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ブリーチ

2024/03/25

 君に染まりたかった。でも僕は透明じゃなかった。君の鮮やかな色は僕の淡い色と混ざると汚くなる。汚してしまうんだ。一緒にはいられない。
 吐き気と耳鳴り。布団を被って膝を抱える。脳にこびりついた君の姿と、声と、香りと。忘れたいのに忘れたくない。全て抱きしめて沈んでしまいたい。固く目を瞑って、眠ろうとする。頭がクラクラする。
 ああ、君のものにしてほしかった。君が離さなければ僕は気づかなかった。簡単に染まれた。僕らは混ざり合えない。でも混ざった気ではいられた。ずっとそのままでいたかった。
 漂白しようと思う。君のいた名残りと僕自身を、真っ白にしようと思う。色褪せて忘れてしまう前に、自ら消して悲しくなろうと思う。
 選択肢なんて無い。何かを待つしかない。暗闇の中、変に目が冴えた。

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