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「居心地がいいと思うカフェチェーン店ランキング」が私に教えてくれたこと


テレビのランキング番組やネットのランキング記事など、世の中にはランキングが溢れている。自分が興味のあるランキングは、つい見てしまう。例えば、

「最後の晩餐で食べたいものランキング」とか「遅刻した時の言い訳ランキング」とか「うっかり言ってしまうダジャレランキング」とか。

けれど、自分とは縁もゆかりもないばかりか、一ミリの興味もないランキングまで、なぜかついチラ見してしまう。例えば、

「東大現役合格者出身高校ランキング」私は東大出身でもなければ、出身高校は山奥の平凡な県立高校である。子供もいないし、孫もいない。気になる要素など何もない。

「納豆消費量が多い都道府県ランキング」私の苦手なもののランキング、気になる意味がわからない。

「メンズのリップクリームランキング」男は黙って唇なめとけ、と思う。

なのに、目の前にランキングがあればつい見てしまう。そんな私が最近、気になったランキングが───

「正直1番居心地がいいと思うカフェチェーン店ランキング」(TRILLニュース)

結論を先に言ってしまうが、

一位 コメダ(コメダ珈琲店)
二位 スタバ(スターバックス)
三位 ドトール
だった。

一位のコメダ、納得である。私も「居心地がいいと思うカフェチェーン店」といえばコメダだと思う。だが、

二位のスタバは納得がいかない。

人にはパーソナルスペースというものがある。

パーソナルスペースとは───
他人が近づいてくると不快に感じる空間や距離(心理的距離)のことを指す言葉で、動物が自身の縄張りを侵されると威嚇や警戒をするのと同様、人間もあまりに近寄られ過ぎると不快感を覚える。

コメダはBOX席が多く、他のお客さんとの距離が離れているのでストレスが少ない。それに対して、スタバは隣のお客さんとの距離が近いお店が多い

特に都内だと、どこに座っても「ほぼ相席」みたいな状況になる。友人と話をするにもいろいろと気を遣わなきゃいけないし、パソコン仕事などしようものならセキュリティだだ漏れである。

そんな「居心地が微妙なスタバ」なのに、二位。私的には「圏外」なのに、なぜか二位。しかも、一位のコメダとはわずか一票差で二位だという。

これは、なかなかのである。

隣との距離も近く、そして特に週末は激混みなスタバをなぜ居心地がいいと思えるのだろう?

私からすると、そんな「パーソナルスペース」ガン無視な空間で、一人黙々と読書している人や何やら勉強している人は修行僧にしか見えない。

どこかに「その謎」を解くカギがあるはず。

そこで改めてそのランキング記事を隅から隅まで読んでみたのだけれど、記事の最後に今回の謎を解く、こんな情報が載っていた。それがこちら───

調査方法:インターネットサービスによる任意回答(自由回答式)
調査実施日:2025年2月2日
調査対象:全国の10代~70代
有効回答数:300名

TRILLニュース「正直1番居心地のいいと思うカフェチェーンランキング」より


これを見て、私は「あること」に気づいた。それは───

このアンケートは「公平ではない」ということ。

理由は、調査対象が「全国の10代~70代」だからだ。全国の10代から70代を対象にしているので公平だと一瞬思うけれど、よく考えてみて欲しい。

全国を対象にしているということはつまり、全国展開していないコーヒーチェーンや特定のエリアにしかないコーヒーチェーンは圧倒的に不利だということだ。

調査対象者によって知っているお店と知らないお店があるのだから、全国展開していて知名度の高いコーヒーチェーンが圧倒的に有利なのである。

実際、1位~3位のコーヒーチェーンはすべて全国展開している。そして4位以下のお店の大半は店舗展開エリアが限られている。

ちなみに「カフェチェーン店舗数ベスト10」はこちら。

インターネットによる独自調査

「全国の10代~70代を対象にアンケートを取った」と聞くと、一見公平に見えるけれど、全国を対象にするということは店舗や知名度ともに全国区同士でなければ公平とはいえないだろう。ただ───

こうしたランキングはあくまで回答者の主観の結果であって、正解とか不正解があるわけではない。

仮に正解を求めるのなら「話のネタ」として楽しむのが正解だろう。目くじら立てて整合性や客観性を問うなど野暮というもの。とにかく、楽しめばいいのだ。

しかし、こうしてランキングの謎解きを楽しんだ先で、私はとても居心地の悪い「あること」に気づかされることになる。それは───

私の「視野の狭さ」である。

全国という広い視野でアンケートを捉えなければならない、などと偉そうなことを言っておきながら、私自身が自分の先入観や思い込みでランキングを考察していたのだから、あまりにカッコが悪すぎる。

「居心地のいいカフェチェーン店」のランキングで二位だったスタバは、どこへ行っても狭くて混雑している。だから居心地がいいわけがない、私はそう思っていた。でも、

それは東京に住んでいて、しかも行動範囲にあるスタバがすべて都心部にあるからこその感想であり、私の勝手な印象でしかないのだ。

しかし、アンケートは全国が対象。つまり北は北海道から、南は沖縄まで全国から集められた声なのである。

確かに、都心部はほとんどの店舗が狭く、そして常に混雑しているかもしれない。でも北海道や沖縄、それ以外にも広大な場所に建てられたお店は、空間が広く取られ、ゆったりとしていてとても居心地がいいのかもしれない。それに、そうした場所に建てられたお店からの景色は山や川、海といった自然の恵みがあるかもしれない。

そう思った私は、実際にスターバックスのHPを見てみた。するとそこには想像をはるかに超えた、あまりに素敵な店舗が並んでいた。

富山環水公園店(スターバックスHPより)


沖縄本部町店(スターバックスHPより)


福岡大濠公園店(スターバックスHPより)

スタバにはこうしたお店が全国各地にある。

地域の文化を世界に発信することを目的に、日本の各地域の象徴となる場所に建築デザインされたこれらのお店は「リージョナルランドマークストア」と呼ばれている。

自然の中に溶け込むようなエバーグリーンな店舗や、街の雰囲気に馴染んでいる店舗、その土地や雰囲気に合ったそうした店舗はとても広くゆったりしていたり、テラス席があったりして見ているだけで心地いい。

スタバは「オシャレ」で「意識高い系」で「都会的」、そういったイメージに引っ張られて、私は自分でも気づかぬうちに都心のスタバしか見えていなかった。

狭くて窮屈な東京にいることが当たり前になって、いつしか自分の感性や感覚まで窮屈になってしまっているかのようで、なんだかショックだった。

そもそも、居心地の良さというのは人によって違うのだ。

ゆったりとした場所で過ごすことを「居心地の良さ」と思う人もいれば、お洒落なカフェで一人の時間を過ごすことに「居心地の良さ」を感じる人もいる。

あるいは会話をせず、ただその空間でイヤホンをして仕事をしたり、読書をしたり、動画を見るその没入感を大事にする人もいれば、美味しいコーヒーを飲むという目的さえ果たせれば、場所としての居心地はあまり気にしないという考え方もある。

長い間、東京でずっと、狭い部屋で暮らしている私。

ずっと狭いところにいるために、そうした想像力が欠如しかかっているのだろうか。そして、スタバの席の狭さにさんざん文句を言っている私が、自分の視野の狭さに気づけなかったという皮肉。


時折、「広い場所に行きたい」「自然に包まれたい」と思うことがある。

もしかしたらそれは「いつの間にか狭くしてしまっている自分の心」からのSOSなのかもしれない、そんな風に思った。

ずっと家の中にいれば人と会うことはない。だからこそ、いろんな煩わしさから解放され、いつだって心は解き放たれていると思っていたけど、そうした環境によって他者との距離の取り方を忘れ、気づかぬうちに他者に対する思いがどこかで欠けてしまっているのだとしたら───

他者から学びを得る謙虚さを失ってはいけないし、その尊さを忘れてはいけない。

やはり、人は一人では生きていけないのだ。そして、死ぬまで人としての成熟を望むのなら、人との関わりで学ぶべきことに終わりなど、ない。そう、死ぬまで。

自分の心を居心地よく感じられる、そんな自分でいなきゃ、と思った。

私はスタバが日本に初上陸した時のことを覚えている。あまりにキラキラしていたあのスタバを。でも、だからこそスタバを「イケてるカフェ」とか「意識高い系の人が多い」というイメージで見るのは、もう古いのだ。

今やスタバは全国展開しているどころか、各種ショッピングモールに入っていて、背伸びしなくたって誰でも気軽に入れるようなお店になっている。

実際、休日のショッピングモールのスタバは家族連れや中高生で賑わっている。

もはや「都会の意識高い系カフェ」という位置づけではなく、誰もがそれほど緊張しないでも入れる、でもちょっとだけ「イケてる自分」にしてくれるような、そんな心地のいいカフェなのかもしれない。

居心地のいいカフェチェーン店に行く前にまず、私は「居心地のいい自分」でありたい、と思った。


私は築50年を超えているので外観は随分古くなってしまったが、内側まで古いままではいけない。定期的にしっかりメンテナンスをして、時には大幅な修繕工事をして、私自身はもちろん、身近な人たちにとっても「心地のいい人」でありたいと思っている。

ナンバーワンにはなれないかもしれないけれど、誰もがオンリーワンであることを忘れずに。

今日も世界はランキングで溢れている。


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