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解剖学実習室見学

日時:2020年10月26日(月)
場所:自治医科大 解剖学実習室
参加メンバー:田中大介、長谷川愛、渡部麻衣子
協力:野田泰子(自治医科大学医学部解剖学講座・教授) (敬称略)


報告:長谷川 愛

解剖学講座解剖学部門野田 泰子 (ノダ ヤスコ)教授に1年生秋からのマクロ解剖学実習についてのお話とその実習室見学をさせていただいた。
マクロ解剖学とは、医学生にとって医学教育の根幹と言って良い重要なもので、ここではまずその遺体の扱い方ー態度ーを学ぶことも重要らしく、初日に渡されるプリントにも遺体に対しての丁重な扱いや態度、例えば居眠りなどについても厳しく言及されていた。自治医科大では独自の篤志献体団体『松韻会』から、実習に必要な遺体を提供していただいているそうで、基本的に献体は年配の方が多く、実習開始前日の実習室には25体が緑色の布に包まれ、さらにその上からジップで開けるようになっている半透明の袋に入れられ、それぞれのステンレスの台の上に寝かされていた。この緑色の布の下には裸の遺体があると聞くが、私たちにもそれは開かれることはなかった。そして顔は野田教授により縫われた布製の覆いが更にかけられているという。解剖はまず肌を開くことから始まり、すでに脳を摘出したために短く断髪された頭部で終わるらしい。やはり遺体の顔を見るということは精神的ハードルが高いそうだ。


献体はまず別室にて保管され、さらにホルマリン処置をされる。その施設を見せていただいだが、ホルマリン槽という私たちがイメージするものに漬けられるのではなく、鼠蹊部の太い血管への点滴で内部から体内にめぐらせるのだそうだ。
このホルマリンは発癌性などもあり、遺体の置かれる台の天井部から空気が下に向かって流れ遺体の台の横からそのホルマリンを含む空気は吸入され、実習室に蔓延しないように設計されている。


献体は一年の解剖実習ののち、摘出された臓器は他の遺体と混同しないよう、その台と同じナンバーが記されているステンレスの大小の箱に入れられて、全てまとめて遺族に返されるという。


解剖という行為は人間を物として扱うということに近い場所に位置しており、それ故に扱いに非常に、医者の卵である実習生らの態度に慎重に指導しているように見受けられた。


この施設を見学し、私も自分の死後は献体するのだろうか、という問いに向き合わざるを得なかった。自分の遺体がそれこそ内臓や性器、そして歴史と言える様々な傷や病気の痕も彼らに晒されるということを、ステンレスの台の上に裸で横たわる未来の自分の遺体を想像しつつ考えたが、頭では献体すべきだし、彼らは誠実に扱ってくれている、そして医学への貢献になり、さらに社会へ還元されると理解しているのに、何かが戸惑わせている。もし、顔がない首がない遺体として提供されるのなら、そのハードルは低いのかもしれないと思うと、顔、個人情報と恥の関わりは私にとって重要なんだという発見であった。

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