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ドライティアーズ

2023/12/10

「痒いところはありませんか?」
「大丈夫です」
 そんな簡単なやり取りをしているうちに、シャンプーが終わった。僕らは元いた席に戻る。彼はドライヤーを取り出して、コンセントに繋いだ。僕の髪を乾かし始める。
 右手でドライヤーを細かく振り、左手で髪の毛をわしゃわしゃとする。それがなんだか心地よくて、優しく撫でられているような気持ちになる。彼が何か言っているが、ドライヤーの音で聞こえない。ちょうどいい。今は何も聞きたくない気分だ。ただ撫でられていたかった。
 ゆっくり目を閉じると、涙が頬を伝った。いつの間にか泣いていたんだ。僕は深呼吸をして涙をこらえようと試みるが、なぜだかあふれて止まらない。諦めよう。僕は、ドライヤーが涙を乾かしてくれるのを待った。

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