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《転がる母に苔は生えないvol. 10》雨散歩

幼稚園の送迎をする生活になり、
すごく忙しくなった。
ちょっとの距離なんだけど、
一応身支度整えて、
自転車で往復するのは、
思っていたより
時間がかかる。
そして雨の日は歩いて行く。

ある雨の朝。
歩いて往復、
正直面倒くさいな、と思った。
何を隠そう、私は雨が大嫌いで、
雨の外出ほど憂鬱なものはない。
その点でもバンコク生活は
気に入っていた。
(車移動だから)

その日は予定があったので、
重い腰を上げて準備する私。
軽々と嬉々として準備する娘。
長靴を履いて、レインコートを着て、
傘を持って玄関に立っている。

一歩外に出れば、
そこは彼女には煌めく世界。
水溜まりを見つけてそおっと入ってみたり、
雨に濡れてキラキラする蜘蛛の巣を見つけたり、
走ったり止まったり振り返ったり、
傘を閉じて雨を感じてみたり。
幼稚園までの10分強が
あっという間だった。

あぁ、、、
私はこんな愛おしい時間を
今まで知らなかったんだなぁ。

息子とはこんな風に雨の中を
過ごしたことがない。
娘とはたまに雨の日を散歩したことがあるけど、
バンコクの土砂降りの夕方、
一分でも早く帰りたくて仕方なかった。


ただ雨の中を歩く登園が、
彼女が見つける日常の一コマが
ママー!見てー!と振り返る笑顔が
こんなにも輝くとは知らなかった。

ほわっとした気持ちで
幼稚園でバイバイした。

幼児期をバンコクで過ごした
息子とはできなかったこと。
日本で今、娘とできること。

私はバンコクでの時間を失ったんじゃない。
日本での新しい時間を与えてもらった。

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fumi @ 海外転勤する家族の子どもnote
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