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2020年1月26日「風をよむ~世代間の分断~」
・ダボス会議でグレタさんとトランプ大統領が登壇。対照的なスピーチ
・「重要な決定するときは若い世代も加えて」
・「団塊の世代」“OKブーマー現象”と世代間の軋轢 乗り越えるヒントは?
環境活動家グレタ・トゥンベリさん(17歳)「あなたたちは『大人に任せなさい、悲観的になるな』と言うけれど、その結果何もできませんでした。すぐに化石燃料から、一切手を引いて下さい!」
温暖化対策を求める若者の運動を、世界的に広げたスウェーデンのグレタ・トゥンベリさん。21日、スイスで始まった「ダボス会議」でスピーチを行い、大人たちを厳しく批判したのです。
環境活動家グレタ・トゥンベリさん「私たちの世代はあなたたちと違って、戦わずに諦めることは絶対にしないとここに宣言します!」
今回のダボス会議には、グレタさん以外にも、世界中から10代の若者たちが多く参加し、大人たちに注文をつけました。
サルバドール・ゴメス・コローンさん(プエルトリコ・17歳)「私たちがなぜここにいるのか、それは口先だけの約束はもう、うんざりだからです」
さらに会場の外でも…
デモ隊「私たちを止めることはできない。地球は生まれ変わらせることができる」
こうした若者たちの声に対し、アメリカのトランプ大統領は、植林活動への参加を表明したものの…
米・トランプ大統領「今は悲観的になる時ではなく楽観的になる時だ。私が就任以降、200万人以上の若者世代に職をもたらし、年5%近くの賃金上昇も実現している。アメリカは圧倒的に世界最強の経済大国だ」
多くの時間をかけて、アメリカ経済の好調さをアピールするなど、自画自賛に費やしたのです。
今回、若者たちの声が注目を集めた「ダボス会議」。正式名称は「世界経済フォーラム年次総会」で、1971年、経済学者のクラウス・シュワブ氏により創設されます。
その名の通り、各国を代表する政治家やグローバル企業のリーダーなどが集まり、経済や金融の問題を話し合う会議でした。
ところが、時を経るにつれ、「冷ややかなエリートの集まり」といった批判が高まり、経済と深くつながった環境問題や人権問題も、人類共通の課題として話し合うようになり、若者や市民社会のリーダーも招かれたのです。
ナターシャ・ムワンサさん(ザンビア・18歳)「重要な決定をする時は若い人たちも加えてほしい。私たちには力があるからです」
今回、地球温暖化問題を巡って、若者たちの批判の矛先が、大人たちに向かいましたが、こうした対立は、ダボス会議に限りません。
去年11月、ニュージーランド議会で、25歳の女性議員が気候変動問題について演説中、年配の議員からヤジを飛ばされます。すると…
ニュージーランド・クロエ・スウォーブリック議員 「オーケー、ブーマー」
年配の議員に対し、「OK、ブーマー」と言い返し、そのまま演説を続けたことが話題となったのです。
「ブーマー」とは、現在の60代、70代を中心とした「ベビーブーム世代」をさすとされ、そうした大人世代へのいら立ちを示す言葉として、欧米を中心に、今、世界中に広がりを見せています。
ニューヨーク・タイムズは、「OK ブーマー」現象は、「業を煮やした何百万人もの子供たちのスローガン」であるとして、「友好的な世代間関係は終わりを告げる。これは戦争だ」とまで記したのです。
一方で、そのような若者たちへの、逆風も強まっているのです。
去年10月、ロシアのプーチン大統領は、大人への批判を続けるグレタさんら、若者たちについてこう語りました。
ロシア・プーチン大統領「若い人々は環境問題のような社会問題に関心を持ちたがる。『世界はそんなに単純ではない』と誰もグレタさんに教えなかったのだろう…」
また23日、グレタさんの温暖化対策の訴えについて問われたアメリカのムニューシン財務長官も、「彼女はチーフエコノミストかい?まず大学で経済を勉強してきてから、我々に説明してほしいものだ」と皮肉っぽく語ったのです。
こうした若者と大人たちの「世代間の分断」ともいえる現象は、環境問題だけではありません。
例えば、2016年、イギリスで行われたEU離脱を巡る国民投票。18歳から24歳の若者の71%が「残留」に投票した一方で、65歳以上の64%が「離脱」に票を投じ、世代による違いが浮き彫りになったのです。
今、世界中で、民族や宗教などに基づく「分断」が、様々な問題を生み出す中、環境問題に限らず、政治や年金などの問題でも、大人と、いらだつ若者たちとの「分断」が深まっているのです。
その一方で、世代の壁を越え、互いに手を取り合う重要性を訴える若者の声もありました。
サルバドール・ゴメス・コローンさん(プエルトリコ・17歳)「世界中で『分断』 が起こっています。このままでは前向きな社会がつくれません。みんなが公益のために取り組んでいないからです」
こうした若者たちの声を前に、今後、大人たちはどういった取り組みを見せるのでしょうか…。