銃口を向ける
2023/12/23
さっきまで気持ちよく晴れていたのに、急に分厚い雲が空を覆った。しかし家に傘を取りに帰っていたら乗らなきゃいけない電車を逃してしまいそうで、仕方なくこのまま待ち合わせ場所に向かうことにした。間に合うギリギリの時間に出たことを後悔する。
黒い空は今にも雨を降らしそうで、銃口を突きつけられているような不快感を覚えた。もっとも実際に銃口を突きつけられた経験などないが。
しばらく電車に揺られ、目的地に着いて時計を見ると、約束の時間まであと数分猶予があった。空はまだ曇っている。不快感も相変わらずだ。僕は近くのコンビニでビニール傘を購入した。傘の先を空に向ける。
どうだ空。ほら雨を降らせてみろよ。銃口を向けているのはもうお前だけじゃない。僕には傘がある。さっきまでの不快感は消え去り、今度は僕と空との間に、緊張感が走った。
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