中級(Intermediate)で、中上級(Upper-Intermediate)を経て準上級(Pre-Advanced)で卒業した。
4技能(話す、聞く、書く、読む)のスキルが、クラスのレベルに見合うほど上がったかは正直なところ分からない。
当初の目標通り、帰国後に何らかの語学関係の資格を取ることになるだろう。英検か、TOEICか、IELTSか、Cambridgeか、はたまた別の資格か。
この発想が、いかにも日本らしいと思いつつ、ワーホリ生活の集大成兼就職活動のためだから、そこまで負の感情はない。
むしろ、やれるだけやってみよう、という気分だ、今のところは。
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