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資生堂1強か? 積水化学と2強か?廣中、田中、一山、新谷ら世界陸上オレゴン代表が多数出場【クイーンズ駅伝2022展望コラム①】

 女子駅伝日本一を決める季節がやって来た。クイーンズ駅伝(全日本実業団対抗女子駅伝)が11月27日、宮城県松島町をスタートし仙台市弘進ゴムアスリートパーク仙台にフィニッシュする6区間42.195kmで行われる。各区間の距離とコース図はこちらのページ

を参照してほしい。
 優勝争いは昨年2位の資生堂が、東京五輪マラソン8位入賞の一山麻緒が加入し、一歩リードしている。2連勝を狙う積水化学も10000m日本記録保持者の新谷仁美が復活した。19、20年と2連勝したJP日本郵政グループ、前回4位のダイハツ、そして豊田自動織機は、今年7月に行われた世界陸上オレゴン代表がチームを牽引し、2強に隙あれば優勝を狙う。
 気象コンディションに恵まれれば、前回積水化学がマークした2時間13分03秒の大会記録更新も十分あり得る。

●資生堂に日本代表経験者が4人

 資生堂の戦力が他チームの脅威になっている。前回1区区間2位の木村友香(28)は19年世界陸上ドーハ5000m代表で、5区区間賞(区間新)の五島莉乃(25)は今年の世界陸上ドーハ10000m代表に成長した。故障上がりで6区区間4位だった高島由香(34)は、15年世界陸上北京と16年リオ五輪の10000m代表だった。
 今季はそこに東京五輪と世界陸上オレゴンのマラソン連続代表の一山が加わった。
 そして10月22日には10000mで資生堂勢が、以下のように好タイムを量産した。
1)31分44秒52 五島莉乃
2)31分51秒05 木村友香
3)32分23秒14 一山麻緒
4)32分23秒39 高島由香
5)32分32秒39 佐藤成葉
6)32分58秒17 樺沢和佳奈
 本番を1カ月後に控えた段階でこのタイムは驚異的で、多くの関係者が「クイーンズ駅伝は資生堂」と思ったに違いない。
 今季の記録と過去の実績から、代表4人はどの区間にも対応できそうだ。一山は過去に1区で、木村は2区で、高島は(3年連続)3区で区間賞を取ったことがある。1500mから距離を伸ばしてきた木村が、10000mで31分台を出したことで3区にも対応できる。高島の区間賞は14~16年だが、以前のレベルにかなり近づいている。岩水嘉孝監督が「実績よりも今の状態で区間は決まります」と話すのは、誰を何区に使っても期待できるからだ。
 樺沢和佳奈(23)は10月の10000m記録会では6番目だったが、専門の1500mに加え、今季は5000mでも15分40秒19と自己記録を上げている。前回2区で区間6位だったが、今年は区間賞争いも期待できそうだ。
 4区にジュディ・ジェプングティチ(19)を起用できることも、外国人を持たない上位候補チームに対してはアドバンテージだ。
 駅伝は小さなミスが大きく響く可能性があるし、ライバルチームが流れに乗って想定以上の走りをする可能性もある。だが今の戦力を分析する限り、資生堂が優勝候補筆頭と言って異論は出ない。

●5区にエースを残せるか?

 今年の大きな注目点として「5区にエースを残せるか」を積水化学・野口英盛監督は挙げる。
「以前は1区と3区に強力な選手を配置できれば勝てましたが、昨年五島さんと新谷(仁美・積水化学・34)が31分30秒弱までタイムを上げました。その前は32分10秒が区間記録で、32分30秒で区間賞が取れたこともあった区間です。去年の2人の走りを見せられたら、シード(8位以内)狙いなら“耐える5区”でいいと思いますが、優勝争いをするには5区に大砲を置かないと勝てません」
 今年、資生堂がその布陣を簡単に組めてしまうのに対し、積水化学は何人かの選手が本番で調子を上げないと難しい。佐藤早也伽(28)がベルリン・マラソンで2時間22分13秒の自己新を出したが、昨年の駅伝前の調子には戻っていないという。前回は3区の佐藤が廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ・22)に次ぐ区間2位で、5位から一気にトップを奪ったことが大きな勝因だった。
 1区で区間賞から17秒差で2区につないだ森智香子(30)も夏に故障があり、昨年ほど上がっていない。世界陸上オレゴン1500m代表だった卜部蘭(27)も夏まで貧血に苦しめられ、9月の大会で激しく転倒した後は、複数の部位に痛みが続いている。
 明るい材料は前回6区区間2位の佐々木梨七(昨年までは木村姓で登録)が、昨年以上の状態になっていること。間に合わないと思われていた新加入の鍋島莉奈(28)が、秋に国体5000m4位まで復調したこと。そして新谷が3区区間新をマークした2年前に近い状態に戻っていること。新谷が5区なら昨年よりプラス30秒は期待できるという。
 鍋島か森に1区を、佐藤に3区を任せられるようになれば、5区の新谷で逆転が期待できる。あるいは2年前のように3区の新谷で大きくリードを奪い、5区の鍋島か佐藤が粘る戦い方もある。
 2年連続2区区間賞の卜部も「ちょっとした積み重ねが最後の差になって現れますし、次の区間の選手のモチベーションにも影響します」と、短い区間でも大事に走る気持ちを大切にしている。
 いずれにしても佐藤、鍋島、森、卜部の状態が、本番にしっかり上がっている必要がある。資生堂の独走を止めるのは、新谷の爆発力を生かす駅伝ができるかどうか、にかかっている。

●JP日本郵政グループなどにも勝機

 2強以外ではJP日本郵政グループ、豊田自動織機、ダイハツ、第一生命グループにも優勝のチャンスがある。
 19年、20年大会と2連勝した日本郵政は、昨年は1区の鈴木亜由子(31。東京五輪マラソン代表)の出遅れ(区間14位)が響いた。3区で廣中璃梨佳(22。5000m日本記録保持者。東京五輪10000m7位)が区間賞の走りで2位に浮上したが、5区で積水化学と資生堂に1分半引き離され、優勝争いに加わることができなかった。
 しかし今年は鈴木が、9月のベルリン・マラソンで2時間22分02秒と大幅な自己新で走った。高橋昌彦監督によれば練習過程でスピードも戻ってきた。昨年失敗した1区でリベンジする選択もあるが、小坂井智絵(19)も10月に15分40秒43と好調で1区の可能性も出てきた。小坂井に1区を任せられるようだと、廣中3区&鈴木5区という正攻法のオーダーが組める。
 しかし高橋監督は「奇襲法もある」と、廣中の1区や5区の可能性にも言及した。レース前日に発表される日本郵政の区間エントリーが注目される。
 豊田自動織機は田中希実(23。1500m日本記録保持者。東京五輪8位)が加入。田中が1区区間賞でスタートすれば、2区に1500m日本選手権2位の後藤夢(22)、3区にプリンセス駅伝1区区間賞の川口桃佳(24)とつなぎ、上位の流れで進められる。4区のヘレン・エカラレ(23)でトップに浮上する展開も期待できる。
 ダイハツは前回1区区間5位の大森菜月(28)、世界陸上オレゴン・マラソン9位の松田瑞生(27)、ベルリン・マラソンで2時間21分55秒を出した加世田梨花(23)と、3本柱が強力だ。加世田は昨年の3区で区間10位と「実業団の洗礼を受けた」という。その悔しさが今年のマラソン挑戦と、2時間21分台につながった部分もあるという。3区の加世田でトップに近い位置に浮上できれば、5区の松田で勝負をかけることができる。
 主要3区区間以外の選手たちも、松田が「かつてないレベルで練習している」と、1年ぶりのチーム合宿に合流して感じたという。優勝争いも現実的に考えられる布陣になりそうだ。
 そして第一生命グループは、プリンセス駅伝3区区間賞の小海遥(19)の成長が大きい。出水田眞紀(26)も1区で区間上位が期待できる。大物新人の鈴木優花(23)が、5区区間6位だったプリンセス駅伝の不調から抜け出していれば大番狂わせがある。
 今年7月の世界陸上オレゴンに出場した選手たちも多数出場する。
 日本郵政・廣中(5000m&10000m)は前回の3区区間賞で、資生堂・五島(10000m)は前回5区区間賞。1500m代表だった積水化学・卜部は2年連続2区区間賞。ダイハツ・松田、資生堂・一山、積水化学・新谷のマラソン代表トリオも3区と5区の区間賞候補だが、選手層の厚い資生堂はエース級が1区や6区に出場することもあり得る。5000m代表のエディオン・萩谷楓(22)はプリンセス駅伝こそ3区区間12位と不調だったが、1区と3区の区間賞候補。そして5000m&1500m&800m代表だった豊田自動織機・田中は、1区区間賞候補だ。
 オレゴン代表たちの走りに注目するのと同時に、クイーンズ駅伝の主要区間で区間賞争いをした中で、誰が来年の世界陸上ブダペスト大会の代表入りするか。宮城経由でハンガリー行きの切符をつかむ選手も現れるだろう。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト


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