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【全日本実業団山口ハーフマラソン2021展望② ・安藤友香・筒井咲帆・小笠原朱里・大西ひかり ほか】

安藤、筒井、小笠原らが1時間8分台に挑戦
小原&伊藤らのベテラン、大西&原田らの若手にも期待大

全日本実業団ハーフマラソンが2月14日、山口市の維新百年記念公園陸上競技場を発着点とする21.0975kmのコースで行われる。女子にはトラックで東京五輪代表を狙う安藤友香(ワコール・26)、前回2位の筒井咲帆(ヤマダホールディングス・25)、若手期待の小笠原朱里(デンソー・20)らが出場。優勝タイムは1時間8分台も期待できそうだ。大西ひかり(JP日本郵政グループ・20)、原田紋里(第一生命グループ・22)ら、ポスト東京五輪世代の選手たちも優勝争いに加わる力がある。
 また、東京五輪代表候補(従来の補欠選手)の小原怜(天満屋・30)、リオ五輪代表だった伊藤舞(大塚製薬・36)ら、来月の名古屋ウィメンズマラソン出場を予定しているベテラン選手たちの走りにも注目したい。

●安藤と筒井が優勝候補の双璧

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 安藤友香はマラソンで2時間21分36秒の日本歴代5位の記録を持つ。スズキ浜松AC時代の17年名古屋ウィメンズで優勝したときのタイムで、同年の世界陸上ロンドン大会にも出場した。特徴は低い位置で小さく腕を振るピッチ走法で、“忍者走り”と言われている。
 ワコール移籍後は自己記録を更新できなかったが、昨年5000mと10000mで自己新をマーク。10000mでは31分37秒71と、東京五輪標準記録の31分25秒00に手が届くところに来ている。5月の日本選手権で代表入りを狙ってくるだろう。
 ハーフマラソンの自己記録は、一昨年12月に出した1時間09分38秒。この1年間のトラックの自己記録更新を見れば、1時間8分台を出す力はあると見ていい。
 もう1つ安藤に求められるのは勝つことだ。昨年トラックで自己新を出した2レースは、5000mは日本人4位で10000mは8位。東京五輪10000m代表の新谷仁美(積水化学・32)には大差をつけられた。1月の京都・女子駅伝中・長距離競技会10000mは独走に持ち込んだが、ラスト1周で東京五輪5000m代表の田中希実(豊田自動織機TC・21)に逆転された。
 全日本実業団ハーフマラソンも、伸び盛りの若手やマラソンで実績ある選手が多く出場する。簡単には勝てないが、1時間9分未満の選手はエントリーしていない。今大会に勝つことで勝負強さをアピールし、トラック代表争いで優位に立ちたい。

 筒井咲帆は昨年の今大会で2位。ラスト勝負で竹山楓菜(ダイハツ・25)に2秒敗れたが、1時間09分14秒と自己記録を大幅に更新した。10000mでも12月の日本選手権で、31分36秒19の自己新をマークし安藤に先着した。
 TBSのオンライン取材に

「目標は優勝で、タイムは1時間8分台を狙いたいと思います。去年よりは力はついていると練習で感じるので、コンディションが良ければ自己ベストは狙っていける」

と話している。
 記録も順位も、安藤と筒井は同じ目標になる。お互いに譲らない展開が予想できる。

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●マラソンにつなげたい小原、伊藤、加藤、田中

安藤と筒井のどちらかが独走する可能性もあるが、実績あるベテランや勢いのある若手も多く、終盤まで集団が崩れない可能性もある。
 マラソン組では小原怜、伊藤舞、加藤岬(九電工・29)、田中華絵(資生堂・31)らのベテラン勢が、今大会をステップに3月14日の名古屋ウィメンズマラソンに臨む。

 小原はMGC3位で東京五輪代表候補。名古屋では「代表候補として、どんなレース展開になっても優勝争いをする」(武冨豊監督)ことが目標になる。1カ月前のハーフマラソンでは、「マラソンのレースペースを意識した走りが目的。1時間10分半くらいで行ければ」という走りを予定している。
 リオ五輪代表だった伊藤は17年の大阪国際女子マラソンを最後に、座骨や足首の故障が続き、マラソンから遠ざかっていた。だが、昨年の全日本実業団ハーフマラソン(1時間11分50秒で19位)頃から、戦えるレベルに戻ってきた。今年は「マラソン・トレーニングの一環ですが、昨年よりは上のタイムでは走りたい」(河野匡監督)という目標設定になる。マラソンの自己記録(2時間24分42秒)に挑戦するための走りをしておきたい。

 加藤岬は18年クイーンズ駅伝3区で途中棄権したケガから、完全に復活している。「名古屋では2時間23~24分台が目標」(藤野圭太監督)で、小原、伊藤と同様マラソン練習の一環として走る。
 田中華絵は名古屋で2時間25分台が目標。「ハーフも結構、走れると思います。その結果でその後のメニューを変えていきます」(岩水嘉孝ヘッドコーチ)

 森田香織(パナソニック・25)も今回の結果を今後のロードレース、来年のマラソン出場につなげていくプランだ。17、18年とクイーンズ駅伝1区(7.0km)で連続区間賞を取ったが、19年6月の日本選手権以降、右足の中足骨の疲労骨折など故障が長引いている。昨年11月のクイーンズ駅伝も距離の短い4区(3.6km)に回ったが、そこで区間日本人最高順位(区間8位)の走りができ、故障の完治も確認できた。
 安養寺俊隆監督によれば「ハーフでは自己記録(1時間10分10秒)が目標。持久力が戻れば、春のトラックで本来の走りが期待できる」というプランだ。

●若手で優勝争いに加わるのは?

若手期待の選手として小笠原朱里を挙げたい。11月のクイーンズ駅伝は5区で区間2位と好走した。12月の山陽女子ロードでも積極的なレースを展開し、一山麻緒(ワコール・23)と8秒差の5位(日本人3位)とハーフマラソンでも結果を残した。松元利弘監督は「タイムは1時間09分00秒が目標ですが、優勝も意識して走ります」と期待する。

 その小笠原に山陽女子ロードで4秒先着したのが原田紋里である。山下佐知子監督は「本人は1時間10分を切りたいと考えているでしょうが、もう一度1時間10分台でゴールできたら」と、確実に走らせたい様子だった。
 そして初ハーフマラソンながら、他チームの指導者たちからも好成績を予想されているのが大西ひかりである。ロードに強いスタミナ型の選手で、クイーンズ駅伝は単独走になった6区(6.795km)の区間賞を獲得した。「初ハーフなので1時間10分台で走れれば」と、高橋昌彦監督は目標は高く設定していないが、「将来はマラソンで代表を狙える選手」として育成している。
 外国勢がエントリーしていないので安藤、筒井、小笠原らがペースを作っていくだろう。風が強くなければ1時間8分台を目指すペースになるはずだ。若手選手たちも何人かは、そのペースに挑むだろう。1時間9~10分台のペースなら、マラソン組も優勝争いに加わる。
 どんな顔ぶれが先頭集団に残っているか。そこに注目するとテレビ観戦が面白くなる。

TEXT by 寺田辰朗 写真提供:フォート・キシモト

2月14日(日)午後2時 TBS




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