📽️イベントレポート📽️第24回東京フィルメックスプレイベント～国際共同製作プロデューサーズセッション～

2023年12月27日 11:33

まだまだ国際共同製作事例が少ない日本の映画業界。
しかし日本の映画は世界でも受け入れられており、海外へ飛躍する産業として大きなポテンシャルを秘めています。

日本の映画シーンから世界へ発信する作品を輩出するには、海外と共同製作ができるプロデューサーの育成が必要ではないだろうか──そこで、映画業界などコンテンツ分野の起業家を支援しているTCICでは、国際プロデューサーの育成をテーマにしたイベントを東京フィルメックスと開催。国際プロデューサーの皆さまに、国際映画製作のリアルな話をうかがいました。

🔽開催概要

【日時】2023年10月13日（金）18時00分～21時00分
【会場】東京コンテンツインキュベーションセンター（TCIC）
【参加費】無料
【参加対象】下記のいずれかに当てはまる方
・TCIC 入居者、OB で海外展開、映画事業を具体的に考えている方
・国内コンテンツ及び周辺ビジネスで海外展開を具体的に考えている方
・アジア映画に興味のある方
・Talents Tokyo、東京フィルメックスに興味のある映画業界の方々
・映画制作に携わっている方
・フィルムメーカーを志している方々
・今年度の東京フィルメックス、Talents Tokyo 参加者

🔽イベントの詳細はこちら

東京フィルメックスとは

「東京フィルメックス」は、独創的な作品をアジアを中心とした世界から集めた国際映画祭です。
コンペティション部門では新進作家を紹介し、優れた作品を顕彰してバックアップしていきます。また、最先端をいく注目作や、海外の国際映画祭を賑わせた話題作を先駆けて上映します。内外から監督や映画人をお招きして、観客との質疑応答を行うなど、交流の場を設けています。

▼公式ホームページ

タレンツ・トーキョーとは

「タレンツ・トーキョー」は、アジアの映画監督やプロデューサーを対象とした、映画人として世界で活躍するためのノウハウの習得とネットワーク構築を目指す人材育成事業です。「ベルリン国際映画祭」の一環として開催されている「ベルリナーレ・タレンツ」の、海外展開におけるアジア版として毎年東京で実施しており、世界中の映画業界の専門家からの指導や参加者同士の交流、プロジェクト発表の機会を通して、長編企画の発展を支援しています。これまで、修了生たちは各地の国際映画祭で受賞するなど、世界を舞台に活躍するアジアの映画人を多数輩出してきました。

▼公式ホームページ

▼第24回東京フィルメックス・コンペティション　受賞結果

登壇者紹介

プロデューサー / ハラキリフィルムズ合同会社代表 / 株式会社フォギーCEO & 創設
今井　太郎　氏

Spanic Films合同会社　代表プロデューサー
曽我　満寿美　氏

MC：東京フィルメックス　プログラム・ディレクター
神谷　直希　氏

国際プロデューサーとして活動を始めたきっかけ

ープロデューサーをしようと思ったきっかけや国際製作に取り組まれた経緯など教えてください。
曽我さん：
アシスタントプロデューサーで下積みをしてきましたが、疲れ果ててしまったんです。
自分がプロデューサーとして活躍している姿も想像できませんでしたし、どこを目標としてやっていけばよいのかを見失ってしまいました。一度、映画プロデューサー業から離れ、広告代理店などで働いていました。
しかし、海外留学の経験もあり、「海外の監督と映画をつくる」ことをやってみたいという想いは漠然とありました。
タレンツ・トーキョーには2011年に参加しました。プロデューサー・監督として、どのようにアイデンティティを確立していくか探求していく姿に、大変刺激を受けました。
その後、フリーランスでプロデューサー業に従事し、会社を立ち上げ、現在に至ります。

今井さん：
高校卒業後、米国に留学し映画製作について学びました。帰国後、映画業界で働きたかったのですが仕事がなく、映画製作の資金を貯めるためにしばらく他の業界で働きました。
「見栄を張る」という映画を自主製作したのですが、海外の劇場で上映されたことから「海外で映画をつくりたい」という想いが芽生えました。
国際共同制作に関する様々なワークショップに参加し、タレンツ・トーキョーをきっかけにベルリン映画祭に行ったこともありました。そのような活動をしながら、日本で製作した短編映画を海外の映画祭に出品したり、共同製作したりしていたので、海外との関わりは多かったように思います。
現在は自分の会社を2社経営しています。ハラキリフィルムズ合同会社は「監督の想いを映画にする会社」、株式会社フォギーは「監督の想いをお客さんに届ける会社」を理念に活動しています。

海外から見た日本との共同製作の需要

ー海外と日本の共同製作の現状について教えてください。
曽我さん：
海外の映画業界は日本との共同製作を必要としています。しかし、日本のプロデューサーや製作会社とコンタクトをとるための窓口がないのが現状です。

ー日本には窓口がないということですが、海外はあるのでしょうか？
今井さん：
韓国だとコフィック（KOFIC）、フランスだとCNCがあります。日本にもユニジャパン、文化庁などがあるのですが、どこに相談したらいいか分かりづらくなっています。目的に応じて製作会社やプロデューサーを紹介できるような窓口があれば良いなと思います。

― 今の日本の状況だと企画が止まってしまい、他国に流れてしまう場合もありそうですね。
今井さん：
あり得ると思います。情報・人をまとめる機関を設け、国内外で業界人とのネットワークが広く深い方がいると、マッチングしやすく企画が進みやすいと思います。

映画業界のエコシステム

― 日本の映画業界を成長させるべく、福岡市に提言されているとか。
今井さん：
はい。日本のインディペンデント映画には様々な課題がありますが、予算不足が要因として大きいと思います。企画が良くても、予算が足りず、映像や演技が映画祭に選ばれるクオリティに達しないことは往々にして起こっています。諸外国の製作費はアメリカでは約10億、ヨーロッパなどは3千万から、東南アジアは1千万からという相場ですが、日本だけが数百万ほどなのが現状です。製作費が低くなる理由は助成金制度が少ない、出資の仕組みがないことにあると思います。そこで、映画業界におけるお金の問題を福岡市と一緒に解決していこうという話を進めています。すでにスタートアップエコシステムが成立されつつある福岡市は「アプリ開発」や「金融」に力をいれていますが、「映画」も視野に入れています。「映画祭をやりたいから予算を」というのは難しいですが、映画産業エコシステムの中に「映画祭開催」や「ロケ誘致」という効果は狙えるかもしれません。
実はこういうエコシステムは世界各国にあるのですが、国内ではあまり浸透されていません。

映画製作の労働環境

― 映画製作の労働環境についてはいかがでしょうか。海外と日本の違いはありますか？
曽我さん：
フィリピンの監督と日本のスタッフで撮影した際は、助監督から「1日の労働時間はこの時間でやりたい。新人監督なので無理をさせたくない」という申し出がありました。予算があるので個々のコミュニケーションの中で交渉し落としどころを探りましたが、個人的にはこういう機会があってよかったと思っています。また、フィリピンで撮影をした時も「これ以上労働時間は増やしたくない」「スタッフをちゃんと休ませたい」という意向がありました。予算との兼ね合いの中で、どう判断しコントロールしていくかがプロデューサーの役割になっていると感じます。

今井さん：
韓国と製作したときは、週休2日でスケジュールが組まれていました。韓国人スタッフは労働時間を効率的、柔軟的に考えます。一方、日本人は伝統を重んじるのか、文句を言わずに長時間でも働く、「新人は低賃金でもこれくらい働くもの」と先輩から習ったことを重視していると感じます。労働環境への意識の違いは大きいと思います。人件費についても同じようなことがありますね。そういった伝統を悪用、美化せずに最低限の労働環境を整備する為には予算を増やす必要があり、その為にもファイナンスの仕組みが必要不可欠です。

映画製作の資金集めにおける投資家にとってのメリットとは

― 日本国内において、映画製作に出資するメリットは何でしょうか？
今井さん：
「レッドカーペットを歩ける」という話はよく出ます。これは中国でもそうです。検閲がある中で、素晴らしい映画がカンヌ映画祭などでも選ばれていますが、そのような作品の製作費は「レッドカーペットを歩きたい」個人投資家からお金が集まっているらしいです。クラウドファンディングで製作費を集めた際も、監督の周囲の方が応援するためにお金を出したケースが多かったように思います。
映画製作は「投資したら儲かる」ではなく、今の日本の仕組みでは投資家にとってのメリットはあまりないかも知れません。韓国では投資家のメリットを考えた官民ファンドをつくり資金投資していますが、そのような仕組みが日本でもあればと思っています。

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トークセッションのあとは、参加者とゲストの交流会が行われました。
コミュニケーションが大変弾み、参加者同士での名刺交換などが活発に行われていました。

今後もTCICでは、映画業界の方に向けたイベントやネットワーク形成などを開催していきますのでお見逃しなく！

TCICでは、現在第70期の入居者を募集中です！！【応募期間：12/4(月)～1/23(火)】

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