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2011年3月11日。私に「#ニューノーマルな働き方」が訪れた日
Tokyo Creators' Projectの須崎博紀と申します。12月25日(金)、「ニューノーマルな働き方」というアドベントカレンダーの最終日の投稿でぶつぶつ書かせていただきます。
大げさかもしれませんが、「2020年が、人の意思の力によって、日常が非日常に転じる経験になった」という人がいるのではないかと思います。
2011年3月11日、私の日常が非日常に転じた日
思い出したくない人もいるかもしれませんが、この日は東日本大震災の日です。私は当時アマゾンジャパンのサプライチェーン部門に所属しており、それまでも(そのあとも)、ずーっと24時間365日止まることのないE-Commerceのサプライチェーンをどう実現するかということについて苦心していました。
ところが、その日、地震によって、「すべてのモノの流れを止めろ」ということになったのです。私は当時新設された調達物流をひとりでサポートする立場であったのですが、国内に散らばるアマゾンのフルフィルメントセンターに入るすべての物流を止めるということを真っ先にしなければなりませんでした。
Amazon.comが公表している在庫回転数は36回転、つまり10日で倉庫の商品が総入れ替わりする物量となります。1日に来るトラックの量は、倉庫の10分の1の量が来るわけです。取引各社への連絡だけでなく、輸送中になっている物流業者への連絡もひっきりなしに行いました。
私は、世界で見ると極東のほんのはじっこで物流の入荷の管理を任されているだけにすぎないわけですが、それでも、アマゾンのシアトル本社にあるエグゼクティブはこの極東の歴史的な天災を見過ごさず、すぐにジェフベゾス率いるSチームで集まり、「日本の事業を止めるということ」について、「すべて日本のマネジメントチームに任せる」という共通認識をもったと聞いています。
その後、日本のマネジメントチームは様々なことを議論し、商流物流を動き出すのかについて、作戦を立て直す時間となりました。サプライチェーン部門は、当時稼働の主力になるであろう関西地域のフルフィルメントセンターがあったため、そこにほぼ全員が移転し、War Roomと呼ばれる部屋ににすべての情報があつまるようにして、日々刻々と変わる情報をもとに多くの意思決定をしていきました。
調達物流に責任を持っていた私は、関東のフルフィルメントセンターがすぐにたちなおれないという判断の中で、東京や大阪周辺で倉庫を6つ借りて再度操業レベルを段階に上げていくという方針と計算がでたためすぐに担当をかって出ました。
アマゾンにとって倉庫を借りるという意思決定は、シアトル本社のCFOのApproveが必要です。私が書いた書類は通常、私の上司を通じて、上司が国内の財務チームを経由したうえで、シアトル本社に送られることになるのですが、「時間がないので、自分で送ってみてくれ」ということになり、シアトルのCFOに直接メールしたところ、CFOが5分後に、それをジェフベゾスにそのまま転送し、「以降この案件でいちいちApproveを送ってこないように、Sチームはみなさんのそばにいます」というベゾスの返信とともに、すべての意思決定を国内チームにまかせることを体現してきた返信を受け取ったことを今でもはっきり覚えています。
「立ち止まったことで見えた」マクロな変動
一旦とめた商流と物流を次に動かしはじめるのは、すべて活動のめどがついてから。段階的にあげられるかどうかにも私自身の活動がかかわっている。
もちろん天災がもたらした非日常であったとも思いますが、インフラのようにまで作るべきで止めてはいけないと思っていた活動を、「人の意思の力によって止めた」、「そして、それを次に稼働させるのも人の意思によるもの」という経験をしたのは、あとにも先にもこれだけでした。もちろん私はほんの一部分をサポートしていただけですが、こんな自分にも、この立ち止まった時間(実際は忙しくあらゆる準備をしていたのですが)の意味を、事後的にも考えるようになりました。正確に言えば、記憶は鮮烈にされたのです。
単純には、自分はもちろん自然という驚異の中で生かされているだけなんだということはもちろんのこと、事業が依って立つ業界や経済性について思索するようになりました。それらを無視して自分自身の仕事は成り立たないんだという部分に自覚意識が芽生えました。
私にとって、自らが生かされている場所、産業はどこなのかを意識することがそれまでに全くなかった働き方になり、いまの言葉で言うニューノーマルになったと思います。
オフィスに訪れたマクロな変動(逆らえない)
2020年はオフィスにはひとつの転機になるかもしれません。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは今年初頭に「2年分のデジタル変革」が2ヶ月でやってきたと言ったそうですが、リモートワークで自宅で働くことは、相対的にオフィスで実現していた活動の代替となっており、オフィスの相対的価値が低くなっていることを意味します。稼働率の低さがそれを物語っています。
もうひとつ、オフィス業界には少し前からシェアが起こり始めていました。つまりオフィスにかかる一人当たりのライフサイクルコストを計算できている事業者が利益を載せて、月額で貸す事業の成長です。自社オフィスを築いている企業は、オフィスのライフサイクルコストが、シェアオフィス事業者が利益を載せたライフサイクルコストよりも、高くなってしまう場合、相対価値が低いオフィスを提供していることになります。
今日現在、多くの企業がオフィスを半減する動きになっているのは、そうした経済が働いていることの証拠でもあるのではないかと思います。天災には逆らえないように、上記のような流れは私たちはもう逆行することはできないのではないでしょうか。
最後に。
「ニューノーマルな働き方」というアドベントカレンダーを弊社で企画してみましたが、すごい投稿者の方々の中で、こんなので締めくくって大丈夫かという思いがしております。私たちとしては、12月をある意味で振り返りの時間としていただくべく、企画してみましたが、私個人としても、皆さんのご意見に耳を傾け振り返るとても良い機会となりました。個人的には、ミクロな視点でいつもいそいそと仕事に忙殺される毎日で普段はなにも文句もないのですが、マクロな視点で振り返る時間を取るということは、とっても大切だなと思います。今後ともなにかと企画してまいりますので、またぜひご参加いただければ幸いです。
私たちは2021年も、企業やご担当者様に、効果や品質を理解し、エビデンスベースで意思決定していただけるように、データ活用のサポートをしています(宣伝!)、多くの企業のお役に立てられたらうれしいなと思います。よろしくお願いいたします。