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オフィス≠事務所へ

(Disclaimer:株式会社オカムラのワークデザイン研究所の牧島様によるゲスト投稿になります。働き方について、コンサルタントよりもさらに一歩引いた視点で、まず社会人には必須と教えられる「ホウ・レン・ソウ」の意味ついての結果を共有し、そこからオフィスはどこにいくのかを語ってくださっています。ご一読ください)

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はじめまして。株式会社オカムラの牧島と申します。
オフィス家具メーカーのオカムラのワークデザイン研究所というところで働いています。15日(火)の記事を書いた六車さんとは、同じ部門の同僚になりますが、彼はコンサルタントとしてお客様に向けた活動が多いのに対して、私は実際にお客様と対面する機会は少なく、研究者としての立場で仕事をしています。

「オフィスに行かなくても普通に仕事ができる…」

私が関わるオフィス業界の最近のホットトピックと言えば、なんといってもオフィス不要論です。今回のコロナ禍により、はじめてテレワークを体験した方が多かったと思うのですが、「オフィスに行かなくても普通に仕事ができる…」と感じた方が少なくなかったのだと思います。実際にオフィスの空室率が上がり始めたというニュースも出始めており、事実としてオフィスを廃止・縮小する動きがあるのは確かなようです。オフィスづくりを支援する会社としては、まったく嬉しくない状況ではあるのですが、一方でオフィスはなくならないだろうなという確信に近い思い(願望?)もあり、いずれは時間が「オフィスってやっぱり大事だよね」という答えを導き出してくれることを期待しています。

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オフィスで交わされるコミュニケーションの実態

一方で、常々オフィスのあり方について疑問を感じているところについては、このコロナ禍をきっかけとして変わってくれればと願う点があります。それは、オフィスの存在価値として取り上げられることの多いコミュニケーションの場としての機能です。

ここで、そのように期待する根拠ともなっている、東京大学の稲水先生らと実施したオフィスでのコミュニケーションの調査事例をご紹介します。この調査では、オフィスを隅々までビデオカメラで撮影し、ワーカー間で交わされる会話の回数や時間などをカウントし、さらにアンケ―トによってワーカーの働く環境に対する意識を調査しました。この会話行動と意識調査の結果を突き合わせて検証した結果、会話回数が多い人ほど働く環境に対する不満が大きいという結果がみえてきました…。この結果は、ひとつのオフィスでごく限られたサンプル数での調査結果なのですが、実はこれと同様の傾向は他の多くのオフィスでも見られる現象なのではないかと思っています。オフィスの中で交わされている会話を思い出してみると、上司から部下への進捗確認や指示など、いわゆる「ホウ・レン・ソウ」と呼ばれる“面白くない”事務的な会話が少なくない、と思うからです。

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http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/mmrc/dp/pdf/MMRC539_2020.pdf

オフィス≠事務所へ

オフィスは「事務所」と訳されるのですから、事務的なコミュニケーションを支援する場としての機能していることはある意味で正しいことなのかもしれません。一方で、オフィスはワーカーが集まることによってイノベーションを起こす場所であると言われており、私自身もそのようにオフィスの価値を説明することがあります。そのイノベーションが、「知」と「知」がぶつかりあうことによって生まれるものであるのならば、オフィスで交わされる会話の内容は事務的なものからクリエイティブなものに変わっていく必要があると思います。


今回のコロナ禍は、仕事を進める上で不可欠な事務的なコミュニケーションがオンラインでも可能であることを気づかせてくれました。この気づきを生かし、事務的なコミュニケ―ションはチャットやWEB会議を使って効率的に進め、オフィスはイノベーションが起こるようなプレミアムな場所として位置付けられるかどうかがNew Normalのポイントなのかもしれません。