國破在山河
今日は、高2の息子が自分で選んだ新しい塾の説明を聞きに行くので、一緒に行った。
彼が最近嫁さんのお父さんからもらった、スポーツ自転車の前輪のタイヤを交換する練習を、その直前にすることにした。
自分でやるのは簡単だが、息子に教えるのはかなり難しかった。
まず自分でやってから、息子にやらせるべきだった。
塾に行くのに自転車で三十分かかるのに、その三十分前の時点で、慣れない強引な作業でチューブに穴を開けていたことに気づく。
指導不足の自分を恥じながら「今日は時間がないから俺がやる」と言うと、息子は塾に行く服装ではなかったので、着替えてくるという。
その合間にチューブを変えるが、新しい事実に気づく。
自転車を譲り受けた時に、備品としてもらったチューブより、新しくつけるタイヤの太さのサイズがワンサイズ太い。
「あれっ、こういうのって、空気を入れすぎると爆発するんだっけ?」と頭をよぎったが、時間がない。
余り空気を入れすぎないことが大事かと、程々に入れて一応完成させると、息子も戻ってきてすぐに出発。
家から北に荒川土手を目指し、そこからひたすら北千住を目指す。
いつの間にこんなに速くなったんだと思うスピードで彼が先導し、それを風よけについて行くのが精一杯だった。
自分は普段一人乗りが好きなので、タラタラ走っていたが、たまには、こうやって走るのも悪いもんじゃないなぁ。
待ち合わせ時間ギリギリで塾に着く。
担当の人と、私達親子で席につく。
話が始まる。
息子が高校に入ってからの成績を私や嫁さんは知らない。
本人に任せている。
息子は、その塾へ説明の希望を連絡した時に、今の成績を伝えていたらしく、塾側の人と話をしている。
どんどん、成績が落ちていたのを知った。
塾の人は、いくつかの質問で、どのへんが問題なのかを理解したようだ。
その塾の一つの特徴として、毎回勉強した後に、何を学んだかを先生に伝えるらしく、「自分でやるだけなら簡単ですが、人に伝えるのは難しいですからね」と説明で言われた。
そう、まさにそう、今日息子にタイヤ交換を教えた時の自分がそう。
見られていたのかと思い、穴があったら入りたかった。
俺もこの塾に入って出直そうかなあ…
息子が希望する大学と、今の彼の実力が雲泥の差で、これくらい塾で授業単位を受けないと到達できない、と言われた。
自分は、息子が大学卒かどうかは余り気にしないので心の中で「なんでこんな人格形成に大事な時期を勉強に費やさなきゃいけないんだ!」と絶叫しそうになったが、息子はその事実を言ってくれる人を待っていたかのように、受け入れていた。
昔で言う通過儀礼が、彼らの受験なのか。
説明が終わり、また荒川土手を親子で鮭のように遡り、家に向かう。息子に引きずられるように、風よけになってもらい、後ろから走る。
息子は、学費を気にしていた。
「お金なんてね、自分のお金がこの世にあると思うから足りないんだよ、この世のお金は全部自分のものだと思えば、勝手にやってくるんだよ(笑)」
と言いたかったが、常識と風にかき消されそうなのでやめた。
息子よりも圧倒的に頭が良くても、行きたい大学に行けない人がいっぱいいる。
その人の分まで、程々のスペックであっても勉強して、学んだことを、世の中に還元したいと思える人間になれば、お金なんて、いつか誰かに返せるだろう。
無事に帰宅。息子の自転車のタイヤが爆発しなかったことを確認して、いまサイゼリヤで、早い時間から酔っ払ってしまった。息子に離されないように、気合を入れて速く走ったから酔いも速い…
もう少しで、赤勝て白勝て、世界のラグビー。
人間死んだら、ノーサイド。
だからみんな大丈夫。
城春草木深