火時計
2023/12/24
「調子に乗ってホールケーキ買っちゃったけど、二人で食べきれるかなあ」
「……」
「まあなんとかなるっしょ。ねえ、電気消してよ」
「……うん」
「よし、じゃあ火つけまーす」
「……あの」
「なに」
「せっかくでっかいホールケーキ買ってきて、珈琲も淹れて、ろうそくも用意して、準備してくれたところ悪いんだけどさ」
「なんだよ」
「さっきカップ麺食べたからあんま食えそうにない」
「は?」
「いやまじでごめん、僕たち金ないし、ケーキ買ってくるっていっても小さいやつだろうと思ってて、そんで、小腹がすいて」
「あーまじか。そうか。そうか。サプライズが裏目に出たか。どおりであんま喜ばねえと思った」
「すまん。もうちょっとだけ時間をおかせてくれ。そうしたら食べられそうだから」
「もう火つけちゃったじゃん早く言えよ。いやあ、うーん、私は腹が減ってんだよな」
「まじで、まじでごめん」
「よし、わかった。このろうそくの火が消えるまで待ってやる。消えたら食うぞ」
「ありがてえ」
「……」
「…………」
「……………………」
「……………………………………」
「…………………………………………………………」
「……あっ、消えた」
「よし、電気つけるぞ」
「……あちゃあ」
「どうした?」
「ケーキにろうが」
「……あちゃあ」
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