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茶器の館 粤東磁廠 "コーラル・クレスト"
香港駐妻が足しげく通う秘密の場所があるとかないとか
先日「駐妻なりたい」ってポストがXで炎上しておりました。正直言っちゃうと自分もなりたかったクチなので、あーわかるわあ、別に現地で自分がハードに働きたいわけじゃないんだよ…と横目でチラチラ。とりあえず商社マンの友達作るのをすすめるよ。私はなれなかったけど!
ただ、絶賛駐妻中の友人たちや海外駐在中の男友達の奥様、同居人の元カノを見るに、マジで配属ガチャですね。周りは中国南部や東南アジア駐在が多いため、庭にタイコブラがこんにちはしても耐えられる胆力は必須だなと思いました。
蓋を開けたらブラジルでしたって先輩もいたので、アナコンダ耐性もあった方が望ましいでしょう。まあ、そのためだけに糟糠の彼氏を捨てるのもちょっとな(件の元ポストは駐妻になりたいが駐在可能性ゼロの彼氏と別れるべきか、みたいな感じだった)。
さて、駐妻ワナビ―の脳内希望配属地筆頭と言えば香港かシンガポールですが(たぶんね)、そんな花形都市・香港にとーーーーっても駐在マダムから人気の磁器工房があるというのを聞いて5年くらい前に行ってまいりました。
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その名も粤東磁廠。
なんで人気かというと、この工房はとあるラグジュアリーホテルに食器を卸していたことがあり、そのホテルで使われていたのと同じ柄のものが手に入るからだそう。
磁器の山、山、山
とはいえ私はあまのじゃく。「みんなが欲しがる柄よりも、せっかく手描きの職人さんがいろいろ作ってるんだしちょっと変わった掘り出しものを探してやるぜへっへっへ」と、下心に胸を膨らませて雑居ビルのエレベーターを降り、廊下の奥へと向かいました。
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…いや、かわいいな旧ペニンシュラ柄。
そう、香港半島酒店つまりペニンシュラ香港がかつてこの工房にオーダーしてた柄のものがたくさん!実際に見てみると、手描きで何とも良い味があります。こういう濃淡大好き。
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アイテム数もさることながら、同じ柄でも全く形の違うカップやポットがいっぱい。最終的にちょっと小ぶりの釣り鐘型のポットに扇型のお皿、デミカップを連れて帰りました。あとはレンゲとか蓋碗とかいろいろ。
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さらに奥の方では、絵付けをしている職人さんの周りにみっちり華やかな模様を描きこんだ磁器が山積みになっています。広州から始まった「廣彩」というものだそうです。
とても素敵な空間だったのですが、邪魔にならないよう写真は撮らなかったので興味がある方はこちらの香港ナビさんの記事をどうぞ…。
磁器の歴史を象徴するようなパターン
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お店のおばちゃんたちの協力のもと新聞でぐるぐる巻きにしたうえで大事に大事に機内持ち込みで持って帰り、最初のティータイムはそれはそれはひゃっほーイェイ!なひととき🙌ポットは小ぶりながら使い勝手がよく、何よりも持ち手と口が優美です。
手持ちのなかでも屈指のお気に入りゆえ、ずっとこの柄の出来た経緯や正式名称を知りたかったのですが、今回改めて調べてみてやっと判明しました。
この柄の正式名称は「マックリホース総督夫人柄」、赤色のシリーズ名は「コーラル・クレスト」とのこと。
もともとは「中国の昔のデザインを青で描いてほしい」という当時の香港総督夫人からの依頼で1975年に生み出され、2000年代に入ってからペニンシュラから同柄の赤色「コーラル・クレスト」の注文が入ったそうです。
そっか、これも青がオリジナルだったのか…!「青花」と呼ばれる白地に青の磁器は元代の中国で生まれ、のちに日本の有田でも写しが盛んに作られます。当時のコバルト顔料はイランやイラク産だったようで、そのエリアの装飾に影響されたとも言われます。
それらの中国磁器や日本磁器はヨーロッパに渡り王侯貴族に愛され、のちにマイセンのブルーオニオン、ロイヤルコペンハーゲンのブルーフル―テッドなど欧州の名窯を代表する「白×青」のパターンが誕生しました。
その青花を英国人の総督夫人がアジアに再オーダーし、さらに現地ホテルの注文で色違いが生み出され、日本人に愛される…まさに、お茶と磁器の歴史を象徴するような逸品ではないですか。
次回はじっくり、オリジナルの青の「マックリホース総督夫人柄」を見てみたいと思います。…買っちゃうんだろうな、やっぱ。
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なお、かように愛されてきたMade in Hong kongの手仕事を守るべく、粤東磁廠さんはワークショップなどいろいろな試みをされているそうです。日本の伝統工芸品も職人さんが減ってきているので、身につまされる思いです。
ぜひ、インスタグラムとこちらの記事もご覧になってみてください(ブラウザの翻訳でもけっこう読めますよ!)。
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