東洋医学の神(五神と五志)
神も東洋医学独特の概念の一つになります。ただ、国家試験で考えていくと、それほど多くは出題されないので、国家試験であれば、必要最低限をしっかりと抑えておきたいところですね。
神という概念がどうしてできたのかは、想像していくしかないのですが、人や生命、自然は神秘的な物として「神」という言葉で表していきます。
人の身体の中には、たくさんの臓器があり、それぞれが自分の役割を果たしながら、協力しているので、それぞれの臓腑に「神秘的な力」があるとし、「神としての名前」をつけてあります。これが五神です。
腑にも神の名前があった文献を見た気がするのですが、見つからないので、臓の神を中心でまとめていきます。
1.神とは
神とは広義と狭義の概念があります。
広義:生命活動
教義:精神・意識・思惟活動
①広義の意味
広義の神は「生命活動」という、「人が生きている」「人に生命力がある」を表現しているものになります。
身体の中には、気血津液精や臓腑があり、生命が成り立っています。人によっては生命力が弱そうな人、生命力が強そうな人がいて、そういった全般的に外側からみえる力・イメージを「神」として表現します。
これが何の意味を持つかといえば、治りそうな人、元気そうな人は「神」がある。治りにくそう、弱っている人は「神」が少ないと表現することができます。
気でも表現できるのですが、あえて「神」という言葉で表現することで、診察では「神」を見ることが重要で、「神」が弱る原因は気血津液精のどこからきているのかと考えていくことができます。
②狭義の意味
狭義の意味は、精神・意識・思惟活動になります。人は生命活動だけではなく、精神的な活動をするものなので、この精神的な活動や役割を「神」という言葉で表現しています。
思惟という言葉は非常に独特なもので、考えることや感情のもととなる精神的な力と言えるので、精神・意識とほぼ同じ意味になります。
「神」は「神志」「心神」とも呼ばれることもあり、心に強く関係していますが、「五神」という各臓に関係する「神」の総称にもなります。
臓は気血津液精によって活動が成り立ちますが、活動を行わさせる根源的で神秘的な力のことを「神」と呼ぶので、「神」は臓腑や気血津液精に対しての力を持ちます。
体内にあるのが「五神」で、対外に表れてくるものが「五志」になります。「五神」は「髄海(脳)」との関係も密接になります。
2.五神
五神にはそれぞれの機能と、相互に影響しあっている場合があります。まずは、それぞれの役割がこちらです。
五神は「神」によって統率されていきますが、魂と魄、意と志は協調して働いています。
3.五志(七情)
五志は怒・喜・思・憂・恐で、七情は悲・驚が足されます。
4.五神と五志
体内は五神と体外は五志となりますが、体内の五神がしっかりしていることで、体外の五志はしっかりと機能できることになります。外である五志の乱れは、体内の五神の乱れにも関係します。
五志は七情とも関わり、感情に関係していきますが、外に出る感情は身体の中にも影響し、身体の中の乱れは感情にも影響していきます。
5.神と生理物質の関係
神は元神の腑である脳と関係しやすく、脳に十分に栄養が行く必要があります。気は神の形成にも関わり、血・津液・精は神を栄養する働きがあります。
気血津液精に異常が生じると、脳に影響が生じるので、神にも影響が生じていきます。
6.神の病理
神の病理は五神で生じる症状との関わりが強くなります。
生命現象としては、意識がしっかりとして生きている状態は有神(得神)であり、働きが悪くなってしまった状態は、神衰・失神(無神)があります。
神衰は生命力が非常に弱くなってしまった状態で、失神(無神)は意識が不鮮明や意識を失ってしまっている状態になります。
意識が不鮮明になったり、意識を失ったりしていた人が急に元気そうに見える状態は仮神と呼び、危険な状態になります。仮神は国家試験にも何度か出題されています。