見出し画像

私、昭和の女なので

絶賛不倫中の友人(未婚で自立した女なので好きにすれば良し)がビールを煽りながら呟いた。

「奥さんには敵わないよなぁ」

この時期になるとあなた、毎年言っているよな。
彼のお誕生日兼バレンタイン。立場上、身につける類のものはプレゼントできないという。洋服から何から何まで、奥さん好みに仕立て上げられた男なんだよな、と感じているらしい。

それは仕方ない、
不倫っつーもんはそういうもんだ。

その男のワイシャツのサイズを把握しているのはその嫁だし。その男が使う、穴のあいた靴下もゴムの緩んだパンツも、洗うのも買い替えるのもその嫁だ。そしてその男の血となり肉となっている温かいご飯を作るのは、その嫁なんだ。

🐦‍⬛

私、昭和の女なので。
外に送り出す夫を仕立てあげるのは妻の役目だと思ってたりする節がある。時代錯誤だろうがなんだろうがしゃーねーし、昭和の女なんだから。

そんな私に夫という人がいたのは数年間だけれども。その間ワイシャツにアイロンをかけ、ほつれたボタンを繕い、毎朝靴を磨き送り出し、温かいご飯を用意して、生活を整えた。

それが幸せだったかどうかはわからないけど。役目だと思ってたから。
それでも、夫婦なんて破綻する。
そんな事は大して大事じゃなかった訳だ。

🐦‍⬛

なんだったか少年犯罪。
事件の犯人の少年のお母様の手記だかドキュメンタリーだったか。

そのお母様は、毎日手の込んだ手作りの食事を用意した。どんなに忙しくても、レトルト食品などを子供に与えなかった。
それが愛だと思っていたけれども、それは間違っていたのかもしれない…レトルト食品をつかってでも、子どもと向き合う時間を作るべきだったと反省しても反省しきれない、取り戻せない時間を悔いていた。

そんなくだりだけが、強烈に印象に残っている。

🕊️

平成令和の時代を生きる昭和の女の私は、
レトルト食品とコンビニを使いながら、随分呑気に気ままに子育てを楽しんできた。「夫」というもの以上に、「子」にはお金も手間も時間も愛情もかけてきたけれど。

これは愛なんだか役目なんだか義務なんだか、そんな事、考えたことすらないけれど。全部ひっくるめて、自分勝手に負った責任みたいなもんで。
その責任をもが楽しかった。

夫婦も親子もパートナーもさ。
こちらが一方的に送りつけた諸々は自分の勝手であって。受け取ってもらえるかはわからない。期待するもんじゃない。受け取ってもらえたなら、そんな幸せなことはないってだけ。

愛とか義務とか役目とか、
そんなもん背負ってもしょーもないって話です。

✴︎トップ画は山手線の品川か大崎だかどこかの駅で見かけたもの。使いたかっただけ。

いいなと思ったら応援しよう!