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ウイスキーと埴輪と、雨上がりの道

月曜日が祝日だったため、うちの店は日曜日と合わせて連休。

普通なら一泊で旅をするところだが、今回は日曜日の夜にお祝いがあった。

嫁さんの実家は自転車のパーツを作っている工場を経営していて、社長だった義父が引退をして、次の世代(私からすると義理の妹夫婦)に譲ったのをお祝いする会だ。

義父がウイスキーのソーダ割を自宅でよく飲んでいるので、何か二本プレゼントに買ってきて欲しいと嫁さんに頼まれ、自転車で買いに行くことにした。

義父は質実剛健な方で、自分の趣味に対しては、ほとんど贅沢をしない。飲む酒も安いものばかりだ。

ウイスキー、見た目からして豪華なものをプレゼントしてもきっと喜ばないだろうし、スーパーで売っているちょっと高いウイスキーを買うのも、気が引ける。

こういう方なら、ちゃんと老舗のデパートで包んでもらったもので、本当は良いやつだけど、ラベルは華やかすぎず、シックすぎずのものを買おう、と家を出た。

小雨の中、浅草でいつもの一人火鍋を食べて、まず日本橋の三越に向かう。

地下に降りていくと隅に酒売り場があった。

ウイスキーの売り場は狭く、半分は外国製のもの。

日本の人気のウイスキーは一人一本限定のものもあった。

この中で見つけるのは難しいが、買うならこの二本と決めて、一旦外に出た。

天気は回復傾向。

とりあえず、もう少し自転車で走ってから買って帰りたい。

今日は、行ってみたいところがあった。

國學院大学博物館だ。

皇居方面からだと渋谷のちょっと手前。

100分de名著の日本の名著の番組の最後に、よくこの博物館の名前を見かける。

行くことにした。

日本橋から皇居の南を通って六本木通りに入る。

国会議事堂から日本の省庁の建物郡の中を走り、赤坂、六本木、南麻布と来て、右手に青山学院があるところを左手に曲がって軽く坂を登ると、國學院大学博物館はあった。

その向かい側を見て驚いた。

姉が中学高校と通っていた学校だった。

「あ~、文化祭に母親と一緒に行ったのを思いだすなぁ」

セーラー服を着た女性しかいない空間、というのが衝撃的で、その記憶が蘇ってきた。

それにしても変わらないなぁ。

さぁ、博物館だ。

着いた 雨上がり
入場無料で感無量

企画展は「神輿」だ。

昔は、神様というのは鎮座しているもので移動するものではなかった。

しかし、遷都や天災による神社の移動などで、御神体は移動できるという考えが生まれ、それが今のみこしを担いで練り歩く祭に繋がっていったという。

私は実はお祭りが苦手だ。

みんなが一緒になって何かをやる、と言うのは大体息苦しくなる。

今年は地元の本祭りで、町会ごとに温度差はあるが、多少なりとも賑やかになるだろう。

この企画展では、祭りがもたらすさまざまな地域への効果も検証されていた。

「それは分かるんだけど、地元の祭り、何かが、ずれてないかなあ」と、その何かが見当たらないまま、企画展を見終わり、常設展に行った。

考古学をやる人なら、一度は行くのだろうか。

発掘された膨大な資料が展示されていた。

國學院大学って、コンセプトがはっきりしていて良い大学だなぁ。

写真を撮ったのはこんな二点だけで、スミマセン

昔も動物は可愛く思ってたんですね
建物をバックに
シェイクスピアを演じる埴輪

折口信夫の、箱根の別荘を再現した空間(100分de名著にも出てきた)もあって、それが自分にとってのクライマックス。

十分堪能して外に出ると、青空が見えてきた。

明治通りに出て、新宿の高島屋に向かう。

何度か日本酒を買いに行ったことがある。

ウイスキーの売り場に行くと…

うーん、三越と品揃えは多少似ているけど、一層販売面積が狭く、義父が喜ぶような雰囲気のものが少ないな、と諦めてまた、日本橋に向かった。

甲州街道を皇居へ。

途中、偉い人が乗っていそうなプレジデントと並行して走った。ひょっとして皇族だろうか。

ナンバープレートが1993。

皇族にとってどんな年か、いま調べたら何と、当時の皇太子、いまの天皇が小和田雅子さんと、結婚した年…

ひょっとして…

まあ、良いや。

ぶつけたり、ぶつけられたりしなくて良かった。

結局、三越に戻り、最初に考えた2本を買って家に戻る。

無事にお祝いも終わる。

普段一人で飲んでいるので、大勢で嫁さんの実家の人達と飲む時間と空間は、色んなことを考えさせられた。

家に帰る。

ちょっと飲み直したい。

近所の、芸大卒の人がやっている居酒屋へ。

飲んでいると、以前はよく店にいた、この居酒屋兼現代アートギャラリー共同創設者の人が入ってきた。

久しぶりだ。

「2年ぐらい会ってないね~」と言ったら、彼はよく私を見かけてくれているらしく、最近もチェーホフの「かもめ」の音読の時に、その様子をしばらく見ていたそうだ。

音読会場と同じ建物に住んでいて、ふらりと覗いたという。

「上手でしたよ、あと数回練習したら完璧ですよ、いまからでも俳優になれるんじゃないですか」

彼は藝大を受験する人のための先生をやっていて、そういう人に褒められて嬉しかった。

いつもと違って先生の口調だった。

一曲の歌謡曲を覚えるのに2ヶ月かかる人間だからそれは無理にしても、「音読」という人生の楽しみが広がった気がする。

それでは、良い梅雨の後半を。