リモート下では、二回乾杯しよう。
当方、お茶屋だし、最近は日本茶カクテルの記事ばっか投稿してますが、此度は純粋にアルカホールと乾杯について。
2018年のちょうど今頃、私はドイツのドナウ川流域のオールドタウンで、カフェ店員として働く機会に恵まれた。
と言っても自発的なものではなく、ドイツの公共放送の番組で異国間の人々を互いの職に就かせるという、言わばウルルン的ジャーニー番組に出演することになったためだった。
ドナウ川流域のそのカフェは観光スポットのカフェ兼宿泊施設として有名で、ドイツのカフェに対して日本のお茶ということで、等価交換がなされたのだ。
ドバイ経由でドイツのバイエルンはミュンヘンへ。
初めての異国の雰囲気に負けじと、『マトリックス』のモーフィアスのように後ろで腕を組みながら、街路を闊歩した。
しかしながら、ミュンヘンの城か大聖堂かと見まがうほどの市庁舎の前では、完全にアジアからの一観光客であったことは間違いない。
やはり少しお茶の話もしておこう。
ミュンヘンにはダルマイヤーという、コーヒーと紅茶の専門店の本店がある。
そこには緑茶コーナーと抹茶の棚があった。
ちらりと入った別のスーパーでも、缶入りの緑茶飲料が存在した。
お茶は以上。
まずはミュンヘンで夕食とともにビールを飲む。
恥ずかしながら、この時のビールの味はよく覚えていない。一杯だけだったが、日本のビールの一杯よりも酔ったことだけは覚えている。
帰り際、写真を撮っていたら前から体格の良い兄ちゃんが歩いてきた。
英語で話しかけられ、私は中学英語がせいぜい、隣には英語が話せる旅のお供がいたのだが、そのお供も酔っていたのか「ドイツ語でした?」と逆に聞かれてしまった。
「いや、英語で『俺をもっとはっきり撮らないのかい?』って言ってたよ。トイレに行く途中だったみたいだ」
と返したのだが、不思議なことに、彼が英語で何と話していたのかは覚えていない。
このような意思の疎通が、その後ドイツでは幾度となく起こる。
特に、それが起こるのはいつも乾杯の後だった。
ドナウ川近郊のオールドタウンは写真の通りだ。
いかにも西洋、ファンタジーといった趣で、「『進撃の巨人』っぽいなー、あそこなら立体起動使えるなー」とか思っていた。
夜になると、『メタルギアソリッド4』の尾行ミッション時のステージの雰囲気になったので、背後からそれっぽく動画を撮ってもらったりもした。写真ではまだちょっと明るいが。
この時に動画を撮ってもらった現地の19歳ドイツ人の青年とは、小島監督の話で盛り上がった。
『デス・ストランディング』絶対やろうぜ!とか話していた。
慣れないドイツ語を話しながらカフェで働いては、毎晩ビールを頂いた。
勿論カフェはコーヒーがメインだったのだが、コーヒーに追いつくぐらいの勢いでビールの注文も多かった。
流石に日中は多すぎる朝食に腹を壊しながらもビールは飲まなかったのだが、カフェの旦那さんは常連のお客さんと一緒に席に座ってビールを飲んでいた。
カフェの標語。
確か「コーヒーは昨夜あなたがどこにいたかなんて(奥さんと違って)聞きません。コーヒーはあなたのことをわかっています」的な意味。
観光にも勤しんだ。
自分はあまり観光というものが好きではないのだが、この時はノリノリだった。リベレーションホールという名所では全然違うのだが、『天使と悪魔』の雰囲気を感じて興奮していた。いかに自分がヨーロッパの美術や文化に俄かなのかという証左だ。
必死で双眼鏡も覗きこんだ。
さて、ようやく本題の乾杯だ。
日本ではグラスの上を当てるが、ドイツでは「プロスト」と言ってグラスの下を当てる。
カフェの旦那さんは娘さんもいる前で「男女と同じだよ!」と言っていた。
オールドタウンでは日本と同じく英語が普及していなかったので、会話はドイツ語だった。
ドイツ語と日本語、英語の話者もいたのだが、飲んでいると不思議と、お互い意思疎通ができるようになってくる。
「意外と英語ができるんですね」「ドイツ語の習得早いですね」と言われたが、「酔えばね」と返すとウケた。アジア人には酔拳と「Don't think, feel」の精神が流れているのだ。
休みの日には昼間から当然のようにビールを飲む。
盛り上がってくると、現地はオクトーバーフェストという祭りのような時期もあって、なんかよくわからん電車に連結させられたりもする。
写真は私ではないが、前から三番目の人はあんまり吸うとよろしくないものを吸っていたので、テンションが高かった。
さて、このように、アルカホールの乾杯というのは、日本でも潤滑油であると就活生よろしく言われるように、人と人とのギアを噛み合わせてくれる。
そして私の場合、言語の壁を取り払ってくれる役目も果たしてくれた。
思うに、左脳の働きが弱められて右脳で動くようになるからだと思う。言語を考えるのをやめ、意思疎通の感性がより働くようになるのだ。
そしてそのための乾杯、プロストは、物理的に距離を詰めグラスとグラスを近づけたり打ちつけることで、握手のような効果を発揮する。
また、その後に喜びの一杯を勢いづかせて、多量のアルコール摂取を促すという効果もある。
当然、これらの行為はその場にいる者たちの間で同時に行われるので、酒というミュージシャンを介したライブ会場に、その場は一変する。
乾杯は、ただの飲む前の儀礼ではない。
大気圏を突破して果ては太陽系からサヨナラせんとするロケットの、発射シークエンスと等しいものなのだ。
昨今のコロナ禍での乾杯はどうだろう。リモートでグラスを打ちつけ合うことはなく、物理的に距離は詰められない。
だが、それでも意味はある。少なくとも、喜びの一杯は勢いづく。
そして、良い感じになってきたらもう一回乾杯しよう。
その頃には、物理的な距離やグラスの打ちつけ合いなどどうでもよくなっているのだ。
以上、無理矢理まとめますがリモート下では最初と、良い感じになってきたらもう一回の二回乾杯しようという提言でした。
支離滅裂ですが、しらふで書きました。
ドイツどこ行った。