007「みつるとみちこ」移り住んだのは京都
みつるは、汽車に乗って、京都を離れた。
京都駅では、ちとせや、多くの友達に見送られた。
みよの姿はなかった。まあ、しょうがない。
そして、3時間もの長旅を経て、現在の京都府F市に着いた。
駅では、勝四郎が迎えに来ていた。
駅から出てすぐに、勝四郎はみつるを車に乗せた。
長旅で疲れているのに、どこに行くの。
尋ねても、勝四郎は黙ったままだった。
車は、橋を渡って、河川敷にある街に着いた。
みつるは街の光景をみてびっくりした。
「ここは、京都じゃないの!!!」
街の光景は、祇園の置屋のそれと同じだったのである。
この時代、京都の祇園と同じ街並みが、全国各地に作られていた。
祇園で修業した芸子が数多く、地方に移り住んで、活動をしていた。
この山陰の田舎町でも、京都から来た芸子が、祇園と同じ活動をしていたのである。
みつるは、居場所を変えたにもかかわらず、祇園と同じ街で働き、若い人に三味線を教えて、夜になればお座敷で三味線を弾いた。
生活パターンが変わらないことが、みつるにとってはとてもありがたかった。
この地に来てよかったのかもしれない。みつるは、そう思った。
住まいは、勝四郎が用意してくれた。勝四郎は週1回、みつるの住まいにやってきた。
やがて、勝四郎とみつるの間に、子供が生まれる。女の子であった。
(この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。)
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