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イオンはなぜ、激マズ「しおラーメン」を作ったのか? その理由を考えてみた


私はラーメンが好きだ。

美味しいラーメン屋さんに行くために一時間以上電車に揺られたり、開店の数時間前からお店に並ぶほどではないけれど、15分ぐらいなら電車に揺られてもいいと思っているし、15分程度なら行列に並ぶ。贔屓ひいきにしているラーメン屋さんだってある。

だが昨今、物価高騰のあおりを受けてラーメン一杯の値段も上がっているため、それほど頻繁ひんぱんにラーメン屋さんに行くわけにもいかない。

そんな時の庶民の味方がインスタントラーメンである。その中でも特に「袋麺」は、いい。

「サッポロ一番」とか「出前一丁」とか「マルちゃん」とか、いろんな袋麺があるけれど、最近私がよく買っているのがPB(ピービー)の袋麺。

PBとはプライベートブランドの略称。

例えば、西友とかイオンとかドン・キホーテなどが自社で開発製造、そして販売している商品だ。各社のオリジナル商品なので、基本的にはそれぞれの会社の店舗でしか買えない。

数年前まで、私は5食入りの「サッポロ一番塩ラーメン」をよく買っていた。しかし、どんどん値上がりしていくサッポロ一番塩ラーメンに手が出しにくくなっていた。そんな時に出会ったのがPBの袋麺である。

最大の魅力はその安さ。
とにかく安い。

各食品メーカーの5食入りが400~500円のところ、PBはなんと250円ほど。ほぼ半額である。

もちろん味の違いはあるけれど、コスパを考えたらPB袋麺に軍配が上がる、はずだった。その「しおラーメン」に出会うまでは。

いつもは西友でPBの5食入り塩ラーメンを買っているのだけれど、たまたま入ったイオン系列店で私はその「しおラーメン」を見つけた。

「THE all-time NOODLES」のしおラーメン

その時、思った。
「そういえば、袋麺のストックが少なくなってたかも」

税込み224円という割安感もあって、躊躇なく私はそのイオンPBの袋麺、しおラーメン5食入りをカゴに入れた。

それからしばらくした、ある日。
特に何が食べたいというわけではないけれど、ただただお腹が空いていた夜。

そんな時の食事メニューはたいてい麺類になる。ラーメンかざるそばか、あるいはそうめんかうどんか。

インスタント食品をストックしている棚を覗くと、そこには先日買ったイオンPBのしおラーメンがあった。私は迷うことなく、しおラーメンを作り始めた。

袋麺の場合、野菜を入れたり、卵を落としたりする人もいるけれど、私はたいてい麺だけ。

理由は「めんどくさい」から。

だが麺だけだと一袋はちょっと物足りないので、私は二袋分を作って食べる。麺を茹でて粉末スープを入れるだけ。あっという間に完成だ。

「さて、食べよう!」
が、その時、ちょっとした違和感があった。それは───

匂い。

なんだか薬っぽいというか、いかにも化学調味料な匂いがする。

ただ、インスタント食品の中にはそんな感じの匂いがするものはあるし、でも食べ始めたらそれほど気にならなくなる場合がほとんどなので、私はそれ以上、匂いについて詮索することなく食べ始めたのだが───

「・・・ん?」

なぜだろう。
私の舌がやんわり拒否している。
つまり・・・美味しくない。
というか───

不味まずい。

私の中で「しおラーメン」というのは一番外れのないラーメン。どんなメーカーの塩ラーメンもそれなりに美味しい。

なのに、この塩ラーメンは「美味しくない」どころか「不味い」。ただ、なぜ私が「不味い」と思ったのか、その原因はすぐにわかった。それは、

「薬っぽい味と匂いがする」からだ。

しかし、麺だけの塩ラーメンに薬など入っているはずがない。なのに味覚の先には薬がたたずんでいる・・・

ん? 待てよ。
これって・・・まさか───

私はさっきゴミ箱に捨てたしおラーメンの袋を取り出し、裏返した。そこには原材料名や成分表示が書かれている。すると・・・

「THE all-time NOODLES」のしおラーメンの裏面

やっぱりあった!!
なんと、原材料名のところに「セロリ」と書いてあるではないか。が、

原材料はその割合が多いものから順に表記されている。セロリはかなり後ろのほう。つまり、それほど多くは入っていないはず。なのに、何でこんなにその存在を主張しているのだろう。

これがもし、ドラマや映画の撮影現場だったら。

とんでもないインパクトのある通行人B(セロリのこと)である。カットがかかった途端、大手事務所にスカウトされるだろう。

そして、もしこれが「ウォーリーを探せ」のウォーリーだったら、目立ち過ぎで「ウォーリーがいるよ」というタイトルに変えなければならない。


そう───
薬っぽさの正体は「セロリ」だったのだ。

セロリは薬味なので、最初に「薬っぽい味」だと感じたのはあながち間違っていなかったのかもしれない。そして実は、

私はセロリが苦手なのだ。
絶対に食べられないわけではないけれど、好んでは絶対に食べない。


そもそも、世間の人たちがセロリをどう思っているか、みなさんにも是非ネットで検索していただきたい。

実は、セロリはかなりの嫌われ者なのである。それも「大人が嫌いな野菜」で毎年「ゴーヤ」と首位争いをしているほどの。そして子供たちも苦手なセロリである。なのに───

なんで、セロリ入りの塩ラーメンを作ったのだろう?

まさか、開発担当の人が「そんな野菜だったなんて知りませんでした。だって私の周りはみんなセロリが好きなので」とか?

いやいやいや、そんなわけない。
セロリがたいていの大人から嫌われてることは数字が示している。

もしかして・・・
「みんながイヤがる顔を見たかった」とか?

それじゃ、ただのドSである。

空気の読めないオッサンがやらかしてるならまだしも、それをイオンという大企業がやっているのだとしたら、ちょっと笑えない。

いや、イオンが作ったのだから、それは単なるいたずら心とか遊び心ではないはず。そこには明確な意図があると考えるべきである。なので───

私は考えた。
「なぜ、イオンはセロリ入りの激マズ塩ラーメンを作ったのか?」

・・・勢い余って、思わず「激マズ」と言ってしまったが、あくまで私の味覚に限ったことであり、悪口ではなく感想なので、そのことは断っておく。

まず私は「セロリ」について調べるところから始めた。

セロリは16世紀頃からイタリアなどで薬用植物として栽培が始まり、17世紀にはフランスで食用とされるようになった。 日本には16世紀末朝鮮出兵の際に加藤清正が中国種を持ち帰り、江戸時代に入ってから、オランダ船によって西洋種が長崎へ入ってきたようだ。

セロリは肉や魚などのにおい消しもしてくれるので、西洋料理では香味野菜として欠かせないらしく、スープを作る時の風味づけにもセロリは必須である。

ちなみに西洋料理とは、
フランス料理・イタリア料理・スペイン料理・ドイツ料理・ロシア料理・イギリス料理・アメリカ料理・アイルランド料理・スイス料理・ポルトガル料理・ギリシア料理・トルコ料理などを指す───

ん? 
もしかして・・・

私は「ある可能性」に気づき、少し調べてみた。その結果・・・

「理由は『これ』かもしれない」

私がある可能性から導き出した理由はこうだ───

イオンのしおラーメンは「最初から日本国内での人気を特には考えていない」のではないだろうか?

つまり、イオンのしおラーメンは日本での需要ではなく、海外マーケットを強く意識した商品なのではないか、という可能性である。

イオンの海外店舗を検索してみると、イオングループが海外で事業展開している地域は、東南アジア諸国、香港を含む中国、台湾、 オーストラリア、そしてアメリカである。おそらく今後もその勢いは続くのだろう。


日本はどんどん人口が減り続けている。
規模の大きな会社であればあるほど、国内だけしか見ていない商売などいつか行き詰まる。

世界の人口は約80憶人。それに対し、日本はわずか1億2000万人程度。利益を最大化するためにはより大きなマーケットを相手に商売をするしかない。

となると、日本の約1億人にウケるものではなく、世界の残り約79億人にウケる商品を販売し、売ったほうがいいに決まっている。

ちなみに、世界ラーメン協会(WINA)が発表した、2023年の世界各国のインスタントラーメンの年間消費量によると、世界の総消費量が1202億食1位の中国が422億食。世界のインスタント麺の約4割は中国で消費されている。

次いで2位がインドネシア(145億食)、3位はインド(86億食)、4位がベトナム(81億食)、そして5位が日本(58億食)となっている(下表参照)。

世界ラーメン協会のHPより

つまり年間1100億食以上が日本以外の国で食べられているのである。日本人が好むものだけを作っていては、グローバル市場では勝ち抜けないことがわかる。

日本人の多くが苦手に思うかもしれないセロリ入り「しおラーメン」は、イオンという大きな企業だからこその商品であり、日本だけを相手にはしていないその姿勢と気概からくる商品なのではないだろうか。

一方で「こんな可能性」もある。

仮にもし、他の企業と同じような「可もなく不可もない」塩ラーメンを作ったところで大きく売れることもなければ、話題になることもないだろう。もしかしたらそのまま消えてしまうかもしれない。

だったら、敢えて日本人が苦手な「セロリ」を入れたラーメンを作り、日本人の8割に求められるのではなく、2割に強く求められる「ニッチなラーメン」を作ろうとしたのではないだろうか。

あるいは「不味い」ことが話題になることで「どのくらい不味いの?」とみんながこぞって買う、いわゆる「炎上商法的」戦略で作られたラーメンという可能性もある。いわゆる「悪名は無名に勝る」である。

売れるために、どんなこともやってみる。その貪欲さとしたたかさ。

実際、イオンのしおラーメンを検索すると「イオンで買ってはいけない商品」として紹介されていたりして、それなりに話題になっている。

いちPB商品に過ぎないしおラーメンが話題になっている時点で「試合には負けても、勝負には勝っている」みたいな感じがする。

世の中、必ずしも万人受けするものが売れるとは限らないし、その逆も然り。

恐るべしイオン。
さすがイオンである。

1958年に日本で誕生したインスタントラーメン。日本で発明され、世界中で認められたインスタントラーメンは、今や活躍の場を宇宙にまで広げている。

今回、イオンPBのしおラーメンを通じて、世界に、そして宇宙に思いを馳せることで、私は自分の小ささを改めて思い知らされたような気がした。

私は広い世界を知らない、いわゆる「井の中の蛙」であり、日本というちっぽけな枠組みでしか物事を捉えていなかったのかもしれない。

大谷翔平藤井風など、今や、世界で活躍する人がどんどん増えているのに、私は自分の味覚や価値観がいつまでもアップデートされないままの「しょっぱい自分」を大いに反省した。

今度イオンのお店に行ったら、今度は醤油ラーメンや味噌ラーメンの袋麺も買ってみようと思う。もしかしたら、そこにも何か新しい「発見」があるかもしれない。

そしてもう一度、イオンのしおラーメンを食べてみようと思う。

セロリの風味に海外の風景を思い浮かべながら食べる「しおラーメン」、もしかしたらまた違った味わいを感じられるかもしれない。



と、記事はここで終わるはずだった、のだが・・・

予想外のことが起きた。

記事を書き上げた私は早速、「しおラーメン」を購入した近所のイオン系列店へと出かけた。醤油ラーメンを買うために。

そこで私が見たものは───

イオン系列店での陳列棚

イオンPBの「しおラーメン」の棚に、イオンPBの「塩ラーメン」。

イオンには二種類の「塩ラーメン」があるってこと?

これって・・・いったい、どういうこと??

私は混乱していた。

そして、醤油ラーメンを買おうとお店に行ったのに、「塩ラーメン」を買って帰ってきてしまった。

それは、ひらがな「しおラーメン」漢字「塩ラーメン」の違いとその謎を解くため。

どうやら、私の「しおラーメンの旅」はまだ終わっていないようだ。


次回へ続く・・・・・続きはこちら↓↓


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