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自分のイラストに「AI疑惑」を突きつけられたら
AIイラスト・AI警察の話をもう少し続ける。
直近のエントリでも書いたように、イラストの制作者に対して赤の他人が「AIで描きましたね!」と絡んでいく「AI警察案件」は今後どんどん増えていくだろう。
Twitterなどを観測していると既にそういう懸念を抱いている人たちは居て、早くも「制作過程を録画しておき、いざとなったらタイムラプスを見せて潔白を証明しよう」といったアイデアが飛び出している。
こうした声はちょくちょく見かけるのだ。
いやいやちょっと待ってよと思った。作家がそういう自衛手段を講じるというのは、まあいい。それは自由におやりになればよろしい。
ただ、俺はそれが当たり前のような流れにはなってほしくない。そもそも何で作家側がそんな労力(コスト)を払わにゃならんのだ。
そういうケースでは立証の責任は常に関係や因果を主張する側のみに存在するはずで、疑いをかけられた方は基本的に何もしなくて良いのだ。
言う方はノーコストで気が楽かもしれないが作家は常に多大なコスト負担を強いられるなんて馬鹿げている。
「あ!あなたAI使いましたね!」などと絡んでくる相手なんか基本的に無視していれば良いと思うが、それでも誠実に相手するなら
・「使っていません」
・「言いたくありません」「秘密です」
あたりの返答で充分だと思う。明確に法令や内規に違反している何かがあるならともかく、そうでないなら必要以上の釈明をしても良い事はあまり無いだろう。
一方、(部分的・全体的問わず)AIで描いただろうと主張する人物の場合は次の二点をハッキリさせる必要がある。このぐらいの事は義務として果たしてもらわなくて困る。
① その作品がAIで生成されていることの証明
② その証明が出来たとして、具体的にどういった法令や内規に反しているのか。または誰の権利を侵害しているのか
これを両方満たせる事例はかなり限られてくると思うが、そうしたことをまったく考えずに気軽にAI疑惑を突きつける人物がしばらくは沢山現れるだろう。こういう手合いはタイムラプスを突きつけようが突きつけまいが、責任を取らずに逃げるケースが殆どだろう。まともに相手にしても徒労に終わるだけだ。
作家側が自衛手段を講じるのも結構だが、まずはこういった軽薄で短慮な行為こそを否定し、界隈全体で啓蒙しておくべきだと俺は思う。
「AIを使っていない事の証拠を見せる」ということに力を注ぐよりも、「AIを使ってようが使って無かろうがあなたに答える義務はない」という空気作りの方が大事な気がしている。
そもそも作家に対して「どういった画材を使いましたか?」だのあれこれ詮索するのは失礼にあたるケースも少なくない。
前のエントリでも書いたが俺はイラスト制作においてAIの力を借りる事はパース定規のような治具や塗りつぶしツールを使う事と同じだと思っている。デジタルでのお絵描きにおいてそうした時短ツールを使うことを表明する人はあんまり居ないし、特に反則視されているわけでもない。そう考えるとAIだけ積極的に「これ使いました」と表明する必要性も無いと考えている。
言いたかないが「タイムラプスで潔白を証明しよう」と考えている作家さんもまた、「AIを使うのは悪」という前提に立っている気はしないでもない。もしそうなら、先が思いやられる。
法令や内規に明確に反していない限りは、AIを使っていることを表明しても良いし、AIを使っていることを隠しても良いのだ。言いたくなければ正々堂々と隠そう。
ただし、AIを使っているのに「AIを使っていない」と明示的に書くのはあんまりよろしくない。曲線ツールを使っているのに「全部フリーハンドで描きました」と書くのと同じように、それは単純に嘘をついていることになるからだ。