dickというタブー語
私は映画をよく見に行くのですが、字幕からはイマイチ伝わらない言葉の面白さを感じて、思わず笑ってしまったりします。でも周りは何の反応もないことが多いです。
この間、映画『ラスト・クリスマス』を見てきました。
そこに出てきた一家が旧ユーゴスラヴィアからの移民で、一家の母親は英語の俗語などが理解できないという役回りでした。
そのような状況で、旧ユーゴスラヴィアの表現が出てきて、意味を説明するのにそれを英語に直訳して"I will nail you to my dick."(お前を俺のちんぽに釘付けするぞ)と言っている場面が出てきました。
これは英語の"Fuck you"「くそったれ」に相当するものなのですが、母親がdick(男性器を表すスラング)の意味を理解できなかったので、周りの人がpenis(ペニス)のことだと説明するところがあって...
たまたま隣人の名前がDickで、その母親がその名前がpenisに由来するのかどうか自問して、dickとpenisという語を連発する場面がありました。日本語だと「ちんぽっておちんちんのことなの?」みたいなことを連発しているような感じです。
私はおかしくてクスクス笑ってたけど、周りの人はわかってなかったみたい。
以前、映画『チャイルド・プレイ』(2019年)を見たときも、同じようなことがあって...
この映画では、アンディーが人形のチャッキーを部屋に連れてきた場面で以下の会話が交わされます。
ANDY: This is my room.(これが僕の部屋だ)
(PURRING) ネコの(満足そうに)ゴロゴロとのどを鳴らす音
And that's Mickey Rooney. [ネコを指して](そいつはミッキー・ルーニーだ)
He's a total dick, so just don't touch him.(あいつは完全なチンカス野郎だから触っちゃだめだよ)
CHUCKY: Total dick. (完全なチンカス野郎)
ANDY: Whoa. You're allowed to say that? Cool.(うわぁ、そんなことも言っていいようにできてるの。すげえや)
ここのdickは男性器のスラングからさらに男性を罵る言葉(日本語だと「チンカス野郎」あたりか...)として派生的に用いられたものです。dickhead(亀頭)も同じ意味で使われます。
このdickのような言葉は、日本語の「ちんぽ」「チンカス」を公衆の面前で発すると非常識な人だと思われるのと同様、人前では口にしてはいけない言葉なのです。
それを、子どもにプレゼントされるような人形であるチャッキーが、アンディーが言ったのを真似て言うところに、この部分の面白みがあるのですが、やはりくすくす笑っていたのは私だけでした。
なんでdickを一家の母親(上品な年配の女性)や、プレゼント用の人形が言うとおかしいのかは、「ちんぽ」「チンカス」という単語を同じような人や物が言うと、世間の常識とずれていて滑稽でおかしいのと同様です。
「夫のちんぽが入らない」というタイトルの小説が日本でウケたのも、卑語がタイトルに入っていて、それが滑稽さをもちキャッチーだったからでしょう。
このような言葉の感覚、そしてこのような場面を見て瞬時に笑える感覚というのを外国語に関して身につけるのは、やはりなかなか難しいのかもと思ったのでした。