自己紹介への抵抗
先日、自己紹介的な文書を投稿したが、
あれを書く前に書こうとしていたことを述べておく。
ある意味こういった書き物の方が私にとっては
“より自己紹介らしい”と言えるかもしれない。
これを読んで、考えすぎでは?と思う人もあるかもしれないが、
もし思い当たることや気になることがあるのだとしたら、
考え事の種にしてもらえるといいかもしれない。
○“いわゆる自己紹介”があまり好きではない
自己紹介と言われると例えば、名前に始まって、年齢、職業…と続き、
こんなこと思っています、考えていますなどと、述べるのだろう、か。
経歴、好きなもの、趣味、などなどを付け加えてもいいかもしれない。
その自己紹介が無意味だとは思わないし、
それを知ることが自己紹介だろうと考える人もあるだろう。
それをきっかけにして、人や話題を選ぶようにしながら仲良くなっていく
という様子も一般的な状況として想像することは私にも難しくはない。
だが、例えば私は私自身について、
そんなことを述べて何の意味があるのだろうと思ってしまう。
言い方を変えれば、
「何を伝えれば私を知ってもらえるのかがわからない。」
もう少し先まで言うならば、
「私を知ってもらうのは端的に何かを伝えるのでは難しい。」
とも感じてしまう。
○人をカテゴリに放り込む作業になっていないか
私の年齢や、職業や、趣味やらを述べてみても
こういった端的な情報は相手の価値感や想像力などに任せて
自分を知ってもらうことしかできない。
全ての人がそうだとは言わないが、
その時、私の言葉はそれぞれの人の中にある、
何らかの大きなカテゴリへ放り込まれたり、
あるいは名状しがたいあやふやなカテゴリへ放り込まれたりする
のではないだろうか。
そして、まあまあ聞いた情報からして、こんな感じの人なのかな?と
人によってはイメージをつくり出すかもしれない。
この行為そのものは私を知ろうと考えてくれているし、
むしろそれができないとしたら、
自分の中にカテゴリを設けている意味を薄めていることにもなる。
大きな枠組みをつくっておくことは、考え事をしやすくする。
しかし、それは必ずしも私自身を捉えているとは限らない。
この話は自己紹介に限らずその人自身の物の捉え方、
知り方にも通じるので、本当はもっと大きい話なのだが、
今回は自己紹介の話に限定する。
○端的な情報を扱うだけでは手応えがない
このカテゴリに放り込む作業をする時、
私からすれば、その人のことを知ったとは全く思えない。
逆にもしその人のことを知ることができたと思えてしまったら、
そこで思考停止してしまう人がいるようにも思える。
そこから交流が発展するような状況があったり、
興味を持って接したくなるようなカテゴリがあったりすれば
話は変わることもあるだろうが、必ずしもそうではない。
ネット上の付き合いとリアルの付き合いとは性質が少し異なるが
自分が興味を持たない相手に自ら関わっていく必要があるような状況は、
ネット上の方がおそらく少ないだろう。
(嫌な相手が勝手に絡んでくることは逆に多いのかもしれない。)
つまり、それぞれの人にとって印象的なことがなければ
ネット上で出会った誰かは
広いネットの海の中に沈みゆくしかないことになる。
その人と次出会うのは、いつだろうか。
○自己紹介は常にされているという認識
もちろん、いきなりその人の全てを精緻に知ることなどできないし、
そんなことは考えていない。
ただ、自己紹介された内容をカテゴリに放り込む作業によって
その人を精緻に知るきっかけになるどころか、
相手を全く見当違いの捉え方をしたまま、
本当のその人との出会いを逃してしまうかもしれない。
リアルでの付き合いであれ、ネット上での付き合いであれ、
この相手はこういう人なのだという認識を固めることを自分はしない。
あの人はこんなことを言っていた、あんなことをしていた、
もちろん忘れてしまうエピソードもたくさんあるだろうけれども、
そういうものをできるだけ蓄積して
その時その時で今目の前にいるその人を捉えるようにしたい
とでも言えばいいのか。
自分が過去に放り込んだカテゴリに頼り、
目の前の相手を見つめることをやめてしまったとしたら、どうなるだろう。
もちろん、どこの誰にでもそんなことをするのは大変だろうし、
それぞれの理由や判断で何らかの区切りは必要になるかもしれない。
書き上げてみると至って普通のことしか書いていない気はするが、
これが私の、“いわゆる自己紹介”への抵抗をする所以である。
私たちの意識はどこまで及んでいるのだろうか。
今まで失ってきた出会いはどれほどあったのだろうか。
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