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EULAR/PReS「全身性若年性特発性関節炎(sJIA)・成人スティル病(AOSD)」診断・マネジメント推奨

4項目の包括的原則+14項目の推奨。
以下は備忘として。

包括的原則(overarching principles)

A. sJIAとAOSDは同一疾患であり、「スティル病」という単一の名称で呼ばれるべきである。
この推奨は、年齢による人為的な区別を廃し、疾患の本質的な同一性を強調している。これにより、診断基準の統一や臨床試験の設計、治療法の承認プロセスの簡素化が期待される。

B. 治療目標と治療戦略は、親/患者と治療チームの間の共同意思決定に基づくべきである。
患者中心のアプローチを強調し、治療への長期的な遵守を促進するために重要。特に慢性疾患管理において、患者の積極的な参加が治療成功の鍵となる。

C. 疾患活動性を定期的に評価し、それに応じて治療を調整するTreat-to-Target (T2T)アプローチが重要である。最終目標は薬剤フリーの寛解である。
T2Tアプローチの採用により、より積極的かつ動的な治療管理が可能になる。薬剤フリーの寛解を最終目標とすることで、過剰治療のリスクを軽減し、患者のQOL向上を目指す。

D. マクロファージ活性化症候群(MAS)は迅速に検出し、速やかに治療すべきである。
MASはスティル病の最も深刻な合併症の一つであり、早期発見と迅速な治療介入が生命予後を大きく左右する。臨床医はMASの兆候に常に注意を払う必要がある。

推奨(recommendations)

  1. 迅速な診断と早期治療開始を容易にするため、スティル病を同定するための操作的定義(operational definition)を使用すべきである。
    標準化された診断基準の使用により、診断の遅延を防ぎ、早期治療介入を可能にする。特に関節炎の存在が診断に必須ではないという点は重要な変更点である。

  2. 血清IL-18および/またはS100タンパク質(例:カルプロテクチン)の著明な上昇は診断を強く支持するため、可能であれば測定すべきである。
    これらのバイオマーカーの使用は、診断精度の向上に寄与する可能性がある。ただし、標準化された測定法と閾値の確立が今後の課題となる。

  3. 悪性腫瘍、感染症、他の免疫介在性炎症性疾患、単一遺伝子自己炎症性疾患などの代替診断を慎重に考慮すべきである。
    スティル病の診断は除外診断に基づくため、広範な鑑別診断の検討が不可欠。特に、治療開始前の慎重な評価が重要である。

  4. 臨床的非活動性疾患(CID: clinically inactive disease)は、スティル病関連症状の欠如と正常なESRまたはCRPと定義される。寛解は、少なくとも6ヶ月間のCIDが持続することと定義される。
    明確な治療目標の設定により、治療効果の評価と治療方針の決定が容易になる。CIDと寛解の定義の統一は、研究や臨床実践の標準化に寄与する。

  5. 最終目標(薬剤フリーの寛解)を達成するために、以下の中間目標が推奨される。
    治療開始後7日目: 解熱し、CRPが50%以上減少
    4週目: 発熱がなく、活動性関節炎(または腫脹関節数)が50%以上減少し、CRPが正常で、医師および患者・保護者のグローバルアセスメントが0-100のVASで20未満
    3ヵ月目: CIDでGCが0.1mg/kg/日(成人)・0.2mg/kg/日(小児)未満
    6ヵ月目: CIDでGC-free

    段階的な治療目標の設定により、治療の進捗を適切に評価し、必要に応じて治療強化や減量を行うことが可能になる。これは、個別化された治療アプローチの基礎となる。

  6. 目標達成と維持のための長期的な全身性グルココルチコイド使用を避けるため、高い有効性のエビデンスに基づき、IL-1およびIL-6阻害薬の使用を優先すべきである。
    生物学的製剤の早期導入により、グルココルチコイドの長期使用による副作用のリスクを軽減し、より良好な長期予後を達成することが期待される。

  7. 診断が確立された時点で、できるだけ早くIL-1またはIL-6阻害薬を開始すべきである。
    早期の生物学的製剤導入は、疾患の慢性化を防ぎ、長期的な予後改善につながる可能性がある。これは「治療の機会の窓」の概念に基づいている。

  8. グルココルチコイドなしで3〜6ヶ月間CIDを維持してから、生物学的DMARDの漸減を開始すべきである。
    十分な期間のCID維持後に慎重に減量を開始することで、再燃のリスクを最小限に抑えつつ、過剰治療を避けることが可能になる。

  9. MASや肺疾患を含む重症/生命を脅かす合併症は、疾患経過のどの時点でも発症する可能性がある。患者を積極的にスクリーニングし、モニタリングすべきである。
    合併症の早期発見と管理は予後改善の鍵となる。特に、MASと肺疾患に対する継続的な警戒が必要である。

  10. 持続する発熱、脾腫、上昇または上昇傾向の血清フェリチン、不適切に低い血球数、異常な肝機能検査、血管内凝固の活性化、上昇または上昇傾向の血清トリグリセリドを有する患者ではMASを考慮すべきである。
    MASの早期診断には、個々の検査値だけでなく、全体的な臨床像と検査値の経時的変化の評価が重要である。

  11. MASの治療には高用量グルココルチコイドを含める必要がある。さらに、アナキンラ、シクロスポリン、および/またはIFNγ阻害薬を含む治療を初期治療の一部として考慮すべきである。
    高用量グルココルチコイドはMAS治療の基本であり、他の治療薬との併用により効果的な治療が可能となる。特に重症例や急速に悪化する症例では、複数の薬剤を組み合わせた初期治療を検討する必要がある。

  12. 肺疾患は、臨床症状(例:ばち指、持続する咳、息切れ)と肺機能検査(パルスオキシメトリー、DLco測定)によって積極的にスクリーニングし、臨床症状のある患者では高解像度CTスキャンで調査すべきである。
    スティル病関連肺疾患の早期発見と適切な管理は重要である。定期的なスクリーニングと症状に応じた精密検査により、肺合併症の早期診断と治療介入が可能となる。

  13. 現在入手可能なデータに基づくと、スティル病肺疾患のリスク因子の存在や肺疾患の発症は、IL-1またはIL-6阻害薬の禁忌とみなすべきではない
    IL-1やIL-6阻害薬は、肺疾患を有する患者でも有効性が示されている。これらの薬剤の中止は多くの場合、肺疾患の改善につながらず、むしろ疾患活動性の悪化やMASのリスク増加をもたらす可能性がある。

  14. 難治性患者、重症MASを有する患者、およびスティル病関連肺疾患を有する患者は、スティル病専門センターと協力して管理すべきである。
    複雑な症例や重症例の管理には、専門的な知識と経験が必要である。専門センターとの連携により、最新の治療法へのアクセスや臨床試験への参加機会が得られ、患者の予後改善につながる可能性がある。

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